504  有珠善光寺

有珠善光寺開基は826年というから、北海道では珍しい古刹である。文化元年(1804年)、様似の等澍院(天台宗)、厚岸の国泰寺(禅宗)とともに建立された蝦夷三官寺のひとつでもある。1882年の有珠山噴火では辛うじて難を逃れた建物である。7500年前の岩屑なだれでできた流山地形に囲まれ、有珠山溶岩の配置があたかも石庭のような趣を見せる。

503  浅い眠り

羊蹄山5月11日、正午の羊蹄山。風はなく高曇り。大陸からの黄沙も止んで、洞爺湖の彼方、旧洞爺村の向こうに残雪を抱いた大きな羊蹄が見える。低い山には緑が戻り、これから万緑の季節を迎える。1万年前の火口を頂上に持つ若い火山。今は眠っているが目覚めはいつか。形も成り立ちも駿河の富士に似た、ここは蝦夷地の後志(しりべし)の富士。

502  シコタンタンポポ?

シコタンタンポポ?室蘭の自然が残っている砂浜でタンポポの在来種を見つけた。シコタンタンポポらしい。エゾタンポポは平地、丘陵地や里山などに見つかるが、海岸線にはない。苫小牧市美術博物館「タンポポ調査2014」に苫小牧海岸のセイヨウ、エゾ、シコタンタンポポの報告がある。

伊達市から苫小牧までの十か所ほど、砂浜に続く草地を調べてみた。室蘭市のほか、昔からの風景が残る登別市の海岸では群落も見つかった。件の苫小牧の現地からも確かに在来種系を見つけだしたのだが、私にはシコタンタンポポと同定する的確な資料の持ち合わせがない。

梅沢俊さんの「新北海道の花」では *北(胆振~根室地方の太平洋側)となっていて、分布域は当てはまるけど、詳細は載せていない。日本の野生植物(平凡社)の図版と解説には納得するも疑念が残り、フィールドでは個体差に惑わされ、ますます混乱してくる。近年になって分布域が広がったのか、身近すぎて確認が遅れてしまったのか。

T. shikotanense 色丹島。千島、根室からどこが南限なのか。渡島半島まで歩かねばならないか。ひょっとすると下北は、などと要らぬ推測まで頭を持ち上げる。考えるだけでもワクワクだ。

501  こんな風景

イタンキの浜今年、つまり2015年、5月の連休、こんな風景に出会った。家族が波打ち際でバーベキューを楽しんでいる。この家族だけ。大きな自然と潮騒の中、楽しい顔の思い出は何時までも残るだろう。そしてこの風景を大切にするだろう。自然を大切にするとは身近な所から始まる。住むなら、思い出を紡ぐならここへおいで。ここは室蘭、イタンキの浜。

500  春の海から

エゾメバル知り合いから「ガヤ」を4尾頂いた。磯から上がって間もなくの、身の厚いエゾメバル=蝦夷眼張。これぞまさしく鮮魚なり。春告げ魚(はるつげうお)の名もあって、北国の旬はこの時期だ。 味を抑えて煮物に仕上げた。舌に広がる磯の味。中学の頃、春の磯でガヤを釣っていたことを思い出す。 翌日は、少し硬くなった身に煮凝りを乗せて、少しずつ箸で解しての酒の友。旨かった。