壮瞥町で子どもたちの防災キャンプがあった。有珠山は三十数年ごとに噴火を繰り返してきた。次の噴火まで折り返し点を過ぎたと考え、前の2000年噴火を知らない子供たちの避難生活を想定した体験学習だ。避難初日あたりの物資の少ない夜を想定し、夕暮れ、灯りを消し、ツナのオイル漬けの缶詰に灯心を差し込んだ小さな灯りを囲んで、非常食のみの夕食となった。その場にあるものを利用して作った灯りがみんなの顔と心をひき寄せてくれた。
月別アーカイブ: 2012年8月
122 いずこへ
121 潤沢の証人
120 生き急ぐ
119 いのちの証し
青い湖底に白いものが目に付いた。上はウチダザリガニのハサミと下は粉砕されたマシジミの殻。水深3~4m。1930年頃に阿寒湖に導入されたウチダザリガニは道東域で繁殖域を広げていたが近年洞爺湖、支笏湖からも繁殖が確認され、特に洞爺湖サンパレス付近では大量の個体が継続的に捕獲され、環境省により調査が行われている。その地点から東へ4km離れての確認となる。今年2個体目で、この種特有のハサミの白いシグナルも確認済みだ。マシジミはコイが摂餌後吐き出したものだろう。コイには喉に大きな咽頭歯が有り、タニシや二枚貝の硬い殻をかみ砕く。海と違ってこの洞爺湖の動物たちの姿は少ないが、生き物たちの存在の証しはあちこちにある
118 碧い城壁
117 森の「オーイ」
ここは洞爺湖中島、夜は無人だ。昼間はフットパスをめぐる人たちの声や島へ往復する観光船の音が遠くから聞こえるが夜は静寂そのもの。深い森に夕闇が迫る頃、樹々たちは太い声で話し始める。先ずはこの樹がひとこえ呼びかける。「おーい」。
口を大きく開いて「おーい」と呼びかけている太いミズナラの古木。中は洞になっていて、この口に顔を入れて「オーイ」とさけぶと「オーイ」と反響する。この森の妖精「オーイ」のミズナラ。葉はふさふさと茂り、まだまだ壮健で樹皮もしっかりしている。しかし、子は無い。種子のドングリも芽を出した若木もみんなシカが食べてしまう。このままでいくとこの樹は一代限り。こんな古木がたくさんある。今夜も叫んでいるよ「オーイ、何とかしてくれー」
116 トチノキ婆さん
115 緑青スプーン
暑い日が続き、たまらなくなって洞爺湖で泳いだ。穏やかに広がる湖岸の緑を眺めながら澄んだ湖水に潜るのは贅沢の限りだ。切り立った岩棚から深みに落ち込む碧さはたまらなく美しい。水深3mほどの砂の上に緑色のスプーンが落ちていた。古くから沈んでいたらしく、すっかり酸化して緑青に覆われている。
以前、洞爺湖への流入河川はカルデラ外輪からのものだけで、流出は壮瞥滝のみであった。1939年に長流川から導水をし3カ所に発電所が作られ、上流の黄渓にあった鉄・硫黄鉱山から強酸性廃水が流れ込み、1970年にはpHが5.3まで低下したと言う。現在、国が巨額を投じて中和処理を行ない、これは半永久的に継続してゆく。だが、有珠山の1977と2000年の噴火では噴出された火山灰によりpHが上昇、多少生態系が改善されたようだ。水中では時々コイや小魚に出会うが、生物生産の場としてはまだまだ貧弱な湖である。人が手を加えて悪化した洞爺湖の水質と、自然災害がもたらしたその改善。「禍福はあざなえる縄」か。