998 有珠山・火口展望台

有珠山・火口展望台1977年の噴火前、画面左上は大有珠の大ドームであった。「土瓶の口」といわれた聳え立つ立岩は、崩壊して中央のピラミッド型の岩塊の堆積となった。40年経って植生は回復し、夏は緑に覆われる。湖を見下ろすロープウェイ山頂駅に続く洞爺湖展望台、火口展望台からは、有珠山本体と周囲に広がる火山地形の全容が見渡せ、一年を通してこの山の自然を楽しむことができる。

997 春の光

洞爺湖・春の光二月。冬の最中なのに、もう光りだけは充分に強くなっていて、北西の風が和らぐとふと春めいた感じがする。プラス8℃。嬉しさの芽が膨らんでくる。これから先、この湖で何をしようか。この湖の素晴らしさをどう伝えようか。水は静かに冷え、この上なく澄みきっている。このままでいい、何も伝えなくてよい。湖畔の静かなひと時。私だけの満ち足りた世界。

996 凍るアルトリ岬

アルトリ岬明け方は-15℃前後。海は凍らなかったが、岩の飛沫は氷柱となった。-5℃の向こうにアルトリ岬。岬もこの岩も有珠山の山体崩壊の名残り。崩壊が起こった年代が、もし仮に1万2000年を遡り、最終氷期と重なる時代ならば、海岸線は彼方の沖合だ。有珠山の崩壊もさぞ壮大なものだったろう。アルトリ岬は大きな流れ山の頂上部分かなどと、すべてが凍てついた風景の中で考えた。

995 カシワとミズナラ

カシワとミズナラ次世代の新葉まで枯葉を残すカシワ(右)と、何とか葉を残しているミズナラ(左)を探し比較した。カシワは落葉に必要な葉柄の付け根の離層が、維管束の頑張りで落葉しないのだという。この2種、遠目には似るが、葉の形、小枝や堅果の形態が異なる。カシワのドングリはミズナラと違い、まん丸でまつ毛があり、「どんぐりまなこ」の語源とされるクヌギのドングリに似ている。

994 微睡むカシラダカ

カシラダカ地吹雪の正午前、気温は-11℃。窓越しの壁際にちいさな鳥がふっとやってきて、ツタの枝に止まり目を閉じた。風をよけて身を隠し、一瞬のまどろみだった。カメラに収めたあと、もう仲間の声に同化して飛び去った。小鳥の心拍数は毎分数百回以上だという。一日食べないと餓死する。瞬時に眠りに落ち、次の瞬間目覚めて群れとともに風の中に消える。時の中を駆け抜けるいのちだ。