去年の11月、とびっきり鮮度のよい地物のカタクチイワシが手に入ったので、すぐさま天日塩で漬けこんだ。その後、塩を落とし頭を切り取ってフィレにし、漬けなおしてアンチョビーとなる。それから2ヶ月、良い味に出来上がってくれた。熟成が進んでいるので容器に丁寧に詰めてオリーブオイルを満たして完成。手造りの最上の逸品である。
しっかりとした歯ごたえ、いつまでも口の中いっぱいに広がって残るうまさとほんの少しの生臭さは、手前味噌ではなく、今までに食べたどのアンチョビーより、はるかに濃厚な味となってのデビューとなった。ここの海、噴火湾からの賜物、小さく軟らかなイワシは濃密な味を持つ極上の食品へと進化してくれた。海からの塩と小魚と,少しの時間ががうまみを凝縮させてくれたのだ。人はこうやってうまいものをこしらえてきたのだ。地方を代表する自慢の味はどれを取っても骨太かつシンプルさが真髄。
私のパスタはいつもディ・チェコのスパゲッティー二。パスタのソースにはアンチョビーとガーリックの下味は欠かせない。アンチョビーの乗ったピザも私の好物。でもこれからは地元の魚で作った地産地消のオーガニック食品、我が最強のアンチョビーでいこう。そうだ、このシーズンには、脂ののっていない小ぶりのニシンがある。次にはこれが間違いなくアンチョビーへ、いいえ、塩漬けヘリングへと変身だ。まだあるぞ、タラ子のボッタッルガもいい。スローフードの国イタリアには負けてはいません。