821 エゾイラクサ

エゾイラクサ数年前思わず握って痛い目に遭ったエゾイラクサを思い出し、秋枯れの茎を取りに出かけた。河原は9月18日の台風18号の出水で荒れ、なぎ倒され砂に埋もれていたが、なんとか数十本確保できた。再生していた葉は対生なのでエゾイラクサ。乾燥して繊維を採り、春までに撚って細紐にする予定だ。繊維は細く、撚りあげると強靭だ。昔、アイヌの人たちはテタラペ(白いもの)という布を織り、衣服を仕立てたという。

820 日和山健在

登別日和山登別温泉の大湯沼。あたりに響く噴気の轟音は日和山(377m)の山頂近くに開く噴気口からの音だ。噴気の状態から天候を判断したのが名の由来という。最新の活動は200年ほど前で、大湯沼、地獄谷も含め登別火山という名を持つ。温泉やランドスケープとしての観光で有名だが、活動中の火山だということを忘れてはならない。ガンコウラン、イソツツジなどの高山植物の群落もある。

819 色取り昭和新山

昭和新山の秋私の好きな上館山の尾根道からの昭和新山。この農道は5kmも続き、人工物がほとんど目に入らないので冬季を除いて良く通り、有珠山、昭和新山を心行くまで眺める。今年はこんなビビットな風景が飛び込んできた。景観用のほか緑肥としても優れ、菌根菌が良い働きをするという。鋤き込んでそのまま緑肥にするのかと思っていたが、隣接する畑の様子からそうではないらしい。

818 悠久の北海道

支笏湖広葉樹林樽前山麓からの落葉樹林帯。紅葉が始まっていて、赤いのはカエデ、ナナカマド、黄色はシラカバ。白く見える樹は早くに葉を落としたドロノキだろう。トドマツの緑も見える。はるか20km向こうには苫小牧市が浮かぶ。その奥は勇払の大原野と日高山脈だ。 晩秋の気配の中を雲の影が横切る。気宇壮大な風景である。100年前、開拓に入った人々の不屈の覚悟を思い起こす。

817 風不死(ふっぷし)岳

風不死岳樽前外輪からの風不死岳(1102m)。支笏湖カルデラは4万年前の巨大噴火で形成され、湖の南岸にこの風不死岳が誕生した。次に北岸で恵庭岳が、もっと新しいのが樽前山で約9千年前からの活動だという。氷河期が終わり、縄文時代には若い樽前が成長し続け、風不死は浸食されてこの山容となった。風不死のピークに並んで13km向こうに恵庭岳の溶岩塔を持つ頂上部が見える。

816 樽前山ドーム

樽前山ドームと火山弾10月18日、樽前山八合目から頂上(1022m)を目指した。正午の火口原はこの程度の雪。さすがに山頂のドームの存在感は圧倒的だ。1909年1月に噴火をはじめ、4月17日から19日の間にこの溶岩ドームの大部分が形成されたという。高さ130mもあるこのドームは火口に栓をしたようにも見える。栓を吹き飛ばすような噴火が起こらないよう祈る。手前はパン皮状にひび割れた火山弾。

815 ムラサキシキブ

ムラサキシノブ室蘭の絵鞆半島は港の殺風景さに反し、外海に面した斜面には豊かな植物相が見られる。冬の北西の風が遮られる南斜面はいち早く咲くカタクリなどのスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)に覆われる。チャラツナイの岩礁を見下ろす南向き斜面の窪地にムラサキシキブの大株を見つけた。枝先の赤紫色の果実が秋の陽に美しかった。

814 向こうの火山

恵山大波の打ち寄せる室蘭イタンキ海岸から渡島半島の先端にある火山、恵山(618m)を遠望した。恵山まで直線距離60㎞。恵山は溶岩ドームを持つ小型の火山だが、この数百年に数回の噴火があって、1846年の水蒸気爆発では火山泥流で数十人の死者が出た。直下の海岸線には集落が点在し良い温泉にも恵まれているが、活発な火山でもあるのでハザードマップが作られ配布されている。

813 シータテハの秋

シータテハ秋になって誰も遊ばなくなった裏庭のブランコにシータテハが止まっていた。似たチョウのキタテハはこの地方にはいない。裏面のCの斑紋を見ようとしたが、暖かい陽ざしの中、快活に飛び去っていった。エルタテハはよく見るが、裏庭でのこのチョウは初めて。このまま冬を迎え、どこかの木の洞で眠りながら-20℃を耐え忍ぶ。次の春、またどこかで巡り会えるだろうか。

812 ハイタカがやってきた

ハイタカがやってきた朝、この辺りに住むつがいのハシボソガラスの動きが激しい。鳴き方は緊張した警戒心の表れ。カラスに混じって素早い動きのハイタカが目に入った。向うに見える秋色を増した昭和新山の裾野からこの冬の下見にやってきたのだろうか。縄張りが重なるハシボソガラスも加わって、追いつ追われつの終わりのない攻防戦が小半時続き、やがてゲームは山の方へ移動していった。