236 秘密の花園 投稿日時: 2013年5月31日 投稿者: nizaemon 室蘭の外海の海岸線は地形にしても生物の棲家としても実に多様で、植物、動物の種類も豊かだ。まさしく豊饒の海である。だが残念なことに、人の手が入るとたちどころにコンクリートで埋め立てられ波消しブロックが入り、おまけに育苗、栽培漁業と銘打って味気ない海に変容する。自然の磯や浅海が生態系を支えるもっとも優れた揺籃の場だというのに。じり貧の海が迫る。
235 世界最大の 投稿日時: 2013年5月30日 投稿者: nizaemon Cryptochiton stelleri (Middendorff, 1846) これが学名。8枚の貝殻を持つ貝類の腹面がこれ。標準和名はオオバンヒザラガイ。地方名「ムイ」はアイヌ語の「蓑」の意。アメリカではGumboot Chiton(ゴム長ヒザラガイ)。下北半島から北海道、千島、アラスカ、カリフォルニアまで分布する環北太平洋種。30cmを超すという。この貝との付き合いは長いが北海道では20㎝止まりだ。食用にしたと云うが美味しくはない。
234 ペシポクの穴 投稿日時: 2013年5月29日 投稿者: nizaemon 知里・山田「室蘭市のアイヌ語地名」(1960)に「ペシポク」「ペシポキ」「ペシポッケ」(Pespok;Pesipoki;Peipokke)以上いずれも使われた。語源は崖の下、の意とある。この浜でたまたま出会った漁師に聞いたら「ベシボケ」。「あ、ペシポッケ」と聞き返したら、「そうだ」とのこと。「で、あそこの洞窟は?」「ベシボケの穴」。私(撮影者)の後ろにも出口がある巨大な洞窟。詳細は秘密。
233 新羊蹄山 投稿日時: 2013年5月29日 投稿者: nizaemon ヒバリの野面に収まってはいるが、この羊蹄山、最近数千年は沈静状態の若い火山だ。有珠山は七千年の眠りを破って1663年に噴火し、以来9回噴火し現在に至っている。富士山に似た端正な山容の下には古羊蹄山が存在し、かつて西側に巨大な岩屑なだれを引き起こしたという。一万年以降の活動の跡が山頂火口、半月湖、火砕丘として残っている。危ない危ない。
232 相互扶助 投稿日時: 2013年5月28日 投稿者: nizaemon コアカミゴケ。有珠山山頂近くのコスギゴケの群落の中で。コケではなく菌類と藻類の共生体。雨などの後は水を吸収して軟らかいが乾燥すると指先で灰色の砕片となる。極端な痩せた状態の中で、カビに近い菌類は菌糸で形態を維持し藻類は光合成産物を提供する。赤いのは盃状の子器で菌類としての繁殖器。学名は菌類として命名されるという。
231 コケのはな 投稿日時: 2013年5月27日 投稿者: nizaemon 蘚類とは分かっていた、スギゴケとは推測できていた。やっとわかったのがコスギゴケ。銀色のペパーミントグリーンの蒴(胞子囊)と蒲色の蒴柄。洒落た色使いの根元には雄花盤が見える。長年の課題が解決した。有珠山山頂に近く、1977噴火の後、数年かけて隆起した有珠新山の背面、広範囲にこのコケの群落があって、そこにはヒカゲノカズラ、マンネンスギ、アスヒカズラなどのシダが共に生育する。
230 赤い血 投稿日時: 2013年5月24日 投稿者: nizaemon 林道で見つけた切断された白樺。昨年11月の湿った重たいドカ雪で折れた樹を片付けたのであろう。根は生きていて、この春、新芽を精いっぱい吹き出すべく樹液を汲みあげたが、如何せんその先はなかった。白い樹皮に赤い血。甘い樹液に天然の酵母が飛び込んで発酵し、さらに赤かびの一種が繁殖したらしい。一つの命に、たくさんの生命体がぶら下がっている。やるせなさが残る春の不条理。
229 春を数えて 投稿日時: 2013年5月21日 投稿者: nizaemon 春を迎えて輝くような萌黄の林。1944年、今から69年前、左に見える斜面の昭和新山は激しい噴火を繰り返し、この風景は火山灰で覆われていた。噴火の終息後、先ずやって来たのがこのドロノキだ。パイオニアツリーとして先陣を張り、同胞ともども風雪をともにしてはたから見ても惚れ惚れとする一斉林。でも寿命は百年足らずで、数十年先にはこの姿はない。林内ではミズキ、ハリギリ、ミズナラなど次世代が育っている。
228 哀れ春の雄花 投稿日時: 2013年5月12日 投稿者: nizaemon 昨年11月の湿った大雪で、一夜にして多くの樹や枝が折れてしまった。根雪に埋まっていた折れたドロノキの大枝が、オオウバユリの新芽の上で雄花を咲かせている。珊瑚のような、血のような、因縁めいた春の色。ドロノキはここ昭和新山に先駆植物として、火山灰の上に生をなしたPopulus 属(ヤマナラシ属)のヤナギだ。雌雄異株で、雌株の花序は綿毛となり、Salix属(ヤナギ属)より遅れて柳絮となり新開地をめざす。
227 キノコの気もち 投稿日時: 2013年5月12日 投稿者: nizaemon スイセンが咲き始めたので、例年のようにサクランボウの樹の下でアミガサタケを探した。狙いは見事に外れ、今年は台所の脇で10個見つかった。なぜ発生場所が変わったのか、キノコが何を考えているかは判らない。大体にして地中の暗くカビ臭い世界のことだ。しかし、乾燥させると見事に香りの高い「セップ」となる。食べ方は良く知っている。クリームにもバターにも、鶏肉にもよく合う。生食は毒。