712 北の砂糖

甜菜糖工場大地は薄雪、薄氷で覆われ、雪雲も製糖工場の吐きだす蒸気も強い北西の風で吹き流されている。白い蒸気はビート(甜菜)から砂糖を蒸留する冬にだけ働く工場。毎年の冬景色だ。前身は紋鼈製糖所で現在日本一の生産量だという。白い人参のような根は1個600〜1200gに肥大し、14〜20%程度のショ糖を蓄えるから150g、コーヒー茶碗山盛りいっぱいの蔗糖が採れる計算となる。

711 飯鮨(いずし)の材料

飯鮨の材料飯鮨は古来からの熟鮨(なれずし)文化で、北前船、開拓者、やん衆と繋がる。杉樽二つに漬けこむ材料を揃えた。シャケはオホーツクの雄武産3本。飯1升分に米麹2㎏。野菜はキャベツ4個、大根4本、ニンジン4本を十分な量の天日塩で揉み、薬味はショウガ。竹の皮で蓋い、交互に漬けこんで2か月間0~4℃の地下室で眠らせる。化学調味料で味をつけた市販品には負けません。

710 長流川下流

長流川下流冬景色となった長流川下流の河原。伊達市側の左岸にはこの川に浸食された10万年前の洞爺火砕の黄土色の露頭がみえる。右岸の緑はクマイザサ。ここは北の湘南橋近くで、産卵後流れ下るシャケの死骸を目当ての4羽のオジロワシを見つけた。オオワシの姿は見えなかった。この辺りの厳寒期にはカラス、カモメ類にキタキツネも混じって、野生の素敵な観察場所となる。

706 家主は誰

野鳥の巣裏口の階段上の踊り場、ハニーサックルの葉が落ちて明るくなったら、小鳥の巣があった。丁寧に作られた内径10㎝ほどの巣で、鳥の出入りに全く気付かずにいた。抱卵や巣立ちがなされたかは分からないけれど、こんな近場に生き物の営みがあったとはとても嬉しくなってしまう。仲間に助けを求めたら、巣材と大きさからヒヨドリでないかと結論が出た。

705 1663年Us-bテフラ

1663年テフラ壮瞥町滝之町から洞爺湖東湖畔へのトンネル工事現場。芝から下は10万年前の洞爺火砕流。軽石層はUs-bの名称で知られる1663年のプリニアン噴出物。1mのスケールから上は水蒸気マグマ噴出物。1663年8月16日から8月末までの2週間のできごとがこの灰色の4m。ならば、さらに有珠山に近い滝之町地域にあいた壮瞥穴は、このテフラで一気に埋まった原始林との結論も浮かび上がる。

703 麻辣(マーラー)の麻

サンショウの実我が家のサンショウにやっと実がなった。黄緑色は7月2日の収穫で湯がいて冷凍して置いた。 臙脂色のが今回10月末のもので、黒い種子は味がなく播種に回す。この地方がサンショウの北限だ。写真の中華皿の分量で四川風舌のしびれる麻辣麻婆豆腐が2回分。豆板醤、豆鼓、大蒜、生姜、長葱、澱粉、紹興酒、鶏ガラスープに胡麻油。メインは湯がき豆腐と豚あばら肉の微塵切り。

702 黄金の晩秋

カラマツの黄葉たくさんの種類の紅葉が終わり、辿り着くのがカラマツの黄葉。重厚でやや照葉のミズナラの褐色や幹だけになったドロノキの銀色を添えて、トドマツの碧い緑のキャンバスに浮き上がってみえる。植物たちが萌え出す軟らかな緑に包まれる季節もいいが、私はこちらの方が好きだ。自然が持つ巧みな意匠力と豪奢な演出。終わりが良ければ総てが善いことを納得させる力量を持っている。

700 海の嵐

アルトリ岬8月30日深夜の台風20号の風は猛烈だった。(ブログ675、676、378、679)。アルトリネイチャーハウスの福田火山マイスターは海も大荒れだったという。波は標高4m辺りまで流木を押し上げ、多量の漂着物を残し、多くのボランティアが数百袋のごみを集めたそうだ。アルトリ岬へ続く砂地は抉られ、海浜植物の根がむき出しになっている。南東の風と波が直接この海岸を襲ったのだ。

699 いつもの風景だが

スミレモ属の一種 室蘭市母恋から地球岬へのいつもの道、当たり前の赤い石垣の風景だと思いながら鮮やかな色につられてカメラを向けた。私はこの金茶色の植物を菌類か地衣類と考え、図鑑類を当たってみたが納得できず、ネットで検索をした。苦労しながら辿り着いたのが、なんと母恋の石垣の写真と解説が載ったページだった。石材の吸湿性と母恋の微環境が作りだした特異的な風景だ。(161027撮影)

さっそく研究者の鈴木氏に連絡を取り許可をいただき、引用させてもらうことにした。詳細な解説と見事な群落の写真が載っている。この植物は藻類のスミレモ属の一種 Trentepohlia sp. で、鈴木氏はチャラツナイの浜にあった北大の旧海藻研究所への道すがら、この辺りのオレンジ色に染め上げる風景が見事で興味を持って観察していたという。

引用 http://natural-history.main.jp/Tree_of_life/Eukaryote/Plantae/Ulvophyceae/Trentepohlia_sp/Trentepohlia_sp.html

 

 

697 地の豊饒

大地のトマト何でこんなにトマトが散らばっているのか良くわからない。地面からキノコのように生えたわけでもあるまい。いずれにせよ、大地の養分を根で受け、茎が運び、葉が光合成しての赤い実だ。土の産物である。黒い土に赤いトマトは美しい。美味しかったろうに。              そう言えば今日、11月3日、草間彌生さんが文化勲章をもらっていた。