210 胡瓜魚

キュウリウオ字面からはどんな魚が想像できるだろうか。私の好きなキュウリウオ。理由は新鮮なきゅうりの匂いがするから。生臭く青臭いこの匂いが大好き。しかし野菜のキュウリは大っ嫌い。900円で3パック15匹を買ってきた。長さ30㎝の優れもの。部屋中にきゅうりの匂いを充満させながら一夜干しを作る。これがまた旨いのなんのって。淡白で味わいがあり、白身の香ばしさは、あヽ、、クラクラする。アイヌ語で「フラルイチェプ」は匂いの強い魚の意。ここの海の至宝。

209 此処ならば

アルトリの磯向こうに残雪の有珠山が望まれる。ここアルトリ岬は7000年ほど前、有珠山の山体崩壊で流れ下って海へ突き出した流れ山だ。有珠山を構成していた岩石はここよりはるか沖合まで流れ落ち、海底の岩礁を作り潮間帯では磯となった。岩礁は海藻を育て多様な生きものたちを育んできた。近くに伏流水の泉もある。マガキとフノリのおいしい感触が手に伝わる。ここでならば縄文の昔、私もなんとか暮らせる、と思った。どのような生活だったのだろう。

208 タマキビの春

タマキビ水温はまだ低いが、光は水のうちそとに溢れ、動き回る生き物たちの餌となる海藻の繁茂も充分で、引潮の砂浜ではタマキビが活動しはじめた。何を思い起こしたのか、一つ伸びをして、どちらかへお出かけだ。アルトリの岬にはこの外にクロタマキビが分布している。小さくて日常的には食用にはならないが不味くはない。個体数はとても多い。いざという時には救慌食として人の命をつないで来たのであろう。

206 美味しい黴

シイタケ食べるという行為、口で咀嚼し消化管で吸収、そして体外へ排泄。だが、口から肛門までは身体の外。身体の内側にある外界。動物なる我々はこの内なる体外を通して、必要とするあらゆる物を消化し取り込む。植物を食べる。植物を食べた動物を食べる。植物を食べた動物を食べた動物を食べる。それらの中で、植物でも動物でもない最も異端な食物がこれ、菌類。美しく若いシイタケ。美味しいけれど変な食べ物です。

205 世界一呑気な鱈

「鱈」世界を変えた魚の歴史一本100円で乾して冷凍したスケトウタラが売っていた。家族分の夕餉の一品となった。マダラの乾燥品も一般的だ。手をかけて作る芋棒も旨い。上出来な卵巣の塩漬けも自作する。そしてある日、マーク・カーランスキーの「鱈」を読んだ。世界のいくつもの国々が鱈で救われ、鱈で成り立った事実がそこにあった。カナダ、イギリス、オランダ、ポルトガルもタラで戦い、タラで救われた。カリブ海諸国の奴隷制の陰には暗澹たる食としての塩鱈が関わっている。アイスランドでは農作物は作れず、タラで建国するために領海を命がけで3海里を獲得し、4海里、12海里、50海里、200海里へ拡大しながらと国の存亡をかけ、英、独との激しいタラ戦争を経て列強と対峙した。読み終わっていろいろ考えた。タラは世界中で激減している。日本はその現状に実に呑気だ。

204 純正キノコ鍋

純正キノコ鍋白老町で天然物のキノコ15種類の鍋を食べさせる店があるとのことで、キノコの会のメンバー打ち揃って出かけた。いまはシーズンオフで、いずれも昨年店主が自ら採取して保存した物が提供される。しかし味は勿論、香り、食感、色どれをとっても新鮮さを失っていない。化学調味料大サービスのキノコ汁キノコ鍋、あまた喧伝されるその中でこれぞ正真正銘、天然キノコ鍋。特にムラサキシメジの昨日採ったようにも見えるやつ。これはひときわ旨かったね。

201 原発は要らねえ

エゾバカガイ室蘭のイタンキの砂浜に、エゾバカガイの片ひらが落ちていた。清浄無垢な鳴り砂の浜。私はこの美味しい貝が好きです。軟らかく煮たワカメと和えたヌタが好きです。

大好きな作家、中村和恵さんの「地上の飯」に、ロック歌手忌野清志郎のアルバム発行に東芝EMIが圧力をかけた経緯が書かれていた。忌野清志郎は死んでしまったが、彼の歌「人気のないところでおよいだら 原子力発電所が立っていた さっぱりわかんねえ なんのため 狭い日本のサマータイムブルース」「それでもテレビは言っている 日本の原発は安全です さっぱりわかんねえ 根拠がねえ!」は生きている。1988年の歌だ。彼はいまでも歌い続けている。「放射能は要らねえ 牛乳を飲みてえ」「電力は余ってる いらねえ もういらねえ」

198 リンゴの目覚め

リンゴ園 東北、北海道は今年、大雪の話題で持ちきりだ。だが私の住む町、壮瞥はこの通り50cm位の積雪で、いつもとさほど変わり無い。この果樹園、左から右へ4列はリンゴ右はサクランボウ。果物の町壮瞥はこのような果樹園がたくさんある。3月に入り、雪が締まって来ると枝打ち、剪定作業が始まる。4月半ばにはすべて終え、新芽を迎える。

194 寒中の冷燻

サクラマス、ヒメマス、ベーコンのスモーク この時期はサクラマスの季節。室蘭沖でよい型が上がっている。60cm位のが一尾五、六百円だ。洞爺湖産の立派な冷凍ヒメマスも入手出来たので、ともにフィレにしソミュール液に漬け、風乾して冷燻にする。夏の冷燻は無理だが今の-3℃での30℃前後での温度管理はこれまた難しい。最下段に置いたこの地方自慢の豚肉は冷燻終了後、そのまま温燻に移行しベーコンとする。これらは明後日の昭和新山国際雪合戦会場で提供されるピザに使われる。

191 あられ氷・真砂仕立て

洞爺湖岸の氷  明け方にかけ、毎朝きまって-10℃前後に冷え込む洞爺湖畔。砂粒を閉じ込めて凍りついた氷を見つけた。透明無垢、清冽な水が、強い風の下で飛沫とともに砂の粒子を巻き込みながら、瞬時に凝結したのであろう。天然の純正な素材が、妥協ぬきの過酷な経過の中で作り上げた冬のデザートの逸品。真実の味を求める御諸賢、寒気と水と岩石の味を賞味あれ。