893 トガリアミガサタケ

トガリアミガサタケサクランボウの樹の下に溜まっていた落ち葉を持ち上げて、今年もこのキノコは忘れずに顔を出してくれた。二つに割り乾燥させると一段とこくと香りが強くなる。年に一度の春祝いの一品、今年のメニューはどうしようか。去年のアーリオ・オーリオのシンプルパスタは旨かった。鶏肉のキッシュを作ろうか。いや鶏肉を使うならクリーム煮もいい。一緒の野菜は裏庭自生のアスパラか。

886 水辺の緑

春の水辺河原に春を探しに出かけた。林道の先、長流川に注ぎこむ小さな流れに緑の群集を見つけた。湿った土の匂いがする。蘚類や牧草の若芽、それに混じってフキの薹と柔かく小さなフキの葉。セリも見つけた。風も遮られ、爆ぜるような水の音。ハクセキレイの声も聞こえる。窓辺から雪の残る山を眺めていると眠くなる。気分を変えて、こうやって出かけると自分の春に出会える。

884 剪定作業が終わった

リンゴの剪定3月中に整枝・剪定の作業を終えることができた。順調だ。切り口の消毒パテも塗り終えた。リンゴとサクランボウなど合わせて40本の果樹。有珠山の雪がなくなり、カッコウの声が聞こえてくると、遅霜の心配がなくなる。それまで野草の軟らかな芽や小さな花を楽しみ、空にはヒバリ。今年はカミナリシギはやってくるだろうか。爆発するように盛大な北国の春本番を待つのが4月だ。

867 オオチカ

オオチカ子どもの頃、室蘭の港でチカを釣った。悴む手で、指先くらいのが30尾余り。上手い人は80尾も釣って「オオチカ」も混ざっていた。えさはタマキビの心臓(赤い口球=歯舌嚢)のチョン掛け一匹釣り。今全盛のサビキ釣りよりはるかに面白かった。昨日街で新鮮な20㎝もあるオオチカを買い、塩で一晩締めて、まだ春浅い梅の木に干した。チカ、キュウリウオのナマの匂いが大好きだ。

866 リンゴはえらい

リンゴの光芒

10月末に収穫した「ジョナゴールド」「早生フジ」を氷点近い地下室から食卓へ。四か月たって水分が抜けて皺皴になってはいるが、甘さも香りも充分残り、色を失わずに旨そうな光芒を放っている。 もぎ取った時の鮮烈な香り、弾ける食感こそなくなったが、このくらい齢をとると角も主張もうまくとれてしまって、口中に美味しさが素直に広がり、そのまま心に馴染んでゆく。 リンゴを植えていてよかった、と心からそう思う。

850 タンネシラル

タンネシラル室蘭、タンネシラル。アイヌ語では長い磯(知里真志保・山田秀三、1960)。半世紀以上前、私はこの崖地をましらのように走り回り、この海を潜りに潜った。岩肌に残るタフォニからは時の流れを、潮間帯の岩棚とその先の深みへの落ち込みからは海中の生き物たちの姿を学んだ。昔は「ハカショ」と言ったが意味はわからない。中学から高校時代、この磯での思いはつきない。

847 北の燻製

北国の燻製北海道産の食材(ウインナー以外)をスモーキング。電熱ヒータの助けをかり、サクラ材チップで2時間半燻製。気温は4℃。庫内の温度は60℃位が適温だが72℃まで上がり、プロセスチーズは少し垂れたが、格別の美味。魚は一夜干しをオーブンで110℃30分予備加熱。ナメタガレイは一級品の味。ソウハチガレイも美味しい。乾したスケトウダラは塩味が薄いうえスカスカの食味。

841 エゾシカの燻製

エゾシカ燻製ワナ猟で捕獲されたシカ肉を、玉葱、唐辛子、天日塩、黒砂糖、スパイスで作ったソミュール液に漬けこみ、塩抜きをして風乾した。野生動物の肉は衛生上加熱しなければならないが、時は冬、熱燻は面倒なのでオーブンで110℃1時間加熱し、その後65℃で2時間半、サクラのチップで温燻。良い色に仕上がった。旨いぞ、純地元のジビエ。大地の味、吹く風の匂いがする。ジンが進む。

 

840 サクランボウの短枝

サクランボウの短枝3月の大風で果樹の枝先は痛めつけられ、6月までの低温でサクランボウはダメだった。9月の台風ではリンゴがやられた。でもモモは大豊作(といっても2本だが)で、スズメバチもこなかった。ブドウの出来もよかった。裏庭の20本のリンゴと10本のサクランボウ。自然は糾える縄だという。来年は良い年だろう。サクランボウの短枝は弾けるほどに充実し、開花、結実を待っている。

832 野生のいのち

マダニワナ猟で捕獲したエゾシカの解体をする人から、朝捕りの3歳のシカのまだ温かい前脚1本を頂いてきた。黒曜石や珪質頁岩が刃物としてどのように役立つかを確かめるためだ。仲間と協力して皮を剥ぎ、皮から肉や脂肪を取り去った。石器は非常に有効だった。仕事が進んだ時、毛皮からマダニが出てきた。気が付くと大小数十匹、いやもっといたかも知れない。野生とはこういうものだ。