164 北国の常緑広葉樹 投稿日時: 2012年12月1日 投稿者: nizaemon 薄氷の張る壮瞥川の岸でツルマサキの赤い実を見つけた。この地域の常緑の広葉樹はこの外にエゾユズリハ、フッキソウ、ヤドリギなどがある。厳しい冬の始り、緑の葉と朱色の実は小さな安らぎと喜びをくれる。冬の陽を受け光合成をおこない、この葉も暖地の照葉樹と同じく、新芽が葉を広げた後に初夏の繁みの中で葉を落とすのだろう。
161 トクサ・砥石ではなく砥草 投稿日時: 2012年11月21日 投稿者: nizaemon 洞爺湖湖岸のトクサの群落。シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属属名 Equisetum は馬の尻尾。 古生代石炭紀(約3億年前)に栄えたロボクの仲間だ。同じ属にスギナがあり、その胞子茎(ツクシ)を見ればトクサの形態が納得できる。トクサは砥草、束ねて硬い表面で木地や什器を磨く。歯や爪を磨くことを子どもの頃、誰かから教わった。誰かが伝える。大切なことだ。
160 黄金色の冬仕度 投稿日時: 2012年11月20日 投稿者: nizaemon 昭和新山の屋根山の斜面のカラマツの疎林。針葉樹はトドマツ、白い幹は早くに葉を落としたドロノキと、シラカバ、ハンノキ類。斜光を受け黄金色が眩しい。昭和新山の噴火後70年近くたって、これだけの森が出来上がった。無生物の火山灰の中から生育した炎のような命の輝きは、自然の持つ破壊と創造の力の証し。まばゆい光芒はここ一週間で色あせ、冬の眠りに就く。
157 ツルリンドウ 投稿日時: 2012年11月19日 投稿者: nizaemon 洞爺湖畔の閉鎖されたキャンプ場を歩いていたらツルリンドウの赤い実を見つけた。この時期、近くに生えたトクサに絡みながら、とてもよく目についた。この実はリンドウの仲間では珍しく液果で、中にはかわいい種子が10個ほど入っている。小さいが立派な果物だ。しかし味は無く、酒に漬ける人がいるという。この深紅の果実の意味はなんだ、うったえている相手は誰なのか。
155 霜枯れの中で 投稿日時: 2012年11月6日 投稿者: nizaemon 朝日のあたらない土手の斜面に白く咲いていたキクの花。近くの庭から種が飛んだのか。ノブドウ、オオヨモギ、ヤブマメなどの身近な草たちが霜で白く縁どられ枯れ落ちてゆく中で、まだ凛として、咲くことをおのれの使命としてひたすら匂い立っている。栄枯衰勢、すべてが時間の流れに乗っているとは言いながら、この季節、この小さな花の強い意志に感嘆せざるをえない。
152 ノラニンジン 投稿日時: 2012年11月2日 投稿者: nizaemon 霜を頂に載せ朝の日を受けるノラニンジンの枯れた花冠。放射冷却で冷え込んだ朝はこの通り、病葉も枯れ草もそれなりの白い花を咲かせている。夏、一面に咲き誇っていたノラニンジンの野面は、奇妙に丸まった散形花序のぼんぼりで埋まっていた。この形を何に例えようかと考えたがなかなか出てこない。自然が移ろってゆく過程で見せてくれる造形の妙味だ。
149 アカミヤドリギ 投稿日時: 2012年10月31日 投稿者: nizaemon 洞爺湖岸の月浦にある森林公園に出かけたら、大風で落とされた色とりどりの落ち葉の中に、アカミヤドリギの一枝が落ちていた。近くには宿主となっていたイタヤカエデの黄色い葉を付けた太い枝もある。荒れた後の見つけもの。果実はヒヨドリ、レンジャクなどの野鳥が好み、未消化の種子は粘液の糸を引いて鳥の肛門から樹の枝へと絡まり、そこで発芽し根を張ることとなる。
145 秋日和そして冬 投稿日時: 2012年10月26日 投稿者: nizaemon 色付き始めた有珠山山麓の広葉樹。ナナカマド、カエデ、カンバ類。中ほどの山は洞爺湖中央に浮かぶ中島の西山(454m)だ。洞爺湖カルデラの広大な台地の向こうに羊蹄山(1892m)が裾野を広げている。秋と冬が混在した風景。北海道の自然は本州中部でいえばプラス1000mの気候と言われる。頂きの冠雪は徐々に麓に降り、樹々は葉を落とし、かくして北の自然は順次時を進ませて、ひと月もするとやがて冬を迎える。
144 忍者の樹 投稿日時: 2012年10月22日 投稿者: nizaemon 人が樹に?樹が人に?。自然はこれだから面白い。見る人によって樹に抱きついているのは、一人ならず3人まで増えるから不思議。4年ほど前に見つけたら、仲間の知恵者がが“忍者の樹”と命名してくれた。この樹の和名はごく普通のイタヤカエデ。幹に絶妙の襞が出来て忍びの者と間成った。自然の妙、というよりは人の心理の曖昧さ、都合のよさ加減からくるのであろう。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」。
141 名残の意匠 投稿日時: 2012年10月21日 投稿者: nizaemon 洞爺湖の中島で出会ったヤマシャクヤクの実。初夏、半日陰の林で出会う白く柔らかで大きな花弁は、庭の園芸種より幾倍も美しく感じる。過日の中島には、この花で埋め尽くされる場所があったそうだ。特徴のある花柱は袋果となって秋に裂開する。反り返ったマゼンタ色の袋果に載る濃紺の種子と、不稔の未熟種子のカーマインスカーレットのマッチングがひときわ眼を引く。末枯れてゆく季節の中に残された、暑かった夏の日の滲んだ血の一滴。