668 錦多峰川城壁

錦多峰城壁樽前山の1667年、1739年のような大規模なプリーニー式噴火は火砕流や多量の降灰を伴い、泥流、融雪泥流も引き起こす。苫小牧西IC近くにある錦多峰(にしたっぷ)川、スリット式砂防ダムは、鋼製矢板でセルと呼ばれる円筒を作り、連結して土砂を充塡している。流路はスリットとしてあり、円筒は直径40m,高さ12.5m。噴火に備え、街を守る現代の城壁。火山の眠りは浅い。

667 奇岩黒岩

奇岩黒岩八雲町の海岸、ひときわ目を引く黒い岩塊。アイヌ語でシュマカムイ(石の神)と呼ばれた。硬質頁岩と泥岩の互層からなる八雲層中にあるハイアロクラスタイト(海底噴火の水冷破砕岩)で、流紋岩質の露頭だという(北海道地質100選解説による)。珪酸分を含む熱水から晶出した鶏卵大のメノウを見つけた。コウボウムギやハマヒルガオ、ハマエンドウの海浜植物群と潮騒の中で、はるか地層時代に思いを馳せる。

666 闖入者

ニホンアマガエル夜、キッチンの外、灯りに集まる虫を求めてアマガエルがやって来ていたのは知っていた。翌朝、室内のシンクの上に当たり前の顔をして鎮座ましましていたのには驚いた。黄緑色のニホンアマガエルだが、しわしわで灰色のサッカー生地の甚平みたいでいかにも夏っぽい。去年もこの色をした御仁を見ている。太って貫禄がついて、これから先何年でも生きてやるぞというような面構えだ。

665 ヘーゼルナッツの実

ハシバミ・ヘーゼルナッツ縄文時代から知られている「はしばみ」・ヘーゼルナッツが実を付けた。毎年待ちわびていが今年雌花雄花がたくさん咲いた。(ブログ626)堅果は白いがもう膨らんでいて充分に硬い。4本の樹で合計100個くらいか。先ずは煎って食べよう。クッキーにすると香ばしいのは知っている、チョコレートをコーティングすると極上の、、などと、採る前の「はしばみ」算用をしてしまう。

664 日本海ブルー

茂津多岬海中で褐藻類が繁茂するのは、陸上の植生とは違い冬から6月までだ。それにしても、この青さはどうなのだ。まさしく黒潮系の色だ。海底の岩の表面を覆う石灰藻が透けて見えるのだろうが、親潮の影響の強い太平洋側ではお目にかからない水の色だ。茂津多トンネル(1974m)と狩場トンネル(1647m)の間の、人里離れた小さな入り江。駐車場に「茂津多岬」という石碑があった。

663 トッカリショ

トッカリショ室蘭港の裏側にこんな風景があるのをご存じだろうか。トッカリショは太古からの自然と人の生活が織りなす第一級の風景(ピリカノカ)だ。トッカリとはアザラシのこと。草地の下の断崖は海底火山の噴出物の堆積でできた室蘭層でイタンキの白い岩壁とつながり、成分の違う凝灰岩の層が傾斜していく層にも重なっている。小さな浜には何代も続く漁師たちの家がある。

私たちは工業を振興し港を盛んにする中で、このような美しい風景を捨ててきた。いくつものアイヌの伝説を伝え、人々の心に安らぎを与えてきたオイナオシ、オハシナイ、祝津(シュクズシ)、エトモの海はすでになく、電信浜、ポンモイの海岸は姿を変えた。砂浜は埋められ、岬はコンクリートで囲われてしまった。トッカリショに続くイタンキの浜が、海辺の生き物や鳴り砂の浜を守るという人々の熱い思いで守られているのが救いだ。

オイナオシの浜に続く栽培水産試験場が造られた場所は、豊かな海藻とスガモの藻場のある岩礁地帯であった。海の生物たちの揺籃の場を破壊して造成された施設は、祖先から譲り受けたありのままの多様な生態系をどのように補えるのだろうか。埋め立てでできたMランドという名の堤防の先は、いままさにピリカノカ・マスイチの絶壁を窺がっている。

 

662 百年の森

百年の森のマイスター1911年(明治43年)の噴火で有珠山の山腹で隆起した明治新山は四十三山(よそみやま)とも呼ばれる。噴火で植生が壊滅した後、再生された森は今、百年の森となって私たちを迎えてくれる。噴火時の火口の跡は今も森の中に残っていて、大きく深い火口や水を湛えた火口などをたどることができる。ジオサイトの現状の確認や案内板の点検をするのも火山マイスターの役割の一つだ。

660 アマツバメ・雨燕

アマツバメ梅雨のない北海道の空をアマツバメが飛ぶ。ひらりひらりと、よく切れる黒い鎌が飛び交うように見える。ものの本には、実際鎌燕と呼ぶともある。私は天ツバメと思っていたが「雨ツバメ」なのだという。私の持っている分類アイヌ語辞典・動物編(知里真志保、1962)にも ruyampe(雨)cikap(鳥)となっている。見る人の感性で呼び名はそれぞれだ。

アマツバメ類は、姿や飛び方がいわゆるツバメと似ているが、分類学的には離れた種群だ。崖地にぶら下がるようにして生活していて、地面に降りることはないという。有珠山のドームあたりからやってくるのか。

659 むかしむかし1万年

1万年前の丘今金町ピリカ旧石器文化館。1~2万年前の旧石器時代の石器がこの丘から発掘された。細石刃やその石核から尖頭器石器群まで、見事に整備され展示してある。ここは黒曜石ではなく珪質頁岩の石器だ。出土品のうち163点が重要文化財というから凄い。北周りでやってきたHomo sapiens は、この地でどのような石器のテクノロジカル・コンプレックスを展開していたのだろうか。

658 琥珀色の雫のような

オカモノアラガイオカモノアラガイ。Succinea lauta  羅語辞書ではSuccinum=Sucinum で琥珀とある。lautaは優雅・可愛い。英名はamber snails、琥珀カタツムリ。水生のモノアラガイと違い、陸生の有肺類で鰓は退化して外套膜腔で酸素を得る。夏、産卵し孵化、幼体で越冬。寿命は1年。北海道には1種のみ。でもそんなことは関係なしに、とんがった触角の先の眼であちこち探りながら、湿った世界をゆったりと生きている。