473  春への眼差し

冷たい風を避けて南斜面を歩き、葉を落とした樹々を訪ねる。陽だまりにはすでに光の春がやって来ている。芽が動くにはもう少し時間が必要だが、やがて来る春を探すにはよい時期だ。ヒツジの顔で知られるオニグルミ、針で武装したハリギリ、タラはまだ芽がかたい。トチは樹液を滲ませて展開を待つ。ニワウルシはサフォーク種のヒツジに見える。クズはナマケモノの顔にもお下げの童女にも見えるのだが、、。

472  男前だぜ

アイラインにシャドウも付けて、ちらりとレモンイエローの裾模様。髪は茶髪のストレート。いつも群れで行動し、今日の目当てはアズキナシの残った果実。調べてみたら雄らしく、雌はどういうわけか少ないのだそうだ。毎年どこかでこの連中に出会うが、みな同じ意匠で目が落ち着かない。慌てて目を凝らすが、心をとめる暇もなく姿を消してしまう。どちらで群れるのか知らないが、チョイわる振りも身について、イヨッ兄貴、イナセだね。アイラインにシャドウも付けて、ちらりとレモンイエローの裾模様。髪は茶髪のストレート。いつも群れで行動し、今日の目当てはアズキナシの残った果実。このキレンジャク、調べてみたら雄らしく、雌はどういうわけか少ないのだそうだ。毎年どこかでこの連中に出会うが、みな同じメークで目がチラチラする。慌てて目を凝らすが、心をとめる暇もなく姿を消してしまう。どちらで群れるのか知らないが、チョイワル振りも身について、イヨッ兄貴、イナセだね。

471  天晴れ羊蹄

羊蹄山一週ほど続いた荒天も、今日の午前中は風もなく羊蹄山はこの通り。水も澄み大気もすんで、羊蹄の雪面に雲の影が。こんな風景めったにないが、春先、ふっと気が和み「羊蹄でも見るか」と湖に出かけると出会えるから不思議だ。

古羊蹄は10万~5万年前に山体を形成し、4万5000年前に山体崩壊してニセコ町側にたくさんの流れ山地形を作り、その後今の羊蹄山が出来上がったという。地史も形も富士山によく似ている。若く眩しい火山。いうことなし。

470  卵だけ

タマゴタケキノコ愛好会の仲間のために作った一品。タマゴだけのタマゴタケ。集まりには風邪でダウンして出席できなかったので、写真でお披露目と相成り候。ベースは鶏卵の中華風煮卵で、台湾では「茶葉蛋」としてごく普通の食品である。味はウーロン茶葉、八角、シナモン、生姜、紹興酒であり、醤油味で二日かけて完成。ご本尊の赤いタマゴタケは室蘭産ウズラ卵のご当地ものにて御座候。この季節は地吹雪舞う地面の下で、あと半年先を夢見てひたすら熟睡中だ。今年の夏、深い山の林床で出会えることを願いながら、こちとらもまた、首にマフラー巻き付けて半身は布団の中の沈澱中。

469  樹林に暮らす

樹林で暮らす湖に沿って歩いていてトドマツの樹冠の下に小さな家を見つけた。薪で暖を取り煮炊きをする暮らしがある。後は葉を落としたカラマツ林。シカがいてキタキツネがいてそれとユキウサギ。あと三月もするとカラマツに新芽が萌える。鳥たちが戻ってくる。今は本を読む季節だろう。厳しいが質素と静寂が贅沢。煙突の白い煙が黒い林の中に消えてゆく。

468 変わらぬ風景

マスイチセ室蘭半島は先端の地名から絵鞆半島と呼ばれた。エトモとはエンルム(enrumu=岬)によるという。半島の南面は500~300万年前の海底火山の噴出物が堆積した室蘭層と、それを突き抜けた岩脈で構成された100m程の断崖となっている。小さな岬で仕切られた砂浜や入り江が数多くあり、アイヌ地名と逸話が残されていたが岬は削られ砂浜は埋められて古の姿は残り少ない。写真の右の岩はローソク岩でアイヌ名は残っていない。左は岩脈が海に取り残された岩で白く見えるのは雪ではなくカモメの糞。マスイチ(マスイ・チセ=カモメ・家)の語源となった岩であり岩の近くには海蝕洞がある。この浜には降りて行くことができ、人の手の入っていない時代の絵鞆半島に出会える。

手前の断崖の先にも大きな洞窟が口を開けているが、西側の別な浜から岩伝いに行くしか方法がない。この洞窟こそ、白鳥湾(=室蘭港)側のトキカルモイあたりに有ったという「アフンルパロ」からつながり、太平洋側にもあるといわれた伝説の「アフンルパロ」ではないかと私は思っている。

467  タラを打つ

タラを打つ室蘭市の太平洋に面した漁港近くの住宅地で、男がハンマーで何かを打っている。思い当たる節があって、車を停め「懐かしい風景ですね、昔はよく見たね。スルメなんかも」と言ったら、「俺たちはいつもこうだ」という。歩道の縁に腰掛け「タラを打ち」を続け、立ち上がりながら二本差し出し、「うまいぞ」「掃除はしないんだ、あとはカラスが食う」と言って家に入っていった。

日曜日の午後三時、明日は時化模様。これからタラとマヨネーズと唐辛子で焼酎か。ご近所付き合いしたいですね。 近くのどの家の軒下にも、スケソウダラが寒風に揺れている。帰りの車の中の、叩かれて幾倍にも膨れ上がったむき出しのタラからは、凝縮されていた旨みがハンマーの力で弾けとび、肺の腑、胃の腑まで滲みこんでくる。

465  ホザキヤドリギ

ホザキヤドリギホザキヤドリギ2 ホザキヤドリギ3

 

 

 

ホザキヤドリギ(ヤドリギ科ホザキヤドリギ属) Loranthus Tanakae  Fr. et  Sav.

冬季、落葉広葉樹林の葉が落ちると、それまで隠れていたいろいろなものが見えるようになる。カラスの巣と見間違うほどの葉を茂らせたヤドリギが目につくのもそうだ。そして今回は、洞爺湖畔の高木にホザキヤドリギの黄金色の房状の実を見つけた。同じ樹にはアカミノヤドリギの実と葉も見える。なんということだ。これまではまったく気が付かなかった。いつもその下を通っていたのに。本州中部から東北地方までの分布という。この付近のデータが見つからない。物知りの自然観察のプロも初めてだという。冬には冬の発見と悦びがある。

464  冬の花

イワガラミ寒さの中、樹冠に纏いつきながら耐えていたイワガラミの花穂が雪の上に落ちていた。夏のさ中、純白の花だったそのままの姿で雪の上に落ちている。雪の上のユキノシタ科。この森には同じ仲間のツルアジサイ、ノリウツギも装飾花の萼片を残したままで寒さに耐える。半年前の名残の花殻。夏を咲ききって、いまなおいのちを物語る。

463  穏やかな冬

冬景色雪が少ないが明け方の冷え込みは強い。間もなく2月。大荒れの日が無かったのでまだアシの穂は残り茎も立ち上がっている。湖水が茎に纏いつきながら凍り始めた。このあたりから凍結が始まる。大有珠の東面が光っている。昭和新山のドームが屋根山から黒く突き出している。静かな冬景色。