壮瞥温泉近くの湖畔の道路。昭和新山第5次爆発の火砕流はここにあったミズナラ、ハリギリ、トチノキなどの防風・防雪林を一気に壊滅させた。1944年のことだ。その後植栽され堂々たる姿で役割を果たしていたが今回の台風10号は一夜にして100本を超えるトドマツをへし折った。湖岸までの幅30mの一斉林。混交林ではない上に下草が刈られ次世代が育っていない。風には弱い林だ。
「植物」カテゴリーアーカイブ
675 台風一過
674 破壊と再生
2000年の有珠山噴火で被害を受け放棄された公共住宅。屋根には噴石で多くの孔が開き、1階は火口から噴出した熱泥流で埋もれている。2階には50m上流から泥流で流されてきた国道の木の実橋が激突した損傷が残っている。泥流は橋げたをさらに100mも押し流し、前年に完成したばかりの町営浴場・やすらぎの家の真ん中を突っ切って厚さ1mの泥流堆積物を残した。
アパートの屋上の孔からの雨水は床を腐らせ、割れた窓から飛び込んだ綿毛を持ったヤナギ類の種子が発芽して、今ではこの通りの繁茂ぶり。5年ほど前の屋内探査ではこの樹々の根は和室の畳やカーペットの下いっぱいに広がり、隣室はシダが繁茂し、神棚にはシジュウカラの雛が育っていた。自然災害の現場で、破壊と再生を見た。
673 ジオサイト整備
669 夕映えのドーム
667 奇岩黒岩
665 ヘーゼルナッツの実
664 日本海ブルー
663 トッカリショ
室蘭港の裏側にこんな風景があるのをご存じだろうか。トッカリショは太古からの自然と人の生活が織りなす第一級の風景(ピリカノカ)だ。トッカリとはアザラシのこと。草地の下の断崖は海底火山の噴出物の堆積でできた室蘭層でイタンキの白い岩壁とつながり、成分の違う凝灰岩の層が傾斜していく層にも重なっている。小さな浜には何代も続く漁師たちの家がある。
私たちは工業を振興し港を盛んにする中で、このような美しい風景を捨ててきた。いくつものアイヌの伝説を伝え、人々の心に安らぎを与えてきたオイナオシ、オハシナイ、祝津(シュクズシ)、エトモの海はすでになく、電信浜、ポンモイの海岸は姿を変えた。砂浜は埋められ、岬はコンクリートで囲われてしまった。トッカリショに続くイタンキの浜が、海辺の生き物や鳴り砂の浜を守るという人々の熱い思いで守られているのが救いだ。
オイナオシの浜に続く栽培水産試験場が造られた場所は、豊かな海藻とスガモの藻場のある岩礁地帯であった。海の生物たちの揺籃の場を破壊して造成された施設は、祖先から譲り受けたありのままの多様な生態系をどのように補えるのだろうか。埋め立てでできたMランドという名の堤防の先は、いままさにピリカノカ・マスイチの絶壁を窺がっている。