646 シコタンタンポポ?

シコタンタンポポシコタンタンポポは北海道の道東から十勝、日高、胆振の海岸に分布域を持つという。日高、大楽毛の国道沿いにひときわ目だって咲いていた。橙色がかった大きな花冠は「5㎝を超す」と言われているが、7㎝もの大きさの花を見つけ感激した。室蘭イタンキ浜の個体(ブログ502)と合致するかどうかはさておき、このシコタンタンポポ、北辺の海辺を棲家に盛大に生きている。

だが、この地域で、しかもややオレンジ色が濃く、大きな花冠を持つからシコタンタンポポと同定したが、わたし自身、この種そのものの形態的な特徴を確認しての判断はではない。外総苞片の厚さ、形、色など、この地域でのエゾタンポポとの明確な差異を挙げられないし、生育環境でのばらつきが大きすぎて整理ができていない。

タンポポを訪ねてやって来て、黄色い曠野に踏み込み、道を失ってしまった。困ったものだ。のんびりタンポポのお酒でも造ろうか。ね、ブラッドベリー爺さん。

644 水平・地平

水平・地平一度こういうところに立ってみたかった。水平線と地平線が繋がってそこに自分がいる。海にも陸地にも、その向こうにもなにも見えない。こんなところが日本に残っていた。
海は埋められ岬は削られ、陸には鉄塔が建って、どこもコンクリートや鉄の塊が目に入る。それが日本の海の風景だ。古からの自然の風景を大切にしているとは決して思えない。

ここは下北半島、六ケ所村。近くで使用済み核燃料の再処理工場と港湾施設が建設中だ。この風景こそ大切に残し、子孫に伝えねばならないのに。

643 ヤマシャクヤク

ヤマシャクヤクむせかえるばかりの新緑の今日、洞爺湖の中島を23名の皆さんを案内してゆっくりと歩いた。吸い込む大気まで緑に染まって、静かな遊歩道は柔らかな若葉で溢れている。サンショウの新芽、シウリザクラの花の房。その中でもひときわ目を引いたのはこのヤマシャクヤクの白。シカに食害されない植物だが、見事の咲きっぷりにはみんなが感動した。自然は極上の逸品を用意していてくれる。

642 まなざし

ウミネコ抱卵中のウミネコの親。卵はニワトリより少し大きく、灰色で長かった。この顔を見よ。白さとその意匠、凛としたその眼差し。母性の強さか。訴える目力は威光を放ち、近寄るすべもない。N.ティンベルヘンは、この仲間セグロカモメの嘴の色と子のしぐさの中から本能行動の神髄を見抜き、19723年、ノーベル賞を得た。私はただたじろぎ、見とれるだけ。(八戸・蕪島)

641 地の豆

地中花ツチマメをアイヌ語では「アハ」「エハ」というそうだ。比較的よく食べられた食材だったようだ。我が家の庭にもたくさんはびこって、草花を雁字搦めにしてしまうので毎年退治していた。20㎝位のを引き抜いてみたら豆がついてきた。鞘にも種子を付けるが、これは地中で結実した閉鎖花だという。要するに地中花。子房の柄が地中まで下がって伸びる落花生とは違うようだ。来年は発芽前に収穫して食べてみよう。

640 春風駘蕩

寒立馬青森県下北の尻屋崎。タンポポの草原で春を満喫する寒立馬を見た。軟らかな陽を受け背が光る。のどかな光景だ。大きくやさしい眼に軟らかな緑が映る。厳冬の岬の風と吹雪の中に立ち尽くす姿は想像できない。昔の南部馬、農耕馬とフランス、ブルターニュ由来のブルトン種との交配種だという。まさしく春風駘蕩。「駘」はくつわを外したウマだという。生命のおおらかさに出会った。

637 噴気

昭和新山ドーム時おり昭和新山のドームはこのように見える。午後3時頃、太陽は画面の右上、ドームはシルエットに落ち込み、噴気は逆光で白く輝く。今日は特に暗い雲も背景にあって風は新山の向こう側から吹いている。湿度もあり、気温も少し下がって条件がそろった。手前の屋根山のドロノキには緑が蘇り、七十歳を越してなお、この山は至って元気です

636 春の匂い

春の匂い去年の落ち葉を踏みしめながら洞爺湖畔を歩く。木立の向こうには中島の影。緩やかに風が吹く。足元のマイヅルソウの小さなハート形の葉と少し長めのギョウジャニンニク。指先で押しつぶすと青く軟らかな春の匂いだ。三枚葉のツタウルシの赤い新芽も見える。水の気配、湿った土、すべてにいのちの匂いがする。

635 シャグマアミガサタケ

シャグマアミガサタケ知る人ぞ知る赭熊網笠茸。かなりの毒菌だ。加熱中の蒸気にも毒性があるという。北欧では骸骨印の注釈付き料理法が確立?してるというが、恐ろしい中毒症例を知ると手も出ない。留守中に置いていった本人に急いで連絡すると、「やっぱり、シャグマですか」と落ち着いた声が返ってきた。怖いもの見たさ、物好き心などの好奇心は、住む世界をより深い知的悦楽へと誘ってくれる。

633 縄文の貴公子・人面把手

人面把手・長方形縄文時代中期の人面を模った装飾土器の把手部分という。北黄金遺跡と同じ頃だ。乳児の顔くらいの大きさだ。頬には入墨文があり、耳には装身具がつけられていたのだろう。凛とした表情からは作り手の創作意欲が、デフォルメされた意匠からは卓越した表現力が伝わってくる。二年間休館となる。間にあった。撮影禁止なのでスケッチをした。著保内野の土偶もよいがこれもいい。