553  どちらが先か

シラカバ箱根近くに住む知り合いがやって来て、「何にもまして素敵だと思ったのはシラカバのある風景だ」と言った。「こちらでは当たり前の風景だ」と自慢して見せた。だがこの風景、これはあんまりというものだ。ひどすぎる。まかり通った電線にしてやられている。この樹は5年もすると箒のような形に復活するだろうがこれでは主客顚倒。軒を貸して母屋を取られてはいないか。

552  里山を編む

樹皮を編む火山マイスターの Y,mimatu 氏の発案・指導で、裏山から得られる素材で籠やコースターを作る講習会があり、手慣れた師匠の技術を教わろうと8名が参加した。この辺りではヤマブドウ、オニグルミが簡単に手に入る。サルナシ(コクワ)、シラカバ、昔からアツシ織りなどの繊維として使われてきたシナノキやオヒョウニレも入手可能だ。

今のところ、採取、剥皮、晒しは師匠の手業にたのむこととし、弟子の手は、割きと編み上げに徹する。自然と生活を直接に結ぶ手の技は、里山と繋がることで生活を築き上げてきた証しでもある。

551  手にするマントル

橄欖岩薄い卵殻が地殻とすると白身はマントル、と説明を受けた。数千℃のマグマの固まった本体が橄欖岩。大陸プレートの衝突で押し上げられて、数十キロ下で凝固した橄欖岩をここでは手にすることができる。それが様似町のアポイ橄欖岩なのだ。正確には世界的に知られた「幌満かんらん岩(Horoman-peridotite)」。比重は3.0~3.3だという。花崗岩よりもずっと重い。腊葉標本の重石には絶好だ。幌満の「ジオラボ アポイ岳」の新井田先生に切っていただいた河原の石はペーパーウェイトだ。嬉しいね。

アポイジオパークが世界ジオパーク新規認定となった。我が家からは直線で170km。少し遠いがそれでもぐっと近づいた。橄欖岩を通して岩石の勉強ができる。これぞ「七十の手習い」だ。長い海岸線の潮間帯の生き物にも興味がある。長靴を履いて出かけなくっては。

550  大有珠ピナクルの月

ピナクルの月庭から有珠山に落ちんとしている月を見つけた。慌ててカメラを取り出し大有珠稜線のピナクル(岩塔)に重なる瞬間を狙った。冴えた三日月が写っていた。月は地球の衛星だから晴れていれば、夜、どの時間かに探せるものなのだが、忙しい生活の流れの中で気が付くことはまずない。この瞬間に「月」と出会えたのはとても嬉しい。月と火山と自分が一直線に結ばれたということだ。

549  様似エンルム岬

様似エンルム岬シャマニ会所絵図アポイジオパークの玄関口はここだ。様似町の海岸線にひときわ目立つランドマーク、エンルム岬。 サマニはアイヌ語だが詳細は不明、エンルムは「尖った場所」だという。

道南からの海沿いの道はおぼつかなく困難を極めていたという。アイヌの人々の生活も古くから知られ、エンルム岬、観音山にもチャシがあったという。この岬は人々の心と生活の拠り所となっていたのだろう。

当初は松前藩の運上所であったが、機を見て南下する対ロシア政策の一環として幕府直轄地の会所とされた。 約200年前の様似会所の絵図にはエンルム岬の岩や会所の建物、長屋、井戸などが描かれている。以来、様似は漁業の中心地として栄え、さらにここを起点に日高山脈越えの二つの山道が官営道路として整備された。

エンルム岬の写真は今回の研修の際、観音山から撮影したもの。1810年ころに描かれたという「シャマニ会所絵図」はエンルム岬案内板よりお借りしました。

 

548  目指せ!世界ジオパーク

アポイ岳ジオパーク我々は様似町でこの地域のジオパーク仲間たちから熱い歓迎と、地形、地質に関する充分なレクチャーを受けた。人はこの地で、二つのプレートの衝突で持ち上げられた地下数十kmのマントルの情報を手にしたのだ。アポイ岳が幌満橄欖岩の岩体そのものだということも知った。幾種類もの橄欖岩を手にし、比重3を超す重さとその意味を味わった。

アポイ岳ジオパークはいま、世界ジオパーク認定を目指している。世界ジオパーク認定可否の発表は9月19日(土)夜だという。私はワクワクしている。

547  細工は流々

梅干し ブログ536「我が家の塩梅」の続き。15%の天日塩でひと月漬けこみ、晴れ間を見つけ三日ほど干したら飴色に仕上がって、味もまろやかでいい塩梅。梅干し用の竹籠は荒い目に竹の表皮を通してあって食材を痛めない。40年も前、用賀にあった竹籠屋の爺さんから買った優れものだ。

今年の梅は柔かく仕上げようと思い、取り出しに都合よいように一層ずつガーゼで仕切った。同じように3日間、日に当てた梅酢を少し多めに振りかけて、あとは一年か二年、ころ合いを待つ。

546  いのちの行方

死の円舞壮瞥川が昭和新山に遮られてできた新山沼に小さな波紋を見つけた。樺色の蛾が仰向けになり、羽ばたきながらくるくると回って水に流されてゆく。渦と同心円が錯綜する死の円舞。やがて一瞬ふっと輪が消えた。小さな虫の派手なひとり芝居をさっき見た大きなコイが下から飲み込んだのだ。どのいのちも死に方はそれぞれだ。過激だが決して不条理ではない、ごく普遍的ないのちの終末。

545  室戸の夏に似て

ハマユウ2010年4月、前年に世界ジオパークに認定された洞爺湖有珠山ジオパークのポスターを持って、南の国四国を旅した。今ではGGNにも認定されている室戸岬が、ジオパークに熱い眼を注いでいると聞いていたからだ。その時室戸岬で拾ったニンニク一片ほどのハマユウの種子が大株に育ってくれた。根元は30㎝位の太さ。今年はいつもと違って種子が一つ成熟して陽に輝いている。

遠景、昭和新山のドームの上は夏空にも見えるが、吹く風は秋。あとひと月もするとハマユウは鉢ごと室内に移される。

544  霧の向こうに

銀沼火口有珠山ロープウェイ山頂駅から10分歩くと丘が火口展望台。お客さんを案内して、今日の火口は霧の中と思った瞬間、本命の銀沼火口に陽が当たって明るく輝き、1分もしないうちに霧に閉ざされました。霧の日は幕間にこのような演出も見せてくれます。