111 黒はすべてを

カシス 色の三原色を混ぜると黒に見えると言う。ブラックカランツはカシスという名の方が一般的で、ジャムやリキュールの名でよくレシピに登場する。今日我家で収穫のカシス、1.8kg。黒く輝くオニキス玉。その1/3量のグラニュー糖で煮て、たっぷりの軟らかなジャム(ピュレ)を作った。上出来のジャムと調理器具すべて深みを帯びたカーマインに染まった。驚いた。粒よりの漆黒の宇宙には溢れる カーマインレッドのパッションが包含されていた。黒は激情の色。

110 火の山の森の儀式

森の儀式 火の山有珠山で「星祭」が開かれている。ロープウェイを使った夜のイベントだ。先だって白老コタンのエカシによる「山の神に祈る、山の祭り」ヌプリコロカムイノミの伝統儀式が行われた。ステージの後の森は1977-78噴火後に回復したトドマツ、エゾマツ、ドロノキの森。今ではこんなに深く緑濃い森だが、噴火後はすべての植生が失われて、リセットされた後に再生され出来上がって「30年の森」だ。噴火という大地のくしゃみ程度の出来事で一つの小さな破壊がおこり、命の再生が当たり前に進んでこの景観が作られた。屹立する岩は旧「土瓶」の本体ドームの崩れ残った名残りの岩峰。次の噴火でこの山はどのように形を変えて行くのであろうか。この夜、寒く霧に覆われた夜空だったが、外輪山から見下ろす伊達の街の夜景は噴火など想定外の静けさで、足元に広がる星空を思わせるほど見事だった。

109 早生りんご「ツガル」

ツガル 7月も今日で終わり。このところの暑い日のせいで、リンゴも一回り大きくなった。去年まで虫食いばかりの収穫だったが、小さな実が付いてからの手入れと防除をこまめにやって見たら、きちんと結果が出たようだ。ここ壮瞥町は果樹の町。本気で教わろうとすると、プロの農家が何でも教えてくれる。お陰で我家の庭も果樹がいっぱい。商品にするわけではないから、姿かたちは二の次で、「味が勝負」に賭けて見る。

108 カバキコマチグモ(樺黄小町蜘蛛)

カバキコマトグモ 細長い一枚板のススキの葉を、型紙もなく切り取りもせず、折って畳んで紡ぎ綴じたチマキ型マイホーム。雌にとっては雄との愛を育み、やがて産室とし、そのまま棺となる終生の家。一見華奢にも見える細身、飴色の肌、でも気性は激しくその毒性は日本屈指。独り身で子を守る母性の化身。やがて子グモは母の生き身を食べ成長する。「どんどん食べて、おおきくなるのよ、、」。夏雲の下、茂った夏草の中でごく当り前にある究極の母性愛。上が雌下が雄。

107 情熱の味

ラズベリー 北海道がラズベリーに適した土地だと知ったのは実際に栽培してからだ。到る所からシュートが伸び出す。今年もたっぷりと収穫した。花托が茎に残り、奨果のみが掌に転がってくれる喜びはラズベリーの真骨頂。明るい透明感のあるルビー色。陰にはパープルの哀愁を滲ませる。一瞬、動物的なアロマを感じさせるその味は、紅い血潮のブラッドレッドなのかもしれない。口に広がる血の滴りは愉悦と安息をもたらす。

106 瑠璃色の晩餐会

晩餐会 暮色濃い有珠山外輪、観光客のさんざめきも落ち付いて、やっと静かになった頃、足もとでかすかに、しかし眼を射るような瑠璃色に動く光の塊を見つけました。シックな濃紺のタキシードに身を固めたオオヒラタシデムシと青藍色の衣装に包まれたキンバエたちの正餐の時。今日のメインディッシュは何でしょう。客に踏まれた青い尾のトカゲの子、それとも潜りそびれた哀れなミミズ。逢魔が時、人知れず進行中の素敵な食事風景を覗き見てしまいました。

105 昭和新山赤煉瓦

昭和新山赤煉瓦 新山のドームがせり上がり始めたのは1944年12月。激しい噴火の続く第3から第7噴火口に囲まれた丘からせり上がり始めた。それまで地表近くにあった山地、畑、河原の砂礫はせり上がる900℃以上の高温のデイサイトにしっかりと焼かれながら煉瓦となってドームを作りあげた。デイサイトの色は灰白色。だから、昭和新山の赤い色合いは赤煉瓦の色。7月20日、18時20分。

104 ジューンベリー

ジューンベリー  生垣の上に広がる灌木としてジューンベリーを見つけ、この春植えた。5、6本の株立ちで細い花弁の白い花が咲き、葉も爽やかで気に入っている。花が咲いた分実が付き、青く硬かった実が赤くなり黒紫色に色付いて、口にするともちっとした濃厚な旨味が口の奥歯あたりに広がる。英名はJuneberryだが当地ではJulyberry。-30℃まではOKとテキストには書いてある。有りがたい植物だ。画像の向こうは昭和新山と有珠山。

103 サルナシ

サルナシ 半日陰の中にひっそりと咲くサルナシの花。俵型の実を切ると果汁あふれる云わずと知れた無毛、フィギュア版のキウィフルーツ。毛のある中国産のシナサルナシ(Actinidia chinensis)がニュージーランドで品種改良され彼の国の国鳥の名をもらい世界へ羽ばたいた、いや転がり広がったのがキウィフルーツ。昔から山では人気の奨果で子どもらは舌が荒れるくらい食べたものだ。

102 テン -貂-

テン テンMartes memlampusが死んでいた。昭和新山のそばで車にはねられていた。喉から胸にかけての毛色が金色に輝いていた。過去に本州から毛皮用に国内移入され、放野されたものの末裔だろう。黒い脚が特徴だ。目の前を横切るお前の野生の姿を見る幸運に与かりたいものだ。三国志の美女貂蝉は呂布の思われ人。北海道には準絶滅危惧種のエゾクロテンがいる。