742 イタンキの岬

イタンキの岬イタンキ浜を見下ろす室蘭ユースホステルからのイタンキ岬(手前)。知里・山田の「室蘭市のアイヌ語地名」(1960)には岬の向こうがポロイタンキで、沖合に小さなフンベシュマ(クジラ岩)があり、手前がポンイタンキ、砂浜はハワノタ(音する浜)という。向うの大きな岬は標高107mのワシベツノツ(鷲別川の岬)。二つの岬は相似形で一般には手前の岬をクジラ岩といっている。

740 チャラツナイの浜

チャラツナイ久し振りに室蘭のこの磯に立った。北大の海藻研究所は今はなく、敷地は波で崩れかかっている。風景にも海の中の様子にも思い出が沢山ある。50年前、ここでよく泳ぎよく潜った。向うの尖った岩礁はムカリソで小舟が通れる洞窟があり、夕日が壮大だ。浜の名の由来の滝もまだ残っている。足元の干上がった潮間帯には、優占種のムラサキインコの群落が広がり、今が実りの季節だ。

734 有珠山ドーム

有珠山伊達漁港からの有珠山。なだらかな外輪の上、最も左が有珠新山(669m)、次がオガリ山(872m)、右が有珠山頂上(733m)で右端少し下がった三角錐が崩壊してしまった旧「どびんの口」。いずれも溶岩ドームと潜在円頂丘。永い眠りから覚めての1663年の大噴火。その後数十年ごとの噴火でこの山容となった。港から9㎞の距離。次の噴火がいつ、何処からかは分からない。

724 矢じりを作った

s-kDSC_7638国縫川の硬質頁岩(ブログ670)で尖頭器を作った。この川の源流は分水嶺で、向こうの日本海側の今金町にはピリカ旧石器文化館がある。2万年前の旧石器人にならって、彼らと同じ頁岩で矢じりを作った。道具は右側の糸魚川の海岸で拾った硬い白い石だ。指に傷を作りながら1時間で形はできたが、雪だるまにも跳ね返されるような使えぬ鈍器。旧石器人に弟子入りしなくては。

707 チカ

チカチカのシーズンがやってきた。チカは淡水生のワカサギに近い種だが、海水魚だ。白銀色の20㎝もある上等なのが店頭に並ぶ。16匹一盛りで280円。二枚に下し、塩水に漬けて半日干した。素焼もいいし、唐揚げにしてもよい。白身で淡泊、しかも香りがいい。三枚にすると丁度天ぷら種の大きさ。キスには負けない馥郁、芳醇な海の幸。海近くに住むことと季節に感謝する。

698 攪乱の季節

漏斗雲札幌で20㎝を超す積雪があった。低気圧が発達しながら通り過ぎてシベリアの寒気が入ってぐっと冷え込んだ。伊達市から見た噴火湾の方向に漏斗雲ができていた。10分間位のことだが次にもう一つの漏斗雲が。もっと発達して地上まで延びるとミニ竜巻だ。この辺りの農家で作られたビートを使う製糖工場の蒸気が見える。冬の情景だ。気候の変わり目のちょっとした出来事。

694 母恋富士

母恋富士土地が無ければ海埋めろ、出ているところは削って使え。環境の多様性や豊かなランドスケープを残すなどとはほど遠い発想で、豊かだった地形は時代と共に変えられた。乱暴な話だ。母恋富士は室蘭層をつき抜いた安山岩の岩脈だというが火山ではない。採石されて姿を変え、まるで噴火口が開いているようだ。港からの素敵なランドマークだった母恋富士。富士の名前が泣いている。

680 たたらの人

イタンキ浜の砂鉄室蘭のイタンキ浜で天秤棒でバケツを運んでいる男を見た。それにしても重そうだ。砂の中からマグネットで集めたという。蹈鞴(たたら)和鉄の原料で、少年科学館や課外授業のイベントで活躍中の「室蘭登別たたらの会」石崎氏。波の音を背に、砂鉄の産地と成分の違い、炭のこと、手順、出雲のたたら製鉄まで話は尽きない。この人、炉から引き出した「けら」のように熱かった。

670 国縫川のお宝

国縫川の礫長万部町国縫(くんぬい)川下流で岩石採集。「クンネ・ナイ」(黒い・川)が語源だといい、上流には訓縫層、八雲層の露頭があるという。分水嶺を越えると旧石器時代のピリカ遺跡があり、支流の茶屋川が石材の産地と聞いた。グリーンタフ、メノウ、硬質頁岩が見つかり、メノウは火打石に、頁岩はアポイジオパークで買い求めたシカの角で欠いて、石刃づくりを楽しむ。

667 奇岩黒岩

奇岩黒岩八雲町の海岸、ひときわ目を引く黒い岩塊。アイヌ語でシュマカムイ(石の神)と呼ばれた。硬質頁岩と泥岩の互層からなる八雲層中にあるハイアロクラスタイト(海底噴火の水冷破砕岩)で、流紋岩質の露頭だという(北海道地質100選解説による)。珪酸分を含む熱水から晶出した鶏卵大のメノウを見つけた。コウボウムギやハマヒルガオ、ハマエンドウの海浜植物群と潮騒の中で、はるか地層時代に思いを馳せる。