699 いつもの風景だが

スミレモ属の一種 室蘭市母恋から地球岬へのいつもの道、当たり前の赤い石垣の風景だと思いながら鮮やかな色につられてカメラを向けた。私はこの金茶色の植物を菌類か地衣類と考え、図鑑類を当たってみたが納得できず、ネットで検索をした。苦労しながら辿り着いたのが、なんと母恋の石垣の写真と解説が載ったページだった。石材の吸湿性と母恋の微環境が作りだした特異的な風景だ。(161027撮影)

さっそく研究者の鈴木氏に連絡を取り許可をいただき、引用させてもらうことにした。詳細な解説と見事な群落の写真が載っている。この植物は藻類のスミレモ属の一種 Trentepohlia sp. で、鈴木氏はチャラツナイの浜にあった北大の旧海藻研究所への道すがら、この辺りのオレンジ色に染め上げる風景が見事で興味を持って観察していたという。

引用 http://natural-history.main.jp/Tree_of_life/Eukaryote/Plantae/Ulvophyceae/Trentepohlia_sp/Trentepohlia_sp.html

 

 

698 攪乱の季節

漏斗雲札幌で20㎝を超す積雪があった。低気圧が発達しながら通り過ぎてシベリアの寒気が入ってぐっと冷え込んだ。伊達市から見た噴火湾の方向に漏斗雲ができていた。10分間位のことだが次にもう一つの漏斗雲が。もっと発達して地上まで延びるとミニ竜巻だ。この辺りの農家で作られたビートを使う製糖工場の蒸気が見える。冬の情景だ。気候の変わり目のちょっとした出来事。

697 地の豊饒

大地のトマト何でこんなにトマトが散らばっているのか良くわからない。地面からキノコのように生えたわけでもあるまい。いずれにせよ、大地の養分を根で受け、茎が運び、葉が光合成しての赤い実だ。土の産物である。黒い土に赤いトマトは美しい。美味しかったろうに。              そう言えば今日、11月3日、草間彌生さんが文化勲章をもらっていた。

696 昭和新山秋深し

昭和新山晩秋の落葉樹林。カエデ類も華やかだが、この時期最も目を惹くのがミズナラの黄葉だ。大きく厚い葉はすこし照り葉で、華麗で重厚。明るい黄土色から鬱金色、臙脂、べんがら色。まだ緑が抜けきらないオリーブ色まで揃っている。新緑の季節に感じる高揚感はないが、この綴れ錦の林に分け入ると、心の緊張感が解きほぐされる。気温が下がって噴気が白い。この辺りの初雪は11月初め。この山の季節はまだ続く。

695 昭和へ続く道

フカバ集落への道壮瞥町から伊達市へ南西に延びる道はこの先途切れている。昭和18年(1943)に地震が翌19年(1944)に噴火が始まり、正面の昭和新山となった。激しい噴火の後屋根山ができ、この先600mに在ったフカバ集落は向かって左へ100m以上押し出され、数十m持ち上げられた。今、急斜面の林の中にコンクリート片が残るだけである。かつてのメインストリート。あれから70余年経った。

694 母恋富士

母恋富士土地が無ければ海埋めろ、出ているところは削って使え。環境の多様性や豊かなランドスケープを残すなどとはほど遠い発想で、豊かだった地形は時代と共に変えられた。乱暴な話だ。母恋富士は室蘭層をつき抜いた安山岩の岩脈だというが火山ではない。採石されて姿を変え、まるで噴火口が開いているようだ。港からの素敵なランドマークだった母恋富士。富士の名前が泣いている。

693 金糸瓜

糸カボチャ近くの知り合いから頂いた黄色い瓜。ずっと以前、幾度か食べたことがある別名「糸カボチャ」。輪切りにして10分も茹でるとサラサラっと解けてくる。いと面妖な(糸麺様な)代物だが、その名の通り淡い金色で歯触りが良い。地方により食べ方いろいろの知られた食材だ。付け合わせやドレッシングを考えると、今様な食卓の一品へと楽しい発想が湧いて出る。ごちそうさま。

692 秘密の抜け道

秘密の抜け道壮瞥町新山沼から昭和新山へ向かう町道第2線からの抜け道。台風10号の倒木でこの道も数日通ることはできなかった。カラマツの樹幹の損壊はないものの、枝が払われて明るい森となってしまった。見上げると薄日にツルアジサイの黄葉が柔らかい。めったに人に出会わないが、この道は古くからの道なので良く管理されていて、丁寧な整備が感じられる。心地よい秘密の抜け道。

690 擬宝珠

ギボウシこのギボウシはこの土地在来のもので、旧蟠渓小学校にあったものを管理者に断って株分けさせてもらった、今はやりの「ホスタ」類と違い夏の暑さにもめっぽう強く、この時期にはいつも黄金色に輝いて目を楽しませてくれる。緑から金色へのグラデーションが何ともすばらしい。まさしく宝珠と見紛うばかりの擬宝珠だ。

689 イチイの実

イチイの漿果 Taxus cuspidata。羅和辞書で Taxus はイチイ、cuspidata は槍や棘で、葉のことか。古来よく知られた植物だったのだろう。種子に強い毒(タキシン taxine )が含まれることは知られているが、漿果の色とぬるりとした感触に郷愁を感じ「オンコの実」をつい口に含む。ほの甘くほろ苦く、ペッと種を吐きだす。あれは子どもの頃の赤い夕陽の思い出。何処だったか忘れてしまった。