903 岩手山火口

岩手山火口千歳、羽田間のジェットからはいくつもの火山を見ることができるが、写真に残せるチャンスはあまり無い。今回は岩手山の火口が良い角度から撮れた。手前は最東端の岩手山(2088m)の火口、すぐ向こうの御苗代(おなわしろ)湖はまだ氷結したままだ。東西に長いこの火山は、現在やや静かだが、激しい噴火活動をしてきた火山だ。どの火山も輪郭の崩れていない火口を見ると、気を抜けないな、と思ってしまう。

902 クワの実

クワの実相模川中流の土手を歩いていたら、足元一面、クワの実が落ちていた。手を伸ばして枝をひき寄せる間にも柔かい実は落ちる。この地方は昔から養蚕が盛んだった。店にも出ず保存もきかないから、懐かしい味をと思っても通りすがりに摘み取って食べるしか手はない。ほのかに甘く、ジャムにすると鮮やかな紫色と、種子の感触が個性的だ。ヨーグルトやアイスクリームとベストマッチ。マルベリーの名で流通している。

901 自然な石器

落として石器

田名向原遺跡。旧石器時代の住居遺構の資料を調べに出かけた。遺跡下の相模川の河原でボランティアさんたちが、変成岩のホルンフェルスの手ごろな石を台石に落として、子供たちの石器学習の石斧の材料を作っていた。幾度も落として得られた剥離片を見せていただいたが、石斧に転用できる見事な剥片がいくつも得られていた。

ナッピングによる技法ではない。より自然に得られる石器だ。ヒトの日常はこんなものだったのだろう。原礫面も残っていて、結果だけ見たら人工物なのかどうか迷ってしまうね。たしか、旧石器の金取遺跡の石斧もホルンフェルスだったね。暮らしの中で生活と向き合うヒトの姿が浮かんでくる。

 

900 輝く緑

緑の昭和新山一斉に樹々の新芽は芽を吹いた。昭和新山の赤いドームを包み込んで、軟らかな緑の風が吹く。鳥は歌い花は開き、生き物すべてのいのちが始まる。若い葉は虫を誘い、林床のコケは膨らんで地虫は蘇る。70年たってこの山は、より深い森へと歩み出す。ハリギリは太くなり、ミズナラも増えてきた。ミズキはぐんぐん成長しホウノキも健やかだ。50年後の深い森と赤いドームを想像する。

899 やはり羊蹄山

羊蹄山手前のトドマツ林、青く落ち込むのは洞爺湖の水。湖の中央にある中島にも緑が蘇った。中島もいくつもの火山の連なりだ。その向こうに残雪を抱き、五月の空に聳えるのは我らが蝦夷富士、羊蹄山。古羊蹄の上に溶岩流出と爆発的噴火を繰り返し数万年で秀麗な山容となったという。山頂には1万年前の複数の噴火口が並んでいる。何処からも見え、誰もが見上げるこの地のあるじ羊蹄山。

898 室内のサクラ

室内のサクラ有珠山西山山麓の噴火口から600m離れた旧洞爺湖幼稚園。噴石で穴の開いた天井からの雨と窓からの光を得て若いサクラに花芽が付いた。小鳥の糞からの発芽だろう。光を求めて窓から伸びた若い枝は、落ち葉を貯めて腐った床を土壌に置き替え、すくすく育って青空へ向かう。白い花で、カスミザクラだろうか。数年もすると、室内から枝を伸ばしたサクラを外から見物できるだろう。

897 萌芽更新

萌芽更新有珠山西山火口群の山麓散策路で見つけたドロノキ。18年前の噴火でこの地帯は隆起し、それに伴う地溝(グラーベン)の沈下部分がここだ。倒れた樹の根に近い若い枝がすくすく成長して、今では立派な二本の樹となった。動物と違って、悪条件から逃げることはできないが、生を受けた場所で自らの形を歪めても何とか生きようとするいのちのたくましさに感銘をうけた。

896 国道の上の沼

西新山沼この国道旧230号線はこの手前の斜面のまま下って4㎞先で海際の国道37号と接続していた。水が溜まったのは、2000年の有珠山の噴火でこの道の向こう側に火口が開き、70mも隆起して丘になったからだ。18年たち、テフラ(火山の噴出物)で覆われた火口は草地から林へと遷移が進み、国道上には隆起由来の堰止湖。底がアスファルトの天然の沼だ。噴火は思いもよらない多様な生態系を創造してくれた。西新山沼という。

895 立ち寄る昭和新山

昭和新山春の連休。樹々は芽を吹き始め、ほんのりと萌黄色。風は柔かく気温も上がって、ツアーで立ち寄ってくれるお客さんがこの風景を楽しんでいる。火山のほとんど無い韓国や中国・台湾からのお客さんが多い。聳える有珠山と噴気を上げる昭和新山をどう感じてくれたのだろう。湖畔の温泉街から、1時間半歩いてやってくるお客さんにも出会った。滞在型の旅人が多くなると良いですね。

894 愛しのキタキツネ

愛しのキタキツネ庭を横切るキタキツネ。イヌでもないキツネでもない、そう思ったよ。でもお前はキタキツネ。疥癬にとりつかれ尾羽打ち枯らし、食い物を探して日を送る。自慢の太い尾はどうした。肩から胴、流れる樺色の毛並みはどうなった。血は滲み、瘡蓋は雨に溶けて体を黒く染めた。痩せた体を引きずって、野生の魂は何処へ向かうのか。温かな春の風の日に、安らかな眠りを。私のキタキツネ。