16 若いキツネへのオマージュ

若いキツネ昭和新山の駐車場の奥、薪が積み上げてあるすぐ下で、若いキツネの白い頭蓋骨を拾った。ラベルをつけ、データを書き込んで標本にしようと思い、庭先に置いていた。暫くして焚き火台の灰の中から炭化して黒く輝く頭蓋骨が見つかった。嵐で飛ばされ、落ち葉と一緒に燃やしてしまったらしい。小さくかわいい頭骸骨。瑕疵のかけらもない完全無比な命の証し。ある日、薪の下で死んでしまったけれど、お前が北の大地に生きていたことの証人になってあげるよ。おまえが精一杯生きていたことを私は知っている。

15  観天望気

昭和新山ドーム椅子に座って西を向くとそのまま昭和新山が見えます。ここからの新山ドームは椀を伏せたように丸くみえます。今日は北西からの強い風が吹いていて、ドーム中央に見える亀岩や北面の噴気も鉢巻きをしたように真横に流れています。真北からの風では、グレン谷の噴気は頂上には巻き上がりません。私にとって昭和新山ドームの噴気は、毎朝必ず見る、風見鶏となっています。

14 冬の始まり

冬の始まり北舟岡の海を望む畑地で冬の始まりの風景に出合いました。畑は凍てつき、老樹は葉を落とし、海はにび色に光っていました。遅かった今年の冬も冷たい十二月の風に乗って確実にやってきています。こうやって、凍てつく季節を迎え、ひとつ歳をとり、新しい緑なす春がやってきて、生きものたちは一巡します。この大地はいく万回これを繰り返したのでしょうか。いつもいつも吹き続けている時の風に乗って、、。

13 だみ声ガラス

だみ声ガラス 私はカラス。冬ガラス。精一杯、濁声を張り上げて、騒ぎ立てるのがやっとのこと。冬はいたずらしません。 どうですこのカラス、重心を低く移し、腹筋を使って、喉を膨らませ、演歌ですよね、このポーズ。有珠山相手に唄っています。嘴と頭を低くした姿勢から見るとハシボソガラスに見えるけれど、ハシブトガラスでしょう。 「♪俺は~ フ~ライ坊の~ォ カラスだ~ゼィ~♪」

 

12 いよっ!十三男爵

メークイン( May Queen)と男爵(Baron)のお揃いのカップル。ジャガイモ界の正統派。  寒くなりました。これからの季節、イモ好きにはたまりませんね。北海道では、いま20種類を超すジャガイモが作られているのだそうです。ジャガイモは茎が塊状に太ったもので、眼(芽)が順番に並んでいます。川田男爵に会ったことはないけれど、 私の大好きだった伊丹十三映画監督は、よっぽどジャガイモ好きだったようで、マーナ・デイビス夫人のすばらしい訳本をこの世に残してくれました。私の宝物となっています。Pigs In Blankets(毛布の中の豚)、ポテト入り Flowerpot Bread(植木鉢で焼くパン)、はては Anya’s Tatra Poteto Pudding (アニヤ式ポテトプディングタトラ風) など、わけのわからない料理―しかしレシピをよく見るとこれもひときわ美味しそう― まで、洒落たレシピがたくさん載っていて、くいしん坊を十三ワールドへといざなってくれます。  家の地下室には大袋に入った洞爺火砕流台地産ジャガイモがたっぷりとひと冬分有ります。今晩は冬の嵐、風の音を聞きながら十三レシピのイモ料理でも作るか。ポテトブック

 

11 ジオパークリンゴ オールスターキャスト

リンゴオールスターキャスト去年のちょうど今の頃、雪まじりの寒い日にこの絵ハガキを作りました。壮瞥のリンゴ園を回ってかき集めた種類が21種類。でも、肝心の「ほくと」が抜けていたのです。「ほくと」とは北斗七星のこと。昨日、洞爺湖畔のリンゴ園で見つけ、22種類がそろいました。まだまだ、秘蔵のリンゴを育てているリンゴ農家があるのでしょうが、私にとっては「壮瞥ってすごいな~」です。これぞ、北のジオパークの「大地の力」です。

10 花のような

アズキナシの実今がちょうど見ごろ。澄み切った空を背に、または初雪の上に浮きたって、その名はアズキナシ。小豆に似た赤い実とナシの花を思わせる白い花弁。ナナカマドと同じ属。どちらも生活感のある名前で、昔から身近にあった樹木だったのでしょう。この秋は洞爺湖温泉から壮瞥滝の間の湖畔に沿って幾本も見つけました。気がつくと、ドンコロ山のスコリア斜面にもたくさん有りました。来年の花の時期が楽しみです。

9 感謝をこめて

晩秋の昭和新山晩秋の昭和新山です。今年もこの山でよい思い出を残すことが出来ました。小さいけれど奥行きのある山と感じた一年でした。 春には足もとのフキノトウやウドを避けながら、頭上にハヤブサの威嚇を聞きました。夏の日は修学旅行の生徒らの勢いに負けずに何とか先頭をつとめ、この山について多くの真実を語ることが出来ました。9月の秋ははアキグミの実の茜色から始まりました。 今、北西の風が吹きつける時期になり、昭和新山はいままさに眠りにつこうとしています。

8 豊饒の時

新山沼新山沼の紹介です。昭和新山の誕生時、激しい噴火と隆起のなかで、壮瞥川は行く手を絶たれ沼地となりました。町民の手で新しい水路が作られ、この新山沼が残されました。写真奥は隆起した昭和新山の屋根山、右奥、遠くに見えるのが、有珠山山頂(733m)。白く光るドロノキ、水面のアシ、ガマ、水中の多様な生き物たち。冬には多くのガン、カモ類がやってきます。満ち足りた時間が流れます。

7 あと50年もすると

新山沼のドロノキ林新山沼周辺のカラマツがきれいに色付きました。その手前、早くに葉を落とし白い木肌が美しいドロノキの林がひときわ白く光っています。昭和新山が誕生して68年、麓にはみごとに樹高、樹齢がそろった林が形成されました。林の中ではミズナラ、クリ、ニセアカシア、ミズキなどの次の世代が成長しています。ドロノキの寿命は120年くらいで一代限り。毎年の四季の繰り返しの中で風景は変わってゆきます。