16 若いキツネへのオマージュ

若いキツネ昭和新山の駐車場の奥、薪が積み上げてあるすぐ下で、若いキツネの白い頭蓋骨を拾った。ラベルをつけ、データを書き込んで標本にしようと思い、庭先に置いていた。暫くして焚き火台の灰の中から炭化して黒く輝く頭蓋骨が見つかった。嵐で飛ばされ、落ち葉と一緒に燃やしてしまったらしい。小さくかわいい頭骸骨。瑕疵のかけらもない完全無比な命の証し。ある日、薪の下で死んでしまったけれど、お前が北の大地に生きていたことの証人になってあげるよ。おまえが精一杯生きていたことを私は知っている。