539  今年のワタシ

ニホンアマガエル去年はどうだったのか知らないけれど、今年はワタシがここにいる。ここのアルジはワタシだ。ナニか。 毎年のことだが、人気の高い庭の「ハマユウ荘」。太い一株の葉の隙間を棲家にしているニホンアマガエルは4匹。こいつが一番大きく、次は灰色あばたであとは緑の小さいの。鳴き声は葉で反響するし雨水は溜まるし、だいいち踏みつけられることもない。白い花が咲いているので小さな虫たちもやってくる。

538  たくましく可憐

ヒロハヒルガオ伊達港のテトラポッドの隙間に純白の花を見つけた。五枚の蕚を包む苞葉がとても大きく、葉もまた大きいので Calystegia sepium  ヒロハヒルガオと同定した。日本のヒルガオ C. japonica にも似ている。セイヨウヒルガオ  C. arvensis ではなかった。英国の図鑑では  Larger Bindweed と書かれている。Great Bindweed という種 C. silvatica もあって、さらに大きな花を付けるという。

乾燥地、荒れ地どころか肥沃地にも、海水の飛沫がかかるような極端な土壌にも盛大な根を張り、強い生命力で子孫を増やす。ヨーロッパ原産だが、今では世界中に進出中だ。花はこの通り清楚で可憐。Sepium は垣根の意だというが、もはや生き物たちに垣根や国境はなくなったようだ。

537  蜜の味

クロクサアリギボウシの花から落ちた甘い水が葉に溜まっていて、黒い小さなアリが集まっている。このアリはクロクサアリ。甘いものに目がないアリで、仲間のフェロモン情報をたどって、列をなして目的に行き着く習性を持っている。それぞれの個体間の会話がわかるような配列で、こちらの心も引き込まれてしまう。何を囁き合っているのだ。

「A Taste Of Honey」。”I will return, yes I will return”  Barbra Streisandの甘い声を思い出す。He will return He’ll come back for the honey and me。

536  我が家の塩梅(あんばい)

梅しごと我が家の梅に10㎏の実がついて、関東よりひと月遅れの梅しごと。仲洞爺の豆腐屋から買う1.5kgのシャークベイ天日塩、10㎏の重石で漬けこむ。容器は常滑焼の甕18リットル入り。梅酢が上がったら底の濃い塩水を通した竹筒で数回天地返し。濃度を均一にすると上面も塩が効く。ひと月後3日間日に干して味のグレードアップ。半乾きでほんのり飴色になって確実に旨みを増す。北海道は気温が低いから低塩分漬物大国だ。

535  グミ・茱萸・胡頽子

グミ農家の庭先で見つけたグミ。今はもう口にする子供もなく、年寄りの思い出だけの果物になってしまった。渋い味はタンニンが含まれるからで、顆粒の付いた果皮やきれいな色と相まって、小粒ながら存在感がある。「ぐみ」は大和言葉由来だそうで、漢字の茱萸や胡頽子はいわくありげだが、今では意味を持たなくなった。「昔は食べたらしい」という時代が間もなく来るだろう。

530  サクランボ狂想曲

サクランボパイサクランボの花が一輪咲いたのが5月の初め。7月にはたわわに熟したその実が長雨ですべてヤラレて、家族も仲間もみな落胆した。傷んだのを雨の中で収穫し、種子を取りコンポートにしておいた。クレームダマンドを作りパイを焼く。サクランボの軽い酸味と薄い表皮の食感が生きていて、アーモンドの香りと相性がいい。パイを頬張りながら、色々あったこの三ヶ月を振り返る。

529  つわものたち

オンタデ?有珠山の山頂近く、1977-78噴火の銀沼火口へ降りた。時折水も溜まるが、今は乾季でこの通り。地面のひび割れの中から伸びるのはオンタデか。近隣にはイタドリ(オオイタドリではなく)、スギナ、ヨシなど。こんなところに好き好んで、とはいうものの、いずれここを草原や林地に作りかえてゆく強かな開拓者たちなのだ。この夏、日照りが続くとすべて枯れてしまう覚束なさもはねのけて、今は生きることに精を出す。

528  装飾花を装飾につかう

イワガラミイワガラミの花が咲いている。ほぼ同じころに咲いて、遠目にはツルアジサイと同じに見えるが、中心部の細かな花序の両性花を取囲む白い装飾花の数が一枚ずつで清楚な感じがする。ツルアジサイは別の属でアジサイの仲間。両種ともつる性で、岩や木に取り付いて這い上がる。アジサイもガーデニングによく使われるが、石造りの建造物の多いヨーロッパでは外壁の装飾用にこの両種が使われることがある。

527  オニノヤガラ

オニノヤガラ遠景にニセコアンヌプリを望む倶知安町の尻別川、富士見橋北詰の土手にオニノヤガラを同行のジオパーク友の会の仲間が見つけた。クロロフィルも葉も持たず従って光合成をおこなわず、ナラタケ菌と共生する。派手な花弁や色を持たないがラン科。花はデンドロビウム・ファレノプシスつまりデンファレの蕾に似ている。同様な生活をするツチアケビにもたまにお目にかかる。ともに漢方で有名な植物だという。

525  何の合図か

マタタビの葉

花が持つ色、香り、形、反射能などはすべて昆虫や動物たちへの問いかけだ。でもこのマタタビの葉の色はどうなのか。遥か遠くからでも良くわかる白く輝く葉のサインの意味は何なんだろう。葉も参加しての昆虫誘因作戦か。木の下闇を背景にヒラヒラと風でよく動く。山奥のミヤママタタビの葉はさらにピンク色がかっている。