88 急流が住処

カワガラス 速い流れを逆手にとって、数居る野鳥の世界でここを棲家とするカワガラス。今様にいえばニッチを生業に生き抜いている時代の寵児だが、もともと生きものの世界ではこれがあたりまえ、こうやって種は進化してきた。清流の中でカワムシなどをエサにして、せわしなく生き切る命。つきあってみると番だった。巣はどこに?北の火の山、羊蹄山の伏流水に見つけた野生。

87 背中合わせの

有珠山 梅の名所で知られる壮瞥公園からの有珠山遠望。この山は100年の間に4回の噴火があり、激しい噴火とともに新しい山や丘陵を形成した。2000年噴火の西山山麓火口は有珠山の向こう側だ。実にのどかな風景だ。この地域の多様で恵まれた景観と産物は、ここの火山地形と多分につながっている。恩恵の反面、噴火に伴う災害も身近だ。過去の経験から得た知識を大切に生かし、次の噴火に備えねばならない。

86 再生したシラカバ

シラカバ 有珠山に面した昭和新山の登り口に、樹幹がよれよれになったシラカバがある。1977年からの有珠山頂上噴火の際、粘土鉱物が含まれた火山灰の被害にあった樹だ。降雨と混じった泥滴が枝先に粘着して固化し、重く垂れさがったけれど、若かった樹はそれでもなお復活して成長し、毎年葉をいっぱいに茂らせている。我々に元気を与えてくれる再起の標本木だ。

85 揚羽蝶

キアゲハ   タンポポの上にやっと降り立った黄色い揚羽蝶。「揚羽」とは翅を揚げて止まるからというが、まだそこまでの威勢はない。この名、どこかに艶っぽさが私には感じられます。まだ大きな羽で舞うことが出来ぬ、羽化後間もない幼蝶だ。あどけなさが残るこの小さな春型はどんな春を過ごすのか。2、3週間、一所懸命の充実した命。食べ物はエゾニュウ、アマニュウなど風味濃いセリ科。

84 蒲公英

タンポポ  一面のタンポポの向こうの昭和新山と有珠山、春爛漫の壮瞥の野面です。山は柔らかな緑に包まれ、ヒバリやウグイスの声が聞こえます。穏やかな風土と豊かな食材に恵まれた町です。この有珠山、三十数年の間隔で噴火を繰り返してきました。次の噴火まで折り返し点を過ぎたようです。大きな自然とつながっています。そのような生活をしたくってこの町に移り住みました。

83 種子に翼がない

ハイマツ 有珠山ロープウェイ山頂駅からの遊歩道に種名が分からないマツ(植栽)があった。5葉のマツで、キタゴヨウかハイマツか悩んでいた。やっと野鳥の食べ残しの球果を探し種子を見た。キタゴヨウには有るはずの翼がない。チョウセンゴヨウとそっくりの丸い種子だ。ささくれた樹皮も幹の下部に見つかった。これで決まり、ハイマツと同定。だが、この実を食べたのは誰だろう。

82 日蔭の嫡流

シダ植物 昭和新山の谷あい、林の奥の湿った窪地に広いトクサ群落を見つけた。オシダとクサソテツ(コゴミ)が漏れる陽を受けて丈をのばしている。この三者、いずれも胞子で増えるシダ植物。葉脈を持つ真葉植物では種子植物と肩を並べる種群だ。ササ類が侵入していない林床で、いろいろなシダが生育している。噴火でリセットされた植生が遷移の途中でこんな別世界を見せてくれる。

81 ビャクシン属(G. Juniperus)

ビャクシン属(G. Juniperus) コロラドビャクシンの園芸種、ウィチタブルーを植えた。たまたまやってきた知人に「果樹に影響が」と指摘された。そうだビャクシン類はナシの赤星病の中間宿主だった。リンゴにもよくない。私の住む町、壮瞥はリンゴを中心にサクランボ、ナシ、プラムなど、果樹の生産地として有名だ。以前に植えた「ブルーカーペット」も同属だ。涙をのんで両方合わせて処分した。迂闊だった。

80 モリーユ!

トガリアミガサタケ 春一番に収穫するキノコ、トガリアミガサタケ。キノコと言っても、シイタケなどの担子菌類とは大きく異なる子囊菌、つまりトリュフや冬虫夏草のグループ。雨上がりの庭で8個、去年は30個位。二つに切ってよく乾燥して大切に保存。欧州ではモリーユという名前でよく知られている。毒成分を持つので調理法に従って食する。バターに合い、生クリーム仕立てのソースにして最高!

79 春の妖精

キバナノアマナ キバナノアマナ。スプリング・エフェメラル(春の妖精)の一人。樹木が葉をつけぬ間に、いっぱい陽をあびて春を謳っている。 ガゲア=ルテア Gagea lutea (L.)。ヨーロッパ全域に一般的で、 Yellow Star of Bethlehem と言われるが、フィンランドでは希少だとのこと。それで納得した。いつもルーペと胴乱を身につけたフィンランドの親愛なる蒐集家、ヘムレンさんはこの花をコレクションの第1号とした。頷けることだ。