265 艶やかな織姫

ナガコガンrグモ裏庭のラズベリーの繁みで金色に輝くクモを見つけた。調べたらナガコガネグモ(♀)。一瞬ジョロウグモかと思ったが、巣に白帯もあってこの種に確定。同科にはオニグモ属も含まれ、北海道でもよく見られる美しいイシサワオニグモの存在も頷ける。子供の頃、軒下の錆び色でどてっとしたオニグモを手でつまんでよく遊んだが、この華麗なクモには目が向かなかった。いま見ると心を震わすような艶美な生き物なのだが。

264 無限花序

ビロードモウズイカ秋めいて、澄んだ青空が心地よい。有珠山、昭和新山を背にビロードモウズイカが咲いている。去年ロゼット葉を見つけ、生垣の縁だったのでそのままにしておいた。ヨーロッパ原産のリンネ種である。暑さが退いたので勢いを増し、花茎に分岐も出来てこの無限花序どこまで伸びるのやら。イギリスではCommon Mulleinがつく。ヨーロッパに似た風土の北海道でも普通種となった。出自はともあれ、この地でごく当り前に逞しく咲く存在感のある花だ。

263 カモメの家

マスイチセ室蘭のマスイチの岬はアイヌ語マスイ・チセ­=カモメ・家から出た地名で、画面左端の岩を指す。この岩は屏風状の薄い二枚の岩で何時も風が通り抜けている。近くの入江はマスイチセ・トマリで向うの頂きはマタイコリの崖の頂上(154m)で、下の磯はケショラプモイ。深い海蝕洞のアフンルパルがある。「永田地名解」ではこの辺りを「鷲湾」だと言うが、今ではマスイチ展望台にはワシ・タカ類の渡りの観察に愛好者が集まる。

262 Red Moon

Red Moon夕方、積乱雲の残る山の端に満月があった。今月の望月はRed Moon と云うそうだ。雲の頂きに残照が滲む。昼間の火照りのようだ。夏の名残りと秋の名月の先ぶれコラボ。今年の中秋の名月(十五夜)は9月19日だ。こうやって季節は移ろう。

261 雲の峰

雲の峰大陸に秋の高気圧が出来てゆっくりやって来ている。お盆が過ぎるといつもは秋の気配なのだが、今年の太平洋の高気圧もまだ絶大な勢力をもっていて、閉塞前線下の北海道は実に不安定な状態だ。今日は各地で雷雲が発達し、驟雨を伴って北の大地を南西から北東へ移動している。画像の雲の峰の下は支笏湖あたり。ビート畑の向こう、とんがり屋根は小学校でその裏山を越えると洞爺湖だ。今年の夏空は今日で「止めを刺す」か。

260 アブの夏

ヤマトアブこの町には川や牧場があって、ガラス窓に音を立ててよくアブがぶつかる。これはヤマトアブか。昆虫のハエ目に分類され、ハエ、アブ、カ、ブユは同じグループだ。この連中、本来あるべき四枚の翅は二枚となり、あとは飛翔時にバランスをとる平均棍となっている。日焼けの肌に瞬時にサクリと小刀状の口器で傷を付け、血を舐め取る巧みさは実に野生的だ。叩かれてコロリと落ちるいさぎよさも夏の思い出。

259 カシワマイマイ

カシワマイマイマイマイガ(舞舞蛾)の近縁種カシワマイマイ。近所の桜の木に見事に群がっていた。北海道だけではなく日本各地で大量発生している。頭部や脚のスカーレット色が目立つ。右下の個体は♂で櫛状の触角をもつ。このグループ、広葉樹のみならず針葉樹や草本にいたるまで何でも食い荒らす広食性で知られる。大量発生はウイルスの蔓延によって終焉に向かうと言う。自然のシステムは不可思議かつ良くできている。

258 有珠山夜祭り

有珠山山頂夜祭恒例となったお盆休みの頃のロープウェイ山頂駅展望台での夜祭り。暮れゆく空の峨々とした稜線といくつもの岩塔が影となって、生きている火山を楽しめる。ここからは洞爺湖、中島の向こうに羊蹄山、足もとの昭和新山と壮瞥の街並みが夕闇の中に浮かび上がる。夜の森探険、星空ガイドなど家族連れには好評だ。ジオパークピザの売れ行きも好調。さまざまなシーンを通して火山の魅力を楽しみ、火の山を理解するのもジオパークの眼目の一つだ。

257 紅の主(くれないのあるじ)

ニホンアマガエル紅いスイスチャードの芯に居座ったアマガエル。紅い世界の玉座に着いた。スイスチャードは野菜だが食品としてはまだ一般的でなく、日本人の口にはイマイチだ。私はもっぱら寄せ植えに使う。茎と葉の壮健さはコリウスと合わせると他を威圧してはばからない。アマガエルも見る目が高い。そこから見上げる世界はいかに。

256 濡れ烏

濡れ烏大雨となった日、家の前を流れる泥水を背に、ここにテリトリーをもつ5歳のハシボソガラスの雄。しとどに濡れ、胸の分け目に白い羽毛が見えている。いつもの精悍さも消え失せて空腹で、これでは重くって飛ぶこともかなわない。元気を出せよ。髪は烏の濡れ羽色。紫や青緑の干渉色の浮かぶ艶やかな女性の黒髪の褒め言葉だ。豪雨も当たり前が自然の成り行き。雨が止んだら洗い髪に浴衣姿で出ておいで。