柔らかな光が満ちてはいるが、まだ1月末の寒さが身につたわる。見上げた空に大きな日暈が出来ている。上空の細かい氷晶が太陽光で屈折され、太陽の周囲に大きな輪となる、比較的通常の物理的現象。この大きさは太陽を中心に半径22度の内暈(ないうん)が一般的で(22-degree halo)、外暈と呼ばれるものは46度だそうである。目安になるものが無い中空でとても大きく見える。夜空の星を説明する尺度でいうと、手をいっぱいに伸ばして親指とひとさし指いっぱいの間隔を二つと、握りこぶし一つ並べた角度だ。画像に収めたいと思い最良の場所を探した。噴火湾に臨む伊達製糖所の、冬、いつも見る白い蒸気がアクセントになる位置まで近づき、シャッターを切った。
月別アーカイブ: 2013年1月
185 朝日を受けて
184 透明な惑星
183 春を待つ
182 明日に向かって
181 ハシボソガラスの雌雄識別
180 凍る火の山
179 ホタテを食べる
北の海の冬季代表は何と言ってもホタテ。噴火湾で養殖され、4~5年物が出回っている。英名 Scallop で総称される Pectinidae の中でも特筆される食材。まして種小名 yessoensis は蝦夷地のこと。ならば北海道人としては誇るに値するまさしく自慢の逸品だ。
写真のローズマリー側から左へ、外套膜、鰓、右外套膜、閉殻筋(貝柱)、中腸線。いずれも食感、味に際立つ個性がある。大きな貝柱の横に付いている小柱(写真左上)は殻を閉じっぱなしにする平滑筋からなる補助閉殻筋で、コリコリしたなんともよい食感を持っていて、私の最も好きな部位だ。緑褐色の中腸腺は肝臓の働きを持ち、貝毒などをため込むことがあるので通常は食べないが、なかなか「濃い」レバー味が有ってこれまた旨い。ローズマリーの右にあるのはボイルした卵巣で、精巣は白みを帯びる。
乾物の貝柱は中華料理では世に聞こえた名品で、外貨獲得のお役に立っているが、われわれが日常手にするホタテは、採れたての絶大なる美味しさがあるうえ、食材としての使い勝手や値段もお手ごろで、貝柱の刺身、殻つきのバター醤油焼き、炊き込み飯などお馴染みのメニューにおさまっているようだ。だが、産卵期(春)前のたっぷりと太って豊潤な旨さの満ちた生殖巣や、外套膜の濃厚な食味は主役たる貝柱に負けない逸材である。鮮度の良いホタテが入手できることを最良の武器に、その風味を生かすことが出来れば、濃厚ながら穏やかな味わいは他の食材や調味料、ソース類との相性も良く、多様な料理へと進化できよう。現地人たるもの、この卓越した可能性を眠らせてはならない。