168 地の砂糖

有珠山、昭和新山 ここはR453に並行して北上する伊達警察署から立香峠(仮称)への農道。長流川の左岸の10万年前の洞爺湖カルデラの火砕流台地だ。ここは有珠山、昭和新山を眺めるには絶好の地で、人工物もなく火山の全体像が間近に見える。今は砂糖大根(ビート)の収穫の時で、噴火湾近くの工場で砂糖(甜菜糖)となる。火山灰台地が育てた砂糖というわけだ。ジオの産物、ジオの甘味だ。噴火は災害ももたらすが、その麓では人はその恩恵にもあずかる。

167 時の形

ハリギリ(センノキ) 洞爺湖の湖岸を取り巻く林は国有林。奥行きは狭いが伐採を逃れた原生林だ。寒気がゆるんだ合間を縫って太い木を訪ねて歩く。この樹、初めはこれほどの形には見えなかったが、近づいて驚いた。四、五十年前、この樹に何かがあった。なお命をつなぎ、形成層は木質と樹皮を肥厚させ続けた。風雪に耐えてこの異形となり、樹は何も語らない。ゆっくりと春の芽吹きを待とう。

166 凍てつく

洞爺湖の釣 12月になって洞爺湖の釣りは解禁となった。ヒメマス、サクラマス、ニジマス狙いで、立ちこんでのフライ。見えるだろうか、ラインが昭和新山の上でループを描き、有珠山山頂、有珠新山を絡め取るように流れている。釣れると大物、ひたすら竿を振る。1投、2投、キャスティングは続く。悠久の大地と清冽な水。やがて釣る人も景色にとけ、静かさの中で時はゆっくりと凍りついてゆく。

165 山は眠っているか

有珠山 どうやら根雪となった壮瞥の市街地から見た有珠山。高く連なるのは大有珠ドームで、頂上は海抜733m、平らにのびるのは外輪(海抜約500m)。緑に包まれた夏の有珠山もよいが、白銀に輝く有珠山はいかにも火山然としていて火山フリークにとっては実に魅力的な山だ。だが、次の噴火はいつなのか。山は眠っているか。眼ざめはいつか。手前の建物は壮瞥町役場。

160 黄金色の冬仕度

黄金色の 昭和新山の屋根山の斜面のカラマツの疎林。針葉樹はトドマツ、白い幹は早くに葉を落としたドロノキと、シラカバ、ハンノキ類。斜光を受け黄金色が眩しい。昭和新山の噴火後70年近くたって、これだけの森が出来上がった。無生物の火山灰の中から生育した炎のような命の輝きは、自然の持つ破壊と創造の力の証し。まばゆい光芒はここ一週間で色あせ、冬の眠りに就く。

159 洞爺湖中島

洞爺湖中島 壮瞥公園からの中島全景。左から弁天島、観音島、饅頭島。右手は大島。左奥のとがった山頂を持つのは西山(455m)、手前の丸い、なだらかなのは東山(378m)である。いずれも5万年ほど前に、洞爺湖巨大カルデラの中央の湖底から噴火して出来た、溶岩ドームの頂上部分である。冬季をのぞいて、遊覧船で上陸、ゆっくりと樹木の観察をしながら、数時間で半周する、歩きやすいフットパスルートがある。遠くから眺めるのもよいが、島をゆっくり独りで、また仲間たちと歩く喜びもまた格別だ。

158 雪景色有珠山

有珠山 全山雪を頂いて、初冬の有珠山。外輪の上の大有珠のドームが良く見える。左手前のドームが昭和新山、頂上手前に東丸山、右手の外輪から続く斜面の下には明治新山(四十三山)、いずれも潜在ドームだ。ウメの紅葉が残り、カラマツの黄色い稜線の向こうの静かな佇まいを見せる有珠山。山眠る季節に入ったが、まどろんでいるのか覚醒の時期を選んでいるのか。

153 激しい噴火があって

昭和新山 壮瞥町立香寄りからの昭和新山ドーム。紅葉が残る屋根山とその向こうの大有珠の岩塔も見える。この方角からの屋根山はひと際高く、その上に乗るドームは上の部分しか見えない。山頂がよく見えるようにこの山を一回りすると、この山が随分大きいことと、その山容の多様さに驚く。68年前、2年間に7つの火口を作り、17回の噴火を繰り返した昭和新山。あらためて噴火活動の凄まじさを思い直す。次の有珠山噴火はきっとまたやって来る。

152 ノラニンジン

ノラニンジン 霜を頂に載せ朝の日を受けるノラニンジンの枯れた花冠。放射冷却で冷え込んだ朝はこの通り、病葉も枯れ草もそれなりの白い花を咲かせている。夏、一面に咲き誇っていたノラニンジンの野面は、奇妙に丸まった散形花序のぼんぼりで埋まっていた。この形を何に例えようかと考えたがなかなか出てこない。自然が移ろってゆく過程で見せてくれる造形の妙味だ。

151 往く秋に

アカゲラ コンと小さな音がして、ガラス越しに下を見たらアカゲラが落ちていた。ガラスに映る碧い空を飛ぼうとしての、突然の衝突事故。そーっと静かにしていれば起き上がって事なきを得る場合もあるのだが、今回はそのまま動かなかった。可哀そうなことをした。秋も深まって黄金色のギボウシの葉の上、赤い飾り羽の小粋な姿がつらく切ない。また一つ、いのちを乗せて秋はいってしまう。