578 異郷の冬

アカンサス地中海沿岸が原産のアカンサス。デザイン化されてギリシャ時代の建築から日本の唐草まで繋っている文様だという。壁紙や布地のウイリアム・モーリスのデザインが気に入って5年ほど前に苗を買った。季節はとうとう雪になって、間もなく葉は枯れ、根は凍てついた土の中で春を待つ。何の因果か日本で暮らすことになり、何とか種子を付けようとした花が雪をかぶっている。

577 北の砂糖

製糖工場池澤夏樹の「神々の食」に多良間島の黒糖が紹介されていた。甘さは生き物たちの安全な食の裏付。古来から砂糖を担ってきたのはサトウキビだが、北国北海道ではビートが砂糖となる。掘り起こされたビートはまだ畑に山と積まれていて、冬の間計画的に出荷される。伊達市にある北海道製糖の蒸気は砂糖生成の烽火。南国の黒糖も旨いが、この地のグラニュー糖も甘党には捨てがたい。

573 斜光を受けて

有珠山山頂11月12日10時。壮瞥温泉町から見上げる有珠山。斜光に山頂部の様子がレリーフとなって浮き出ている。白い樹々はまだ若いシラカバ。画面の下に見えるのはドロノキで、どちらも火山の上の先駆植生の代表者だ。山頂は一番高く見える「こぶ」の向こう側にある。この辺りには旧有珠山ドームの上に乗っていた天然煉瓦の赤い礫が残っていて、右の大岩もドームの忘れ形見。

572 カケスの季節

ミヤマカケス季節はめぐり樹々の葉は寒風に舞い散って、明るくなった林にカケスたちが舞い戻ってきた。カラスの一族とはいいながら、ターコイズブルーの翅飾りをアクセントにふわりふわりと移動するシャレ者だ。北海道に棲むミヤマカケスは胸元から上が褐色で目が黒い。一羽が栗の実を見つけて咥えて来た。仲間とおしゃべりしながらのブランチでブランチ。

 

571 源太穴火口

源太穴明治43年(1910年)の有珠山山麓噴火では45個の火口が開き四十三(よそみ)山が隆起した。民家や畑のすぐそばだった。その時湖畔に発見された温泉が洞爺湖温泉の始まりとなった。その東の壮瞥温泉の住宅から400m離れた山腹にこの時の噴火最大の火口「源太穴」が見える。画面中央やや上、朝の陽に映えるカラマツの黄と白いドロノキの樹冠に囲まれて長径200m火口が黒く開く。

569 壮瞥穴を掘る

壮瞥穴壮瞥七不思議の一つ、「壮瞥穴」の生成を探る目論見が進行中だ。近年見つかったいくつかの壮瞥穴の調査や試掘が、洞爺湖有珠山火山マイスターでもある北翔大学、横山光准教授を中心に進められている。今回の試掘は壮瞥穴の持ち主(穴が開いたということ)でもある中山工務店の協力があってのイベントである。三松三郎さんらが行った以前の調査はスコップを使ったというが、さぞかし大変だったろう。 写真の中央左の穴が壮瞥穴。その脇を4mほど掘り下げている。ほぼ均一なテフラの堆積やその下の軽石層の存在などから、今まで考えられていた壮瞥穴の生成機序とは、異なる結果が出るかもしれない。そして生成年代は? 結果の公表をワクワクしながら待っている。

566  落葉ヤドリギ

ホザキヤドリギホザキヤドリギが葉を落とし始めた。昨日(10月29日)の夜半は吹き荒れた。地表には落ち葉に紛れて一枚の葉を付けた黄色い花序が落ちていた。見上げると宿主のニレの葉は残り少なく、ホザキヤドリギの葉も同様だ。どちらも落葉広葉樹の一員として季節に乗っかって葉を落としている。写真の右下、アカミノヤドリギの判別しやすい形の常緑の葉はしっかりと残っていて対照的だ。

565  明るい晩秋冬隣

有珠山の初冠雪10月25日朝、有珠山は初冠雪。前夜からの里の霙は海抜737mの有珠山に雪を降らせた。手前の昭和新山の屋根山が白く見えるが、これは早めに葉を落とす習性のドロノキの白い樹冠の色。裾野は晩秋綴れの錦。手前の畑には秋蒔きの小麦が若い葉を伸ばしている。雪枯れ病の防除をされて半年雪の下で眠りにつく。収穫は来年8月麦秋の後。

563  クジャクシダ

クジャクシダ茅部郡森町の山の薄暗がりで可愛いシダを見つけた。Adiantum (ホウライシダ属)。園芸店のアジアンタムはよく知っていたが、種こそ違え北海道に自生するこのクジャクシダもアジアンタムだったとは驚きだ。細かい葉の清涼感がうり物の園芸種は熱帯アメリカ原産だという。だがこのクジャクシダの方が日本の気候で育ち風情もある。赤褐色で光沢がある細い葉柄がまたいい。

561  色づくのはいつか

ホザキヤドリギホザキヤドリギを初めて見つけたのは今年の1月29日だった。樹の葉が落ちたなか、黄金色の穂状花序が見事だった。年を越したころには宿主のハルニレの梢は見事になるのだろうが、いつ色付くのかが目下の課題だ。大風の翌日の10月9日、樹の下で果実を拾った。果実は充実して膨らんでいるがまだ固く、色少し淡くなった程度だった。同じ樹を宿主としている常緑のアカミノヤドリギはすでに色がついてきている。