465  ホザキヤドリギ

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ホザキヤドリギ(ヤドリギ科ホザキヤドリギ属) Loranthus Tanakae  Fr. et  Sav.

冬季、落葉広葉樹林の葉が落ちると、それまで隠れていたいろいろなものが見えるようになる。カラスの巣と見間違うほどの葉を茂らせたヤドリギが目につくのもそうだ。そして今回は、洞爺湖畔の高木にホザキヤドリギの黄金色の房状の実を見つけた。同じ樹にはアカミノヤドリギの実と葉も見える。なんということだ。これまではまったく気が付かなかった。いつもその下を通っていたのに。本州中部から東北地方までの分布という。この付近のデータが見つからない。物知りの自然観察のプロも初めてだという。冬には冬の発見と悦びがある。

464  冬の花

イワガラミ寒さの中、樹冠に纏いつきながら耐えていたイワガラミの花穂が雪の上に落ちていた。夏のさ中、純白の花だったそのままの姿で雪の上に落ちている。雪の上のユキノシタ科。この森には同じ仲間のツルアジサイ、ノリウツギも装飾花の萼片を残したままで寒さに耐える。半年前の名残の花殻。夏を咲ききって、いまなおいのちを物語る。

463  穏やかな冬

冬景色雪が少ないが明け方の冷え込みは強い。間もなく2月。大荒れの日が無かったのでまだアシの穂は残り茎も立ち上がっている。湖水が茎に纏いつきながら凍り始めた。このあたりから凍結が始まる。大有珠の東面が光っている。昭和新山のドームが屋根山から黒く突き出している。静かな冬景色。

462  大丈夫

イワガラミの生き方先日、洞爺湖畔の使われなくなったキャンプ場で、ポリエチレンロープが巻き付いたままの樹を見つけた。丈夫なロープはいずれこの樹に食い込んでしまう。そういう痛めつけられた樹を幾度も見てきた。今日はナイフを持って出かけた。だが樹本体より先に這い登ってきていたイワガラミが痛手を受けていた。だがイワガラミも負けてはいなかった。ロープを植物体の組織に巻き込んで木部の中にしっかりと取り込んでいる。そのうえロープを二本切り離した途端、イワガラミ全体が少しずり落ちてきた。ロープを身の内にし、ロープを体の支えにしていたのだ。

利用できるものは敵味方の区別なくすべてを内的なものとし同化させ、自ら全体も適応して変化してゆく。生命はこうやって継続してきた。これこそいのちそのものの本質なのだろう。

461  白銀オロフレ

オロフレオロフレ山の肩にあたるオロフレ峠付近は今日も霧氷におおわれていた。何時通っても、この峠は何時通っても霧氷や樹氷の風景を楽しめる。洞爺湖と登別を繋ぐ最短ルートのこの道路は、1988年以前は熱変性して崩落しやすい崖の下を通る難所の連続だった。そこを観光バスは喘ぎながら上り詰め旧峠に至った。そこには茶屋も開いていて、そこがオロフレ山への登り口であった。トンネルができ、車は通年通行可能になったが冬季、旧峠と登山口に出るには新道からスノーシューで1時間の道のりとなる。標高1230mの純白の山容は周辺の町々からひときわ目につく。我が家から30分の距離にある贅沢。

460  岩石を食べる

スコリア伊豆ジオパーク、ジオガシ旅行団(ブログ450を見てください)から新作が届いた。茅野八窪山スコリア。標本箱のような渋くしっかりした紙箱を開けて驚いた。これは本物のスコリアだと思った。いつも私たちが手入れをしているドンコロ山ジオサイトの露頭のスコリアと全く同じだ。軽石ほどは白くなく発泡程度が浅い噴出物である。伊豆天城の茅野鉢窪山も大室山と同じスコリア丘だという。ここ有珠山に隣接するドンコロ山もスコリア丘である。

お菓子のスコリアは完成度が高く、ドンコロ山を構成するスコリアにそっくりだ。並べてみたらどちらを口にしてよいか迷ってしまう。コケや地衣類の着いていないのがスコリアの岩石、いや間違えた。菓子の方はサクサクと口当たりもよく、ココアの香りも軽快で、地下からの噴出物とは思えない美味しさだ。また間違えた。

459  天網恢恢

オオウバユリの蒴果オオウバユリの蒴果が弾け、殻だけが丈夫な茎の天辺に残っている。茎も殻も軽くて実に丈夫だ。三裂した殻の中に風に乗りやすい小判型の種子がぎっしりと詰まっていたはずだ。以前数えたら一個の蒴果に555個の種子が格納されていた(ブログ2011年10月)。裂開した蒴果はそれぞれ細い糸状の繊維で綴られ、種子はその隙間から時間をかけて徐々に漏れ落ちた。決して一時に散開しなかったところが重要で、気温や湿度、時間、吹く風にすべてを委ねながらゆっくり大地に散布されて行っただろう。

「天網恢恢疎にして漏らさず」(天網恢恢,疎而不失)と老子にある。天の網は荒くも見えるが悪の種は決して逃れられないという。逃がさず漏らさずと解釈もできるが、要は一時に散財させないということだ。天は無駄な浪費を許さず自然の仕組みに配慮を怠らなかった。いのちの行く末までおしなべて見通す「天の漏らさぬ配材」なのである。

458  コンタクトコール

オオハクチョウ長流川にハクチョウが集まっていた。数えたら百羽くらい。体色が白く成りきっていない幼鳥もいて嘴の黄斑の形からオオハクチョウとわかる。さほど差し迫った状況にもないのだが、互いに鳴き交わし、騒々しいことこの上もない。これはコンタクトコール。群れを構成するうえでそのメンバーが自らを確認させあう重要なシステムだ。さらに群れを作って渡りをする時にはフライトコールで互いに呼び交わす。ともに長旅をする仲間や若鳥を励ましているのだろう。

渡りの季節、ハクチョウのフライトコールが聞こえると家の窓を開けて空を見あげ群れを探す。低く高く飛ぶ白い列なりには、いつも荘厳さを感じる。猟犬の群れが林を駆け抜けるような気迫のこもった声を聞くと、心のどこかで、私も旅立たねばと思ってしまう。

456  カルマン渦列

カルマン渦大陸の高気圧から北西の季節風の線状の雲が日本を覆っている。こんな時に私がいつも狙っているのが、チェジュ島(済州島)の南側にできるカルマン渦だ。10年も昔にみた見事な渦に魅せられて探してはいるが、ついぞ出会ってはいない。今日はチェジュ島の南から沖縄にかけてうっすらと確認、と思ったらなんと、屋久島から見事なのが出現していた。流体力学上の出来事はよくわからないが、流速の異なる境界面に発生するとのこと、複雑な数式を見ているより渦列を見ているほうが感動する。鬱陵島や伊豆大島などにも出来そうなのだが、どうなのだろう。(気象庁気象衛星画像:日本域可視、2015.01.07  13:30JST を部分使用)

454  北の縄文 松飾り

縄文松飾りしめ縄を作る機会があって、縄部分を教わって何とか作りあげた。関西からやって来て洞爺湖有珠火山マイスターとなったS氏が講師で、彼の田圃で育てあげ、湿りを入れて打ち柔らかくした稲わらを使わせてもらった。綯い方はやはり火山マイスターのBさんに教わった。飾るに際してはたと気が付き、例の伊達前浜の塩サケ(ブログ440、447)の頭を使って「箔」を付けることとし、裏庭の小さな王林を咥えさせた。松はオンコ、昆布はアルトリ岬産。これぞ地のものを使った北の縄文、ジオパーク松飾り。

松を飾るのは遠く雲南、照葉樹林文化からの伝えだというが、数千年をえて弥生式文化のこちら、ナラ落葉樹林文化の地の果ての仁左衛門宅が落ち着く先となりました。北の縄文人、オホーツク文化人たちは鮭と深~い縁で繋がっておりました。鮭は北の民が冬を越す「命の依代」でした。