冷たい風を避けて南斜面を歩き、葉を落とした樹々を訪ねる。陽だまりにはすでに光の春がやって来ている。芽が動くにはもう少し時間が必要だが、やがて来る春を探すにはよい時期だ。ヒツジの顔で知られるオニグルミ、針で武装したハリギリ、タラはまだ芽がかたい。トチは樹液を滲ませて展開を待つ。ニワウルシはサフォーク種のヒツジに見える。クズはナマケモノの顔にもお下げの童女にも見えるのだが、、。
472 男前だぜ
471 天晴れ羊蹄
470 卵だけ
469 樹林に暮らす
468 変わらぬ風景
室蘭半島は先端の地名から絵鞆半島と呼ばれた。エトモとはエンルム(enrumu=岬)によるという。半島の南面は500~300万年前の海底火山の噴出物が堆積した室蘭層と、それを突き抜けた岩脈で構成された100m程の断崖となっている。小さな岬で仕切られた砂浜や入り江が数多くあり、アイヌ地名と逸話が残されていたが岬は削られ砂浜は埋められて古の姿は残り少ない。写真の右の岩はローソク岩でアイヌ名は残っていない。左は岩脈が海に取り残された岩で白く見えるのは雪ではなくカモメの糞。マスイチ(マスイ・チセ=カモメ・家)の語源となった岩であり岩の近くには海蝕洞がある。この浜には降りて行くことができ、人の手の入っていない時代の絵鞆半島に出会える。
手前の断崖の先にも大きな洞窟が口を開けているが、西側の別な浜から岩伝いに行くしか方法がない。この洞窟こそ、白鳥湾(=室蘭港)側のトキカルモイあたりに有ったという「アフンルパロ」からつながり、太平洋側にもあるといわれた伝説の「アフンルパロ」ではないかと私は思っている。
467 タラを打つ
室蘭市の太平洋に面した漁港近くの住宅地で、男がハンマーで何かを打っている。思い当たる節があって、車を停め「懐かしい風景ですね、昔はよく見たね。スルメなんかも」と言ったら、「俺たちはいつもこうだ」という。歩道の縁に腰掛け「タラを打ち」を続け、立ち上がりながら二本差し出し、「うまいぞ」「掃除はしないんだ、あとはカラスが食う」と言って家に入っていった。
日曜日の午後三時、明日は時化模様。これからタラとマヨネーズと唐辛子で焼酎か。ご近所付き合いしたいですね。 近くのどの家の軒下にも、スケソウダラが寒風に揺れている。帰りの車の中の、叩かれて幾倍にも膨れ上がったむき出しのタラからは、凝縮されていた旨みがハンマーの力で弾けとび、肺の腑、胃の腑まで滲みこんでくる。
465 ホザキヤドリギ
ホザキヤドリギ(ヤドリギ科ホザキヤドリギ属) Loranthus Tanakae Fr. et Sav.
冬季、落葉広葉樹林の葉が落ちると、それまで隠れていたいろいろなものが見えるようになる。カラスの巣と見間違うほどの葉を茂らせたヤドリギが目につくのもそうだ。そして今回は、洞爺湖畔の高木にホザキヤドリギの黄金色の房状の実を見つけた。同じ樹にはアカミノヤドリギの実と葉も見える。なんということだ。これまではまったく気が付かなかった。いつもその下を通っていたのに。本州中部から東北地方までの分布という。この付近のデータが見つからない。物知りの自然観察のプロも初めてだという。冬には冬の発見と悦びがある。