457  茶が飲める

実生のチャ「尊敬する先生のお庭に落ちていたので育てて欲しい」とのことで、妻が旅行先の山梨県から持ち帰ったお茶の実を2粒育てることになった。ひと月たってその一つが発芽した。実生のチャの誕生だ。茶色の殻の中で二枚の子葉が膨らみ、そこから丈夫そうな根が出て、そのまま湾曲して用土に突き刺さっている。子葉の分岐からは小さな6枚の葉を付けた枝が天に向かっている。嬉しいね。ここまで来たら後には引けない。10年もしたらお茶摘みだ。チャはツバキ科、常緑の照葉樹。ナラ樹林縄文文化の北の地で照葉樹林文化の喫茶とはこれ如何に。

455  年賀状

箱膳長きにわたって、随分いろいろなものを飲み食いしてきました。ここひとつ、一汁三菜とまではいわずとも、自分の食生活を考えなおしてみたいと思っています。身土不二、三里四方に旨いものあり。この地方の豊かな食材をありがたく頂戴して、ゆったりとやってゆきたいと思っています。 ここまでが今年の年賀状。

正月にはこの地域の旨い海の幸、肉類や豆、野菜を食べた。イクラも作った。実に生臭く、美味しい自家製のメフンも作った。しかし蓮根、里芋は本州からの到来物、オリーブの塩漬けや搾菜は輸入物だった。スパイス類もそうだ。食いしん坊の私は、どこで折り合いをつければよいのだろうか。

454  北の縄文 松飾り

縄文松飾りしめ縄を作る機会があって、縄部分を教わって何とか作りあげた。関西からやって来て洞爺湖有珠火山マイスターとなったS氏が講師で、彼の田圃で育てあげ、湿りを入れて打ち柔らかくした稲わらを使わせてもらった。綯い方はやはり火山マイスターのBさんに教わった。飾るに際してはたと気が付き、例の伊達前浜の塩サケ(ブログ440、447)の頭を使って「箔」を付けることとし、裏庭の小さな王林を咥えさせた。松はオンコ、昆布はアルトリ岬産。これぞ地のものを使った北の縄文、ジオパーク松飾り。

松を飾るのは遠く雲南、照葉樹林文化からの伝えだというが、数千年をえて弥生式文化のこちら、ナラ落葉樹林文化の地の果ての仁左衛門宅が落ち着く先となりました。北の縄文人、オホーツク文化人たちは鮭と深~い縁で繋がっておりました。鮭は北の民が冬を越す「命の依代」でした。

451  旨いぞホタテ

旨いぞホタテ友人からホタテが届いた。大ぶりの殻つきのが15個、「生きがいいぞ」と油断をしたら指を噛みつかれた。いつもなら正月用に殻ごと熱湯に入れ、瞬時に取り出して貝柱を保存に回すのだが、今日はその前祝、極上の北海の絶品をそのまま味わった。まずは刺身。貝柱は厚めの3枚にそぎ切り、ヒモはぶつ切り、エラはそのまま。産卵期を終え、卵巣は小さいが短冊に。貝柱の固く締まって甘いことよ。卵巣は新鮮なウニの味。潤沢な磯の香のヒモは何とも言えない歯触りで、懐かしい赤貝を思い出す。ワサビは野暮だよ、要らないね。  あと一品、膨らんでいる白い下側の殻にむき身とバターと醤油を入れ火にかける。アツアツのところをウロごと二口ぐらいで頬張る。

450  ジオガシ旅行団

ジオ菓子日中-5℃に冷え込む有珠山洞爺湖ジオパークで、暖国伊豆ジオパークから遠来のジオガシ旅行団をゲストに迎えジオカフェが開かれた。「大地(ジオ)の面白さを美味しいお菓子に」という発想は科学と日常生活での幸せ感とのニッチを埋める素晴らしいアイデアだ。伊豆半島のジオサイトを表現する「9ジオ入り標本箱」が販売されており、ばら売りの標本、「弁天島斜行層理」と「下白岩有孔虫化石」を買った。実に固い地質学用語と上出来なお菓子のそのミスマッチさに感心する。有孔虫レピドシクリナ(鱗状で球形の意味)の化石を含む岩の原材料に玄米、ハトムギ、レンズ豆が含まれていたのには感心した。

考えてみれば、地学的な噴火や堆積、熱変性、結晶化は調理学での事象と重なる点が多い。規模や時間のスケールに圧倒的な差があるが、それも含めて手にする可愛いクッキーは何とも愛おしい。大地の成り立ちも、ざるの上やオーブンの中でのお菓子作りの成り行きで説明できるのだから、これはイグノーベル賞ものだとポリポリ齧りながら考えた。

448  壮瞥リンゴのショソン

ショソン12月にもなると窓からは雪色の有珠山と昭和新山のドームが見える。この町自慢のリンゴの収穫も終わっていよいよ冬ごもりの時期となる。   我が家の今年のリンゴを使ったショソンを作った。中身はこの秋収穫の早生種の「津軽」のジャム。甘みを抑えたプレザーブ風のジャムを1個、60g入れてある。溶き卵を塗りクープを入れて180℃で20分、パウダーシュガーをたっぷり振り220℃で更に5分も焼くと、表面はカラメライズされて味と色が深みを増す。今日は一気に20個焼いて、いかがですか、冬の日の午後、食べに来ませんか。

447  イワシの灯り

イワシの灯り近海産のマイワシを煮付けにしたら、煮汁の上にたっぷり油が溜まった。濃いめの味付けは脂とよく合い、芳醇な身は馥郁として骨離れもよく、魚好きにとっては文句なしの逸品だった。考えるところがあり、夕闇を待って麻紐で灯心を作り、火を付けた。思ったとおりだった。よく燃えて明るかった。 ニシンやイワシが豊漁だった時代、有り余った魚は大釜で煮られ魚粕となり上質の飼料や肥料にされた。魚油は不足していた鉱物油の代わりに使われて生活を支えた。漁師の生活は魚だけはあったけれど、あとは貧しかった。灯りがないと晩飯が作れないし、それよりも魚を口へ運べなかった。

447  由一ではない鮭図

塩引シャケせっかくいただいた前浜の鮭だ。上身にして塩で締め、切り身で保存しようと思ったがそれでは芸がない。見事な鮭だから、こいつの命をもっと有難く頂戴しようと、塩引きシャケにすることに決めた。近頃の鮭はただ甘ったるい味ばかりで、旨みの中に塩の効いた、焼いて塩汁が白く染み出しているようなやつが食べたいと願っていた。

切手鮭図

塩蔵と風乾と時間が蛋白質を純良なアミノ酸に分解し、出来るなら鼻を擽るアミンもあってと考え、とシャークベイの天日塩を多量に用意し、出刃を研いで事に臨んだ。鰓と内臓を取り腎臓はメフンに、眼窩にまでも塩を詰め込んで一週間、滲出した生臭汁を捨ててよく洗い、小一時間塩水につけて塩出しし、あとは冷たい風任せ。表面が干からびても取り込んで置くと身の中の水分がにじみだす。また風乾。半月経って出来ました。辛口のシャケ。

「本物の辛口のサケが少ないとお嘆きのご貴兄に」、いかがかな、手作りが一番ですぞ。 高橋由一の鮭図に倣って,旨そうなところを貴兄に一本進呈。

 

 

 

 

446  タコまんま

タコまんま今日、魚屋で探していたものを見つけ買った。「タコまんま」といい、「タコに入っている飯」の意味だ。ヤナギダコの卵嚢で一個が300円ほど。この季節になると出回り、旨いので買ってしまう。卵嚢には1,000粒ほどの米粒に似た卵が入っていて、岩などに一粒ずつ産み付けられるという。マダコやミズズダコの場合は房状につながって産み付けられ「海籐花=かいとうげ」といい食通には有名だ。たっぷりの湯に放すとやがてバラバラになり、コメのポン菓子のような形で歯触りのよい個々の卵が現れる。私は醤油と味醂と厚切りの生姜で濃い目に味付けをして、熱い飯にかけて食べる。

441  ハスカップのシロップ

ハスカップのシロップハスカップはアイヌ語由来小指の先ほどの小果実で、スイカズラ科の和名クロミノウグイスカグラ。シベリア,北海道の湿地に固有の灌木で、我が家の株は一大原産地の勇払原野、厚真(あつま)の庭師さんから入手したものだ。4株あって5月の半ば、まだ風が冷たいうちに白い花をつけ、ちょうどサクランボウのシーズンに重なって実を付ける。 シロップは水とグラニュー糖を等量で作りかなり甘く、計量カップ1杯の摘みたての実を入れて冷蔵し、時折撹拌すれば長く楽しめる。今回、季節外れに使ったのは7月末に摘み取って冷凍しておいたもの。美味しく甘酸っぱく、何よりも色がいい。ヨーグルトの上では洒落たマーブル模様を演出し、カクテルではどのリキュールとも合う。二色のアイスクリームのトッピングなど格別で、そうだ、付け合わせのビスコッティを作ろう。