ガンビの皮を壮瞥町の奥山の小学校跡地で拾った。藪の中の仰向けに傾いた小さな門柱に駒別小学校とかろうじて読める。すぐ脇では森が伐採されていた。ガンビの皮はマカンバ(ウダイカンバ)の厚い樹皮である。昔から家具作りに重宝された太いマカンバは、今はもう少なくなったという。森の樹を薪にしていた開拓者の時代はこの皮がもっぱら焚きつけとされていた。
25 明治新山 源太穴
仲間たちと源太穴を見に出かけた。102年前、明治43年の有珠山山麓噴火は明治新山(四十三山)を隆起させた。佐藤傳蔵によると、45の火口が記録され、源太穴はその中の最大火口で長径211m、短径171m、深さ41m、二重火口、泥流を流したとなっている。 画像は北側の火口壁から見た南側火口壁内側の雪斜面。夏には植物が繁茂していて全体像はつかめません。
左は102年前(1910年)の噴火。壮瞥温泉付近から見た源太穴からの噴煙(壮瞥町「変遷」第1集による)。左手前は東丸山。右奥は明治新山を隆起させた火口群と思われ、新山はまだ隆起していない。源太穴からは熱泥流が発生し湖岸に達したという。この後、数十年の間隔をおいて昭和新山が噴火し(1944年)、さらに山頂部での噴火(1977-78年)、西山山麓噴火(2000年)と続きました。有珠山はまだまだ活動的な山です。次は、何時、何処で,どのような形で噴火するのでしょうか。
24 爽やかな朝
23 里山のジンジャークッキー
お馴染みの堅果(けんか)、クルミ。この辺りには栽培種の菓子グルミ=テウチグルミと野生のオニグルミが生育しています。写真左が菓子グルミ、右はオニグルミ。どちらも滋味あふれる香ばしさがエゾリスや野ネズミなど、野生の生き物の命の糧です。カラスは車に轢かせて食べたりもします。もちろん私たちも大好き。里山の神様の膨らんだポケットにいっぱい入っています。
菓子クルミ(手打ちグルミ)は簡単に割れます。私は梅割り器を使っています。オニグルミは硬く、その上実が取り出しにくいので、金槌、千枚通し等が必要です。でも、それがまた楽しみ。里山の神に感謝しながらゆっくり作業を続けます。2種のクルミ口に運ぶと微妙に味が違います。その辺りが分かるだけでも嬉しくなります。秋、落ちて表面の果肉が黒く腐食した頃を見計らってたっぷり拾い集めます。収穫した実は翌年まで使えます。
クルミのジンジャークッキー(径5㎝のもの約25枚)。たっぷりのバターとジンジャーの香りの中にクルミの香ばしい存在感が楽しめます。 薄力粉 250g、 ジンジャーパウダー 15g、 剥きクルミ 100g、 バター 150g、 グラニュー糖 150g、 とき卵全卵 40g。 ジンジャーパウダーを使わず、生姜をすり下ろして使っても良いでしょう。クルミの量、バターの量、生姜の量を変えながら、自分の味に仕立てるのも楽しみです。
① 粉とジンジャーパウダー、クルミをボウルの中でていねいに混ぜておきます。 ② 軟らかくしたバターをよく練り、これにグラニュー糖をよく混ぜ込み、さらに卵を少しずつ加えて混ぜます。なめらかなクリーム状になったら、①と合わせます。ミキサーを使わず、ボウルと泡だて器を使っても簡単にクリーム状になります。①と合わせた後、木べらなどで生地をよく練っておくと、後で切り分けるときに形が崩れません。
③ よく捏ねた後、直径4cmほど(焼きあがりは一まわり大きくなります)の棒状に手でまとめ直してラップに包みます。冷蔵庫で2時間以上ねかせておきます。 ④ とき卵(全卵・分量外)でコーティングし、さらにグラニュー糖(分量外)の上を転がして、厚さ8mm位に切りそろえます。 ⑤ 180℃で15分ほど、ようすを見ながら焼きます。冷めると、ジンジャーの爽やかな香りがたち、晩秋の里山を味わう滋味あふれるクッキーとなります。
22 白銀の山頂
21 椴の森
壮瞥町児童館の裏山、ふれあいの森は今、とても静かです。太いトドマツの幹も-5℃の大気に凍てついています。でも、生きものたちの足跡でいっぱい。エゾシカ、キタキツネ、エゾリス、ユキウサギなど少しずつ時間をずらしながら通り過ぎて行ったのでしょう。一面の緑とその香りに満たされるのは4ヶ月後です。
ひとつ、小さな発見がありました。雪の着かなかった斜面の枯葉の中にツルマサキの緑を見つけました。このあたりには常緑の広葉樹は少ないのですが、この寒い中、ぎりぎりで耐えているのでしょう。ナニワズ、フッキソウも常緑ですが雪の下で春を待ちます。極寒の地であっても、雪の下では生き物は耐えられます。雪が少なく、気温がぐんと下がる大滝あたりから、谷沿いに寒気がやってくる壮瞥は生き物たちには少しばかり過酷な世界なのかもしれません。
20 氷の牙
19 アンチョビーを作る
去年の11月、とびっきり鮮度のよい地物のカタクチイワシが手に入ったので、すぐさま天日塩で漬けこんだ。その後、塩を落とし頭を切り取ってフィレにし、漬けなおしてアンチョビーとなる。それから2ヶ月、良い味に出来上がってくれた。熟成が進んでいるので容器に丁寧に詰めてオリーブオイルを満たして完成。手造りの最上の逸品である。
しっかりとした歯ごたえ、いつまでも口の中いっぱいに広がって残るうまさとほんの少しの生臭さは、手前味噌ではなく、今までに食べたどのアンチョビーより、はるかに濃厚な味となってのデビューとなった。ここの海、噴火湾からの賜物、小さく軟らかなイワシは濃密な味を持つ極上の食品へと進化してくれた。海からの塩と小魚と,少しの時間ががうまみを凝縮させてくれたのだ。人はこうやってうまいものをこしらえてきたのだ。地方を代表する自慢の味はどれを取っても骨太かつシンプルさが真髄。
私のパスタはいつもディ・チェコのスパゲッティー二。パスタのソースにはアンチョビーとガーリックの下味は欠かせない。アンチョビーの乗ったピザも私の好物。でもこれからは地元の魚で作った地産地消のオーガニック食品、我が最強のアンチョビーでいこう。そうだ、このシーズンには、脂ののっていない小ぶりのニシンがある。次にはこれが間違いなくアンチョビーへ、いいえ、塩漬けヘリングへと変身だ。まだあるぞ、タラ子のボッタッルガもいい。スローフードの国イタリアには負けてはいません。