340 春、雪だるま

雪だるま近所の家の雪だるま。この家の子供たちがひと月も前につくって、太っていたのが痩せてきたり、頭が落ちたりいろいろあって、それなりにこの雪だるまを作った子供たちの姿がめにうかぶ。この家の前を通るたびに妙に気になり眼を向けてしまう。今日の雪だるまはちょっとおしゃれで、色合いはまるで「かきごおり」風だ。壁に立てかけた北国特有の「ゆきかきスコップ」は色とりどりでプラスチックスプーンにも見える。

339 冬のロボット

冬のロボット洞爺湖畔の雪を被った舟形ロボット。冬は観光客も少なく、観光船も巡視船も職漁船も陸上で待機中だ。有珠湾から一つ尾根を越えてくる通いのセグロカモメは元気に活動中だが、生きものの姿はそれくらいだ。日も長くなり春近しと気を緩めた途端に積雪を見る。日本海からの雪雲は洞爺湖界隈まで雪を降らせ、この二日で40cmは積もった。

338 氷の形

洞爺湖の雪氷仲間の火山マイスターから連絡が入り、洞爺湖にあわてて駆けつけた。「面白い形に凍っていますよ」、その通りだった。氷結した湖面をよく見ると、それが円形の氷紋の片割れだと気が付いた。丸い形の水面が沖合へ続いている。昨日からの冷え込みと、無風と軟らかな降雪のなせる技なのだろう。静かな夜に、突然に時は緩やかになり、静かな冷却がこの形となって現れた。

337 海の白鳥

海のオオハクチョウ伊達の明るい海でオオハクチョウの群れを見つけた。まだ翅の色が茶色い幼鳥も混じったこの鳥たちは有珠湾に集まって暮らしている。伊達市の観光情報のHPには有珠湾(有、スワン)とあった。あとふた月もするとシベリヤへの北帰行が始まる。私はその頃リンゴの木の剪定の脚立の上から白鳥を見送る。広い海に浮かぶ白鳥からは生活者の感じを受ける。向うに見えるパステル画の様な岬は室蘭エトモ岬。

336 漕ぎ出す

漕ぎ出す何か春を見つけようと探しているうちに海へたどり着いた。あいにくの満ち潮で、海辺を歩くことが出来ない。漁師が小舟を用意している。「今年はワカメの伸びが遅くって、、」今日は少し遠くまで出かけるという。この時期のワカメは美味しい。フノリもマツボもイワノリもこの季節が旬だ。採れたてのは磯の香りが強い。今日は漁師の帰りが待てなくって、沖へと向かう小舟を見送っただけだった。

335 薄氷(うすらい)

洞爺湖湖畔の風のあたらない少し入江になった所で氷結した水面に出会った。この湖は不凍湖だが、静かな水面にはゆっくりと氷の結晶が出来て行く。水は透明そのもの。ここでは時間が止まっているのかゆっくり進むのかよくわからない。そのようなあたりまえの自然の成り行きを一つひとつ納得しながら歩を進める。時間も空間も自分すらも消えてなくなる。

334 春いろの影

春の影陽の光が一段と強みを増して、朝の樹の影が明らかになる。この先、木の根もとに雪の窪みが出来るようになると、本当の春近しだ。もうすぐ、枝先の樹の肌が赤く柔らかに色付く。そうなるとしめたもの、芽が膨らみ始める。こんなふうにして何かにつけて春を探し、春を待つ。鳥たちのさえずりが強くなる。雪の下のノネズミ達のトンネルが見えはじめるともうシメタものだ。この嬉しさは南の生きものたちにはわかるまい。

333 兆し

洞爺湖明け方は冷え込んだが空気は軟らかく、どこかに春の匂いがする。光もぐんと強くなって風もない。車で5分という地の利を頂いて、洞爺湖へ出かけた。岸辺の雪は少し溶けてはまた凍り、かたく締まっていて歩きやすい。湖面に落ち込んだミズナラの飛沫(しぶき)氷の向うに羊蹄山が輝いている。まだ2月末、北海道の春はまだ遠いが、この青空の向こうに微かな兆しがあるようだ。

332 凍れる命

シャクナゲ軒下のシャクナゲが凍っている。明け方は-15℃を下回る。萎れ、干乾び、凍てついて、常識からいったら解凍とともに組織はつぶれ形を失うはずだ。しかしこの植物はこうやって生きてきて、今年もまた春の日差しの下で復活する。辛うじてでも生き残った花芽は約束のとおり白く輝く花をつけてくれる。自然のしくみを疑ってはならない。時を受け入れ成り行きに任せる強さも必要なのだ。

328 洞爺火砕流堆積物

洞爺カルデラ堆積11万年前の巨大噴火によってできたカルデラが現在の洞爺湖だ。この時の火砕流は火砕流大地となって洞爺湖の北西に続いていて、その断面は堆積露頭として存在する。ここ、洞爺湖の南東、伊達市の長流川の浸食によって出来た崖面にも露頭が確認できる。崖の下部の河床から上の鉄塔までの高さは約60m。洞爺湖火砕流は中間の横に続くラインより上部で、下部の堆積は別くちの火砕流の堆積だという。