463  穏やかな冬

冬景色雪が少ないが明け方の冷え込みは強い。間もなく2月。大荒れの日が無かったのでまだアシの穂は残り茎も立ち上がっている。湖水が茎に纏いつきながら凍り始めた。このあたりから凍結が始まる。大有珠の東面が光っている。昭和新山のドームが屋根山から黒く突き出している。静かな冬景色。

462  大丈夫

イワガラミの生き方先日、洞爺湖畔の使われなくなったキャンプ場で、ポリエチレンロープが巻き付いたままの樹を見つけた。丈夫なロープはいずれこの樹に食い込んでしまう。そういう痛めつけられた樹を幾度も見てきた。今日はナイフを持って出かけた。だが樹本体より先に這い登ってきていたイワガラミが痛手を受けていた。だがイワガラミも負けてはいなかった。ロープを植物体の組織に巻き込んで木部の中にしっかりと取り込んでいる。そのうえロープを二本切り離した途端、イワガラミ全体が少しずり落ちてきた。ロープを身の内にし、ロープを体の支えにしていたのだ。

利用できるものは敵味方の区別なくすべてを内的なものとし同化させ、自ら全体も適応して変化してゆく。生命はこうやって継続してきた。これこそいのちそのものの本質なのだろう。

458  コンタクトコール

オオハクチョウ長流川にハクチョウが集まっていた。数えたら百羽くらい。体色が白く成りきっていない幼鳥もいて嘴の黄斑の形からオオハクチョウとわかる。さほど差し迫った状況にもないのだが、互いに鳴き交わし、騒々しいことこの上もない。これはコンタクトコール。群れを構成するうえでそのメンバーが自らを確認させあう重要なシステムだ。さらに群れを作って渡りをする時にはフライトコールで互いに呼び交わす。ともに長旅をする仲間や若鳥を励ましているのだろう。

渡りの季節、ハクチョウのフライトコールが聞こえると家の窓を開けて空を見あげ群れを探す。低く高く飛ぶ白い列なりには、いつも荘厳さを感じる。猟犬の群れが林を駆け抜けるような気迫のこもった声を聞くと、心のどこかで、私も旅立たねばと思ってしまう。

457  茶が飲める

実生のチャ「尊敬する先生のお庭に落ちていたので育てて欲しい」とのことで、妻が旅行先の山梨県から持ち帰ったお茶の実を2粒育てることになった。ひと月たってその一つが発芽した。実生のチャの誕生だ。茶色の殻の中で二枚の子葉が膨らみ、そこから丈夫そうな根が出て、そのまま湾曲して用土に突き刺さっている。子葉の分岐からは小さな6枚の葉を付けた枝が天に向かっている。嬉しいね。ここまで来たら後には引けない。10年もしたらお茶摘みだ。チャはツバキ科、常緑の照葉樹。ナラ樹林縄文文化の北の地で照葉樹林文化の喫茶とはこれ如何に。

455  年賀状

箱膳長きにわたって、随分いろいろなものを飲み食いしてきました。ここひとつ、一汁三菜とまではいわずとも、自分の食生活を考えなおしてみたいと思っています。身土不二、三里四方に旨いものあり。この地方の豊かな食材をありがたく頂戴して、ゆったりとやってゆきたいと思っています。 ここまでが今年の年賀状。

正月にはこの地域の旨い海の幸、肉類や豆、野菜を食べた。イクラも作った。実に生臭く、美味しい自家製のメフンも作った。しかし蓮根、里芋は本州からの到来物、オリーブの塩漬けや搾菜は輸入物だった。スパイス類もそうだ。食いしん坊の私は、どこで折り合いをつければよいのだろうか。

454  北の縄文 松飾り

縄文松飾りしめ縄を作る機会があって、縄部分を教わって何とか作りあげた。関西からやって来て洞爺湖有珠火山マイスターとなったS氏が講師で、彼の田圃で育てあげ、湿りを入れて打ち柔らかくした稲わらを使わせてもらった。綯い方はやはり火山マイスターのBさんに教わった。飾るに際してはたと気が付き、例の伊達前浜の塩サケ(ブログ440、447)の頭を使って「箔」を付けることとし、裏庭の小さな王林を咥えさせた。松はオンコ、昆布はアルトリ岬産。これぞ地のものを使った北の縄文、ジオパーク松飾り。

松を飾るのは遠く雲南、照葉樹林文化からの伝えだというが、数千年をえて弥生式文化のこちら、ナラ落葉樹林文化の地の果ての仁左衛門宅が落ち着く先となりました。北の縄文人、オホーツク文化人たちは鮭と深~い縁で繋がっておりました。鮭は北の民が冬を越す「命の依代」でした。

453  ハシジロガラス

ハシジロガラスこのカラス、毎日やってくるハシボソガラスのオス。メスは電線の上でこちらを見ている。つがいになって7年目になるのだろうか、私もうろ覚えになってしまっていて、当人たちも拘っていないからまあいいか。今朝は‐5℃に下がって、嘴に新雪が付いてこの仕儀と相成った。南国にはベニハシガラスという種類がいるようだが、雪国のモノトーンガラスも一瞬可愛かった。黒い羽毛に黒い瞳で心が見えないいつもと違い、雪が映ってつぶらな目が輝いた。

451  旨いぞホタテ

旨いぞホタテ友人からホタテが届いた。大ぶりの殻つきのが15個、「生きがいいぞ」と油断をしたら指を噛みつかれた。いつもなら正月用に殻ごと熱湯に入れ、瞬時に取り出して貝柱を保存に回すのだが、今日はその前祝、極上の北海の絶品をそのまま味わった。まずは刺身。貝柱は厚めの3枚にそぎ切り、ヒモはぶつ切り、エラはそのまま。産卵期を終え、卵巣は小さいが短冊に。貝柱の固く締まって甘いことよ。卵巣は新鮮なウニの味。潤沢な磯の香のヒモは何とも言えない歯触りで、懐かしい赤貝を思い出す。ワサビは野暮だよ、要らないね。  あと一品、膨らんでいる白い下側の殻にむき身とバターと醤油を入れ火にかける。アツアツのところをウロごと二口ぐらいで頬張る。

449  食足りて礼節

河口の鳥たち国道37号線の橋から見下ろす長流川の河口近くの河原には水鳥が集まっている。オオハクチョウ、カルガモ、オオセグロカモメ、ミヤコドリもいるようだ。浅瀬や岸辺には遡上し終えて死んだ鮭がたくさん見える。カモメは腹いっぱいに違いない。カラスたちも喰い飽きて編成し終えた群れでどこかの畑に集まっているのだろうか。ホッチャレ鮭目当てで毎年飛来して春まで留まるオジロワシ、オオワシもすでに姿を見たという話を聞いてはいるが、ここにはいないようだ。

小春日和、集まっている鳥たちは何かのんびりしている。オジロワシ、オオワシがいてもキタキツネがうろうろしていても満ち足りているとこんな具合だ。  中国漢代に「倉廩(そうりん=穀物庫)満ちて礼節を知る」という言葉があるそうだ。納得できる風景だ。

448  壮瞥リンゴのショソン

ショソン12月にもなると窓からは雪色の有珠山と昭和新山のドームが見える。この町自慢のリンゴの収穫も終わっていよいよ冬ごもりの時期となる。   我が家の今年のリンゴを使ったショソンを作った。中身はこの秋収穫の早生種の「津軽」のジャム。甘みを抑えたプレザーブ風のジャムを1個、60g入れてある。溶き卵を塗りクープを入れて180℃で20分、パウダーシュガーをたっぷり振り220℃で更に5分も焼くと、表面はカラメライズされて味と色が深みを増す。今日は一気に20個焼いて、いかがですか、冬の日の午後、食べに来ませんか。