44 埋み火 投稿日時: 2012年2月27日 投稿者: nizaemon 白く輝き、雪煙をあげる有珠山山頂部と昭和新山。数年前にも撮影したが、私はこの画角が好きだ。春の雪は昭和新山のドームのほんの少しだけ高い地熱で溶け、岩肌に吸収される。ドームの上面は、デイサイト熔岩の熱で土壌が焼かれて出来た天然の煉瓦だから、水分を吸って益々濃い色合いに見える。徐々に冷えつつあるドームだが、まだまだ火の山としての情熱を感じる。
43 マツの実の滋味 投稿日時: 2012年2月26日 投稿者: nizaemon 暮れに収穫したチョウセンゴヨウ(朝鮮五葉松)のマツカサから硬い種子をほじくり出し実(胚乳)を食す。松脂が多いので靴底で揉んで収穫するのがコツだ。小さいが滋味が舌の奥に広がる。日本には無かったが、古代から世界中で食の素材となった。酒のグラスを傍らに、金槌で軽くピシッとやってもいいし「石器」を使ってもよい。その気になって探すとよくある樹です。お試しあれ。
42 椴の森で 投稿日時: 2012年2月25日 投稿者: nizaemon 児童館の冬の里山観察会はマイナス4℃の中で行われました。子供達には初めてのスノ―シュー体験でした。キタキツネとエゾシカの足あとを追って小さな雪原と、少し冒険しての椴の森へと分け入りました。跳ねたり走ったり、こどもたちの身体能力に圧倒されてしまいました。足跡や木の実の食べかすなどから、冬の生き物たちのたくましさを発見しました。有珠山の1663年噴火の軽石層(Us-b)も見にゆきました。
41 食べたのは 誰? 投稿日時: 2012年2月23日 投稿者: nizaemon 陽のあたる雪のとけた里山の南斜面、春を待ちかねていたロゼット葉がいくつも見つかる。マツカサの芯と苞鱗も散らかっている。吹雪で落とされたアカマツの葉と一緒だったマツカサを分解してみたら、翼のついた小さな種子が見つかった。秋に蓄えたものでは足らずに、これを食べて厳しい冬を越した生き物がいます。食べたのは誰? それは冬眠しないエゾリスです。
40 うるさいやつら 投稿日時: 2012年2月21日 投稿者: nizaemon 腹のすいたヒヨドリが2羽、台所の窓の向こうのサクランボの木にやってきている。縄張り性が強く食べ物をめぐって他の鳥達といつもいさかいをおこしているようにも見えるが、かれらは生きることに真面目で懸命なのだ。ヒヨドリは秋の終わり群れを作り津軽海峡を南へ渡る。ハヤブサの攻撃を避けながら、海面すれすれに命をかけて竜飛岬へと渡るNHKの映像を見てひどく感動した。
39 春告げ魚 ニシン 投稿日時: 2012年2月18日 投稿者: nizaemon 春告げ魚は各地にあるが、北海道では間違いなくニシン。よいニシンが手に入った。鱗がそろっていて剝れていない。余市産、体長36cm。新鮮で、バラけた腹子は手、包丁、シンク、至る所にくっついてしまう。海では海藻に付くのだが、これは我が家で美味しく食べてしまう。小さな命から大きな生きものまで、食物連鎖という膨大な浪費の上に我々の生命の星は成り立っている。
38 ロッドユールのカエル 投稿日時: 2012年2月18日 投稿者: nizaemon ロッドユールが来ていったらしい。カエルのひぼしとボタンが残されていた。これは彼のコレクション。暖かくなったら、またそっと来てくれるだろう。 去年の夏、網戸の隙間から入り込ん で、綿ごみを纏いながらカーテンの下で乾ききったニホンアマガエル。だれしも半年先の自分の運命はわからぬもの。5月になって土の香りがしてきたら草むらの中に戻してやるつもりだ。
37 流れ者 エチゼンクラゲ 投稿日時: 2012年2月17日 投稿者: nizaemon アルトリ岬で見つけた裏返しのエチゼンクラゲ。 近年各地の沿岸で漁業を妨害し話題になっている。1958年、室蘭の砂浜に径1mをほどの個体がたくさん漂着し、足で上に乗ってもつぶれなかった経験がある。その年はサンマ漁に被害を与えた。大きいが遊泳能力が弱いのでプランクトンに含まれる。東シナ海が出発点という。あらためて海は南も北も繋がっていると感じる。
36 地中のガラス 投稿日時: 2012年2月17日 投稿者: nizaemon 豊浦町のトンネル工事現場から出た黒曜石をいただいた。アメ色のガラス質だ。数km離れた豊泉川の河床からは、昔から黒曜石の亜角礫が産出され、縄文時代の石器の材料として使われていたという。洞爺湖火砕流起源として地下で繋がっているのだろう。構成微量成分の組成差で産地が特定されるので、石器の原材料としての流通経路を判読する格好の資料でもある。
35 瞳の向こう 投稿日時: 2012年2月15日 投稿者: nizaemon 輓馬(ばんば)を引き取り休養させている家がある。飼育小屋の外、雪の野面を見ながら佇む馬は見事に大きい。随分昔、荷車で重い石炭を運ぶ馬が、凍った坂道で転び、立ち上がれなくて馬方からひどい扱いを受けていたのを思い出す。激しく息を吐き、大きく見開いた白い眼を、まだ覚えている。私に近づいてくる馬の瞳の中に私が映っている。眼の中の冬景色は青く寒そうだ。