447  由一ではない鮭図

塩引シャケせっかくいただいた前浜の鮭だ。上身にして塩で締め、切り身で保存しようと思ったがそれでは芸がない。見事な鮭だから、こいつの命をもっと有難く頂戴しようと、塩引きシャケにすることに決めた。近頃の鮭はただ甘ったるい味ばかりで、旨みの中に塩の効いた、焼いて塩汁が白く染み出しているようなやつが食べたいと願っていた。

切手鮭図

塩蔵と風乾と時間が蛋白質を純良なアミノ酸に分解し、出来るなら鼻を擽るアミンもあってと考え、とシャークベイの天日塩を多量に用意し、出刃を研いで事に臨んだ。鰓と内臓を取り腎臓はメフンに、眼窩にまでも塩を詰め込んで一週間、滲出した生臭汁を捨ててよく洗い、小一時間塩水につけて塩出しし、あとは冷たい風任せ。表面が干からびても取り込んで置くと身の中の水分がにじみだす。また風乾。半月経って出来ました。辛口のシャケ。

「本物の辛口のサケが少ないとお嘆きのご貴兄に」、いかがかな、手作りが一番ですぞ。 高橋由一の鮭図に倣って,旨そうなところを貴兄に一本進呈。