583 旨いタラコは

旨いタラコ市販の塩タラコは実に不味い。魚卵の味がしないどころか、濃い漬け汁の味と舌の奥にいつまでも残る化学調味料の奇妙な味。“調味液”でなく「塩」のみで味付けしたタラコを函館で見つけ食べたが、これは旨かった。見習って、二腹200円で新鮮なタラコを買い、たっぷりの天日塩で締める。1.5㎏の重石、途中2度ペーパータオルを換え、冷蔵庫で約1週間。実に旨い塩タラコが誕生した。素材の持ち味を貶めてはいけない。

582 牧場のカモメ

カモメ壮瞥町の街の中の牧場で200羽ほどのカモメを見た。識別ができないので野鳥の専門家篠原盛雄さんに聞いてみた。「カモメという名のカモメで渡りの途中の集団であり、成鳥になるまでのさまざまなパターンの鳥が混じっている」とのこと。この町の人口は3000人を割り、子供の数は多くはない。種群が持つ健全な年齢構成の在り方について、小学校の青い屋根を背景に考えてしまった。

580 鈍色の風景

崎守の海冬も間近な室蘭市崎守町の海。北西の強い風に波がしらが吹き千切られる。防人の海なのか。

海鳥はオオセグロカモメとウミネコ。海が荒れるとここではいつもこんな風景。ちぎられた藻屑の中に餌でも見つかるのだろうか。

572 カケスの季節

ミヤマカケス季節はめぐり樹々の葉は寒風に舞い散って、明るくなった林にカケスたちが舞い戻ってきた。カラスの一族とはいいながら、ターコイズブルーの翅飾りをアクセントにふわりふわりと移動するシャレ者だ。北海道に棲むミヤマカケスは胸元から上が褐色で目が黒い。一羽が栗の実を見つけて咥えて来た。仲間とおしゃべりしながらのブランチでブランチ。

 

568 小幌洞窟、海鳴りの祠

小幌洞窟11月1日、ジオパーク友の会では小幌駅存続応援企画として26名参加の小幌洞窟探索会を行った。洞窟は標高50mの小幌駅から800m小道をたどった海岸にある。駅直下の文太郎浜へも足を延ばし、帰路の列車を待つ間の大発生の雪虫の中、小幌駅の由来も学び、晩秋の軟らかな日和の中、たっぷりと時間をかけて小幌の自然と歴史を楽しんだ。礼文駅11:27→小幌駅11:35(230円)、小幌駅15:40→礼文駅15:46。

海底火山の堆積物(ハイアロクラスタイト)にできたこの海蝕洞は静狩駅と礼文駅間、約10㎞続く断崖の海岸線の中間にある。古い時代から人々が立ち寄り、住んだ形跡が縄文晩期2500年前にさかのぼるという。1663年の有珠山噴火の直後にこの地にやってきた円空が彫った円空仏も、今はレプリカだがこの岩屋に残されていた。1791年には菅江真澄も立ち寄り紀行文が残っている。近年になっても近隣の漁師たちの船魂参りが行われていて、数千年、潮騒の中で人々の生き様を見守ってきた岩屋である。

564 またやってきたね

アトリブログ485で「アトリが多い」と投稿したのは今年の3月21日。数日前、近くの稲株の残る田んぼ跡に小鳥の群れがいた。よく見るとやはりアトリ。300羽ほどの群れで、飛び立って一斉に向きを変えると群れ全部の腹が光る。朝日を受けてトドマツの黒い森ととんがり屋根の壮瞥小学校。この群れはこの地で冬を越すのだろうか。小学校の子供たちに教えなくっては。

551  手にするマントル

橄欖岩薄い卵殻が地殻とすると白身はマントル、と説明を受けた。数千℃のマグマの固まった本体が橄欖岩。大陸プレートの衝突で押し上げられて、数十キロ下で凝固した橄欖岩をここでは手にすることができる。それが様似町のアポイ橄欖岩なのだ。正確には世界的に知られた「幌満かんらん岩(Horoman-peridotite)」。比重は3.0~3.3だという。花崗岩よりもずっと重い。腊葉標本の重石には絶好だ。幌満の「ジオラボ アポイ岳」の新井田先生に切っていただいた河原の石はペーパーウェイトだ。嬉しいね。

アポイジオパークが世界ジオパーク新規認定となった。我が家からは直線で170km。少し遠いがそれでもぐっと近づいた。橄欖岩を通して岩石の勉強ができる。これぞ「七十の手習い」だ。長い海岸線の潮間帯の生き物にも興味がある。長靴を履いて出かけなくっては。

546  いのちの行方

死の円舞壮瞥川が昭和新山に遮られてできた新山沼に小さな波紋を見つけた。樺色の蛾が仰向けになり、羽ばたきながらくるくると回って水に流されてゆく。渦と同心円が錯綜する死の円舞。やがて一瞬ふっと輪が消えた。小さな虫の派手なひとり芝居をさっき見た大きなコイが下から飲み込んだのだ。どのいのちも死に方はそれぞれだ。過激だが決して不条理ではない、ごく普遍的ないのちの終末。

542  トカゲはトカゲ

ヒガシニホントカゲニホントカゲ Plestiodon japonicus と思っていたけれど、2012年からヒガシニホントカゲ Plestiodon finitimus となったという。ロシア沿海州のも同種。finitimus 、羅和辞書では「隣り合った」「血縁の」となっている。ニホントカゲの種名をもらったオカダトカゲP. latiscutatus も含め、地理・時間・遺伝的系統も加味されてのややこしい話しだ。シッポの青い青二才。ひょっとすると妊娠中?の二才雌か。

541  外部感覚

オニグモ老眼の眼にはこのいきものの細部は見えないし、実体顕微鏡でどうのというほどの間柄ではない。だがこうやって画像でつくずく見ているとなぜか溜息が出る。この生き物のことを私は何も知らない。身体や生活の在り方は研究書を読めばわかる。しかし私が知りたいのは、このオニグモが外部世界から何を感じとり、何を生きがいにしているかということだ。この太ったクモのいのちの内景を知りたい。全身感覚毛。