1048 失ったもの

失ったもの失ったものを取り戻すのは容易ではない。自然は向こうに見える絵葉書となり、人は自らの感性で捉える自然を失ってしまった。 瞬間に見つけたもの、心が捉えたものは真実だ。向こうではなく、手を伸ばすとそこにある。山の尾根と広葉樹林、湧き上がる雲。自然を構成する基本のパーツであり、それ自体もそれを取り巻く現象も皆、意味を持ち単純でかつ美しい。ここから始めよう。

1047 洞爺湖・春の予感

洞爺湖春の予感冬の名残りの樹々を載せた小島が、柔らかな光を受けて湖面に映っている。風のない早春のひと時。心安らぐたたずまい。前の年の豊穣はすべて地に還り水に沈んで、芽吹きの膨らみとなってまた蘇る。 遠く微かな「春の歌」が聞こえるような。あれはメンデルスゾーン。コロコロと明るい水面を転がるフルートの音色。 またいく度かの雨が降り、やがて木の芽色の風が吹きわたる。

1046 ねぐらは有珠山

有珠山のカラス夕暮の欝金色の空を、カラスたちが有珠山へと向かう。まずはロープウェイの太い索に集結し、ねぐらは昭和新山のサンゴ岩下の林。百羽、二百羽を超える。久保内や立香、滝之町あたりを行動圏 (home range) にしている集団だろう。巣作りが始まっている縄張り (territory) をもつ個体群や、いつも群れて移動している若鳥集団も一緒。ハシブトガラス 、ハシボソガラス合同の日周行動だ。

1045 ホザキヤドリギ

ホザキヤドリギ壮瞥町の開拓記念館「紫明園」。園地には7本の直径70㎝を超えるカツラの大木がありすべての樹に赤い実のヤドリギが寄生している。偶然に写真中央の樹の直下でホザキヤドリギの黄色い果実を見つけた。落葉性なので植物体は見つけられなかった。北海道での新記録となった洞爺湖畔のハルニレから約1.6㎞離れた市街地での新しい分布だ。果実食の野鳥による種子散布と思われる。

1044 静かな雪

静かな雪風のない明け方、静かに降った雪は、小さな枝の上にもゆっくりと積もって、揺れもせず落ちもせず。春の柔らかな雪の持ち味だ。耳を澄ますと雪の匂いがした。静寂は匂いを連れてくる。凛とした緊張感はないが、それでも精一杯に撓み、重さを堪えて、腹をすかせたシジュウカラが、傍をぶんと飛んだだけで、重さのない雪がはらりと落ちた。   3月3日、雛の日の朝。

1043 ハクチョウ

ハクチョウ3月の始め、もう雪がない。伊達市関内の畑にハクチョウが集まっていた。数えたらおよそ300羽。いつもの年よりずっと早く、身体に受ける風の柔らかさにも春の感じがする。慌てて車を止めカメラに収めた。気が付くとさらに数台。みんな早くやってきた春を写しているのだね。パンを買いに出かけた帰り道、こんなに集まったハクチョウに出会えるなんて、それだけでも幸せだ。