暑い日が続き、たまらなくなって洞爺湖で泳いだ。穏やかに広がる湖岸の緑を眺めながら澄んだ湖水に潜るのは贅沢の限りだ。切り立った岩棚から深みに落ち込む碧さはたまらなく美しい。水深3mほどの砂の上に緑色のスプーンが落ちていた。古くから沈んでいたらしく、すっかり酸化して緑青に覆われている。
以前、洞爺湖への流入河川はカルデラ外輪からのものだけで、流出は壮瞥滝のみであった。1939年に長流川から導水をし3カ所に発電所が作られ、上流の黄渓にあった鉄・硫黄鉱山から強酸性廃水が流れ込み、1970年にはpHが5.3まで低下したと言う。現在、国が巨額を投じて中和処理を行ない、これは半永久的に継続してゆく。だが、有珠山の1977と2000年の噴火では噴出された火山灰によりpHが上昇、多少生態系が改善されたようだ。水中では時々コイや小魚に出会うが、生物生産の場としてはまだまだ貧弱な湖である。人が手を加えて悪化した洞爺湖の水質と、自然災害がもたらしたその改善。「禍福はあざなえる縄」か。