589 水の正体

水面の氷長流川(おさるがわ)も凍り付いていて、流水の川面が凍り、融けて滴がまた凍り、こんな形に相成った。液体が固体に、翌日少し融け、溶解しきらぬうちにまた氷結。寒風に曝されて昇華し結露し、一夜が明けると、いよいよ硬く磨かれて、屈折と反射でこんな色。水を素材に時間と低温が仕上げた到達点はこの形

588 氷雨の世界

雨滴冷たい風が小雨を運んで来て、切り忘れたバラの枝に水滴を作る。魚眼レンズの水滴は一つずつ逆さまの世界を閉じ込める。葉を落としたサクランボとリンゴが映っている。 蘇芳色のバラの枝には血の色をした固い蕾が。やがて雨は雪となり、半年後の緑の季節を待つ。

587 山の端の月

朝の月尾根筋の林はすでに葉を落としていて、そこに満月が落ちてゆく。闇に留まっているようにも見えるが、林の中にするりと落ち込む。時が過ぎるのは早いのか月が遅いのか。 2015年12月26日午前6時25分。もう朝の時間なのに、まだ夜は明けない。

586 洒落者・カササギ

カササギ満州北部、老爺嶺・ハンダオヘーズ(横道河子)付近の豊かな自然描写で知られる作家バイコフ(1872-1958)に「こそ泥のココ」というカササギの話がある。「何ともすばらしい才能を持った鳥でココのことを詳しく書いたら一冊の本になるだろう」とある。道南にも繁殖の情報も有り、いつかはと思っていたが室蘭祝津の市街地でやっと出会えた。

585 昭和新山プロミネンス

昭和新山ドーム史上最強のエルニーニョの影響で南風が強く、南からやってきた低気圧は温暖前線を引き連れてきた。12月12日、16時、気温は10℃。寒暖計を見ていたら、向こうの昭和新山の水蒸気が一瞬、夕映えで紅く染まった。怒髪、天を衝く、まではいかないが、いかにも元気なドームを演出してくれた。なんとあたたかな冬隣り。しばし見とれていたが、色は数分で褪せてゆく。

584 マツの実

チョウセンゴヨウの実この時期に足を運ぶのは一本のチョウセンゴヨウ。前の冬、ひと月遅れで手にした芝生の上の松毬はぼろぼろに千切られ、実はなくなっていた。今年のを手に取り鱗片を開いてみると、種子が目玉のように二つずつ並んで見える。固い殻を割り小さなナッツを口にする。隠れた楽しみ、季節の贅沢というものだ。それにしても前のシーズン、私が見つける前に食べたのは誰?

583 旨いタラコは

旨いタラコ市販の塩タラコは実に不味い。魚卵の味がしないどころか、濃い漬け汁の味と舌の奥にいつまでも残る化学調味料の奇妙な味。“調味液”でなく「塩」のみで味付けしたタラコを函館で見つけ食べたが、これは旨かった。見習って、二腹200円で新鮮なタラコを買い、たっぷりの天日塩で締める。1.5㎏の重石、途中2度ペーパータオルを換え、冷蔵庫で約1週間。実に旨い塩タラコが誕生した。素材の持ち味を貶めてはいけない。

582 牧場のカモメ

カモメ壮瞥町の街の中の牧場で200羽ほどのカモメを見た。識別ができないので野鳥の専門家篠原盛雄さんに聞いてみた。「カモメという名のカモメで渡りの途中の集団であり、成鳥になるまでのさまざまなパターンの鳥が混じっている」とのこと。この町の人口は3000人を割り、子供の数は多くはない。種群が持つ健全な年齢構成の在り方について、小学校の青い屋根を背景に考えてしまった。

581 時代

ポロモシリ今は大黒島だが、ひときわ目立つ島なのでポロモシリ、左に尖って見える岩は小さいのでポンモシリと知里真志保・山田秀三の「室蘭市のアイヌ語地名」にある。1796年にやってきた噴火湾(Volcano Bay)の名付け親のイギリス人W.R.ブロートン(プロビデンス号船長)は船員オルソンをここに葬り、オルソン島という名もある。北千島にはブロトン島(武魯頓島)があり時代を物語る。

室蘭の基盤は数百万年前の海底火山の堆積(室蘭層=イタンキの白い崖)で、そこに溶岩が貫入し、岩脈はやがて残ってイタンキの岬、地球岬や測量山などとなった。安山岩の岩脈でできていた秀麗な母恋富士は採石のため削られて姿を変え、孤島だった大黒島は室蘭港の防波堤に取り込まれてしまった。時代と共に地形も地名も変わってゆく。

580 鈍色の風景

崎守の海冬も間近な室蘭市崎守町の海。北西の強い風に波がしらが吹き千切られる。防人の海なのか。

海鳥はオオセグロカモメとウミネコ。海が荒れるとここではいつもこんな風景。ちぎられた藻屑の中に餌でも見つかるのだろうか。