336 漕ぎ出す

漕ぎ出す何か春を見つけようと探しているうちに海へたどり着いた。あいにくの満ち潮で、海辺を歩くことが出来ない。漁師が小舟を用意している。「今年はワカメの伸びが遅くって、、」今日は少し遠くまで出かけるという。この時期のワカメは美味しい。フノリもマツボもイワノリもこの季節が旬だ。採れたてのは磯の香りが強い。今日は漁師の帰りが待てなくって、沖へと向かう小舟を見送っただけだった。

331 今日の眠り

リンゴ果樹園壮瞥の町はリンゴ果樹園で知られている。北海道開拓使によって明治13年に300本植えられたのが始まりで、明治19年、橋口文蔵(札幌農学校=現北海道大学初代学長)が留学先のアメリカで仕入れた知識を持ちこんだのが始まりだ。あとひと月もすると枝打ち、剪定作業が始まる。手前の樹も向うに続くリンゴ畑も、例えば手前の樹の上に延びた細かい枝はすべて剪定し枝を整え、5月の若葉と6月の開花の時期を待つ。いまはひたすら眠っているけれど。

330 ムール貝

ムラサキイガイホタテガイを養殖する浮玉に付着したムラサキイガイ。噴火湾のホタテ養殖の副産物だが誰も手を出さない。出汁もよく出るし身の美味しさも格段なのだが。ヨーロッパの海岸地方では人気者だ。市場原理では収穫量と手ごろな大きさと手間の安直さ、あと押しをする食の文化が必要だ。ムール貝の流通量はまだ低い。この種が日本にやって来たのは7、80年前だという。在来種ムラサキインコを駆逐しながら増えている。

329 旬のニシンで

春ニシン新鮮この上無いニシンを12尾買ってきた。開いて塩をまぶし重石をかって締めたのをローレル、ブラックペパーと会津本郷窯のニシン鉢に漬ける。天日塩をたっぷり振り水を足して過飽和の食塩水に浸しこむ。ひと月もしないで完成。牛乳に漬けて塩抜きし、生でも酢でもお好み次第。一年も漬けるとアンチョビーと同じくとろりと口に溶ける逸品となる。パスタのベース、茹でたジャガイモのトッピングにしても口福の極み。

327 ゆめちから

ゆめちからブレンド北海道産超強力粉の「ゆめちからブレンド」を生産地十勝から頂戴した。安定した生産性を持つ秋播小麦としていま注目の品種である。蛋白量11.5%の粉だ。早速、山型食パンを作る。粉1kg、乾燥酵母(Saf)12g、バター50g、砂糖10g、天日塩20g、水620g。1次発酵60分、パンチ後30分、2次発酵40℃80分、焼成200℃35分。型は13×26×13 cmで丁度生地2本分。よく膨らみ美味しいパンとなったが、やや暗い色ともっちりしすぎもまた生地の特徴である。

320 バターロール50個

バターロール隣町伊達産の小麦「きたもえ」(江別製粉)でパンを作った。バターたっぷりのを50個。当然のことだが、焼いて1~2時間後が香りも良くとても美味しかった。翌日でも、冷凍保存後でも結構いけた。私は北海道産の粉特有のもっちり食感は嫌いなので、この粉のすっきりした食味は「当たり」だ。地産地消、結構な話だ。小麦粉1200g、酵母(サフ)24g、バター140g、砂糖120g、塩20g、全卵120g、水640g。45gで50個に分割。焼成180℃13分。

311 リンゴ一代

リンゴ「サンフジ」収穫物には規格外がある。この町はリンゴの町として名を馳せているが、この町に居ればこそ、こんなリンゴに出会える。品種はしっかりとした味で日持ちのする「サンフジ」。眼を描いてハンチングでも被せるとリンゴ園の親爺の顔だ。もちろん味に変わりはなく、安価に手に入る。この冬のジャム作りのために30㎏買ってきた。出来る10kgの甘くて香りのたかいジャムは170個のショソンとなって「口福」をもたらしてくれるだろう。

309 大地の申し子

秋播き小麦伊達市館山の丘陵の麦畑。秋の一番おしまいに播種された秋播き小麦「キタモエ」。根雪になる直前、ここまで伸びました。春4月まで根雪の毛布の下で眠りにつきます。雪腐病、うどんこ病に強く、穂発芽耐性も強いといわれ、麺類に最適の新しい品種だ。ここの表土は長年使われ改良された有珠山の火山灰、地下には数十メートルの厚さの洞爺湖軽石層がある。噴火湾を隔てて渡島駒ケ岳を望む。火山に繋がる大地、ジオパーク。

302 ラクダの毛布

カラマツ林植林して20年くらいの若いカラマツ林。ラクヨウ(ハナイグチ)を採る人の姿も消え、足跡も無い。黄葉した葉はハラハラとすべて落ち5cmもの厚さになった。昔の贅沢品にラクダの毛布があった(ラクダの股引もあったけれど)。この冬、この山は雪の下で上等品の毛布にくるまれてひたすら半年熟睡する。

299 マルメロを煮る

マルメロご近所さんから頂いたのと自宅のを合わせておよそ20個、3.3kgを水煮にする。一時間弱煮て軟らかくなったのをムーランで漉す。3.6kgのピュレが出来、3kgのグラニュー糖を合わせ一時間煮込む。充分過ぎる凝固力はペクチンが多いからか。半量はジャムに残りはバットに薄く延ばし表面を乾燥させてゼリー菓子にする。この秋一番の果実の黄金色は濃い樺色に収斂し、濃厚な蜂蜜の味と香りが口腔に拡がる。