538  たくましく可憐

ヒロハヒルガオ伊達港のテトラポッドの隙間に純白の花を見つけた。五枚の蕚を包む苞葉がとても大きく、葉もまた大きいので Calystegia sepium  ヒロハヒルガオと同定した。日本のヒルガオ C. japonica にも似ている。セイヨウヒルガオ  C. arvensis ではなかった。英国の図鑑では  Larger Bindweed と書かれている。Great Bindweed という種 C. silvatica もあって、さらに大きな花を付けるという。

乾燥地、荒れ地どころか肥沃地にも、海水の飛沫がかかるような極端な土壌にも盛大な根を張り、強い生命力で子孫を増やす。ヨーロッパ原産だが、今では世界中に進出中だ。花はこの通り清楚で可憐。Sepium は垣根の意だというが、もはや生き物たちに垣根や国境はなくなったようだ。

534  壊れた月

壊れた月小惑星ならいざ知らず、地球の月がこんな形だったらどうしよう。夜眺める三日月の心もとなさも十五夜の満ち足りた情緒もあったもんじゃない。小惑星イトカワはジャガイモのメークインみたいな形をしているが、あれは数百mの大きさだ。我らの月の大きさなら自己重力で崩れ、小さく丸い月へまとまらざるを得ない。昭和新山のドームに落ちかかる月齢11,1日の月を300mmで撮影。

532 天然煉瓦ドーム

新山ドーム幾日ぶりの青空。無いはずの北海道の梅雨もさすがに終わったのか。窓を開けると、たっぷりと長雨を吸い込んだ新山のドームがいつもより赤い。夏の濃い緑に煉瓦の赤い色が良く似合う。 1944-45年の激しい噴火で押し上げられた溶岩ドームは上部の土壌を煉瓦に焼き上げた。800℃前後でこの色になるというから、生長中のドームの溶岩本体の温度はさらに高温だったのだろう。

531  浮かぶ砦

昭和新山三松正夫の「昭和新山生成日記」昭和20年(1945年)9月20日に、「屋根山、溶岩塔を測定器にて観測したところ変化なく、常時あった崖崩れも地震も感じない」「長流川への押し出しもピタリと止まって、拠って活動は停止状態になったと判断」とある。新山誕生70周年。正夫が夢見た「自然のままを後世に伝える」思いはジオパークとなり、雨雲の上のドーム頂上は正夫の砦に見える。

529  つわものたち

オンタデ?有珠山の山頂近く、1977-78噴火の銀沼火口へ降りた。時折水も溜まるが、今は乾季でこの通り。地面のひび割れの中から伸びるのはオンタデか。近隣にはイタドリ(オオイタドリではなく)、スギナ、ヨシなど。こんなところに好き好んで、とはいうものの、いずれここを草原や林地に作りかえてゆく強かな開拓者たちなのだ。この夏、日照りが続くとすべて枯れてしまう覚束なさもはねのけて、今は生きることに精を出す。

525  何の合図か

マタタビの葉

花が持つ色、香り、形、反射能などはすべて昆虫や動物たちへの問いかけだ。でもこのマタタビの葉の色はどうなのか。遥か遠くからでも良くわかる白く輝く葉のサインの意味は何なんだろう。葉も参加しての昆虫誘因作戦か。木の下闇を背景にヒラヒラと風でよく動く。山奥のミヤママタタビの葉はさらにピンク色がかっている。

 

524  金星と木星

金星と木星7月3日、午後8時。洞爺湖の残照の空に二つの惑星を見つけた。宵の明星とすぐ右の木星。7月1日に大接近と聞いていたが、うっかりしていて今日の確認となった。地球より内側の軌道で反射能の大きな金星と太陽系最大の木星のイベントだ。3日の金星は-4.4等、木星は-1.8等だという。わが地球からの見かけだけの接近なのだが、今日もひときわ目につく。知っていても眼を向けなければ存在しないものってありますね。

522  割れたサクランボウ

サクランボウこの4、5日小雨が降り続いて、せっかく色づいて食べごろになったサクランボウが割れてしまった。この時期の雨は大敵。水分を吸った果実は膨潤し、柔らかな果皮を内側から引き裂いてしまう。これでこの後暖かい日がやってくるとカビがくる。期待しながらの毎日だったのに残念至極。専業果樹農家は透明な屋根を付けている。我が家の老木三本に覆いはかけられず、天を仰ぐだけ。

521  小爆発・コウリンタンポポ

コウリンタンポポ何年か前までは北海道のこの町でもコウリンタンポポはそれほど目につかなかった。今年、気が付くと裏庭に二つの群落ができていたし、道路わきや川筋の草地が少し賑やかになっている。ヨーロッパにはこの Hieracium 属の種が多く、いずれ次々と渡来するのかもしれない。港湾の荷上場付近や飛行場などから日本に上陸するのが常だ。

紅輪蒲公英。一見、日本風ではない(今のところ)人目につく花は、中心部が明るい黄色で周辺の舌状花は鮮やかなオレンジ色。ポンと爆ぜた花火みたいだ。これがまた日本の風景の中で燎原の火のように燃え広がるのかと思うと、汎世界的物流の恩恵を受けて安泰な生活をしている者として忸怩たる思いがある。

520  急いでどこへ行く、クマケムシ

クマケムシ子どもの頃(半世紀以上前)からクマケムシと言って手にのせて遊んでいた。熊みたいだったからそう言っていたが、この名前が日本中で通用するとは知らなかった。広場や道路の上をモコモコと横切って走る。その速いこと。剛毛のサクサクとした感触が可愛い。ヒトリガの終齢幼虫。ヒトリガは「火取り蛾」。「飛んで火に入る、、、」のムシは私の親のこと。「私は毛虫、遊びましょう」。向うは昭和新山。