251 ジューンベリー

ジューンベリー灌木の苗を探して辿り着いたのがこの樹。名前に惹かれ、味も楽しめると言うので植えて、翌年の収穫がこのとおり。穏やかな酸味と旨味を備えた甘さは私好みで、この賜り物は見事な赤紫のジャムと相成った。バラ科には珍しい白く細長い花弁をしていて、冷たい風に振るえる様はひよわ気に見えるが、鮮やかな緑にうつる熟し切った色は格段に個性的だ。飾らない、か弱さの中から滲み出る存在感。

245 棲み分けて

潮間帯秘境の駅「小幌」下車、小幌洞窟遺跡と自然を探る観察会に参加した。みどり香る初夏の小幌海岸、大潮の海は水位が下がっていて、潮間帯の観察にはもってこいの一日となった。潮間帯上部のムラサキインコ、その下部のイガイのすみ分けラインがとてもはっきりしていて、それに伴って生育する生物群集がよくわかる。潮上帯、飛沫帯の生きもの達、潮下帯のワカメ、コンブなどの褐藻類も含め、海の生きものの世界でもここは秘境である。

237 カパチェプ (ヒメマス)

ヒメマス紅サケの湖沼残留型。アイヌ語でkapa=薄い、cep=魚。今季解禁を迎え、最初の網にかかったもので、40cmを優に超す洞爺湖では最大クラス。脂の乗った堂々たる体躯をご覧あれ。スモークサーモンに試作してくださいと預かったもので、身は紅く色付いて、その味はかるく融けるようで、しかもしっかりとしたその滋味は他の種の追従を許さない。ソミュール液に漬け、6月の風に干し、まだ気温が低いのでゆっくりと冷燻にする。

236 秘密の花園

豊かな磯室蘭の外海の海岸線は地形にしても生物の棲家としても実に多様で、植物、動物の種類も豊かだ。まさしく豊饒の海である。だが残念なことに、人の手が入るとたちどころにコンクリートで埋め立てられ波消しブロックが入り、おまけに育苗、栽培漁業と銘打って味気ない海に変容する。自然の磯や浅海が生態系を支えるもっとも優れた揺籃の場だというのに。じり貧の海が迫る。

227 キノコの気もち

トガリアミガサタケスイセンが咲き始めたので、例年のようにサクランボウの樹の下でアミガサタケを探した。狙いは見事に外れ、今年は台所の脇で10個見つかった。なぜ発生場所が変わったのか、キノコが何を考えているかは判らない。大体にして地中の暗くカビ臭い世界のことだ。しかし、乾燥させると見事に香りの高い「セップ」となる。食べ方は良く知っている。クリームにもバターにも、鶏肉にもよく合う。生食は毒。

223 梅干

梅干し知人宅へ自家製の梅干しを送った。2010年収穫の3年物だ。器量は良くないが味に深みが出ていて、この辺りが一番美味しいかな。10年前、当地へ越して来た時に頂いた「豊後」の古木。5月の半ばサクラと一緒に咲いて、8月初旬に収穫、1ヶ月漬けて9月の晴天を選んで2、3日干す。ほんのり色付いたのを地下室で1、2年熟成させる。一般に、北海道では収穫の遅れからか、干さずに「梅漬け」として食べるようだ。

217 フキノトウ

フキノトウフキノトウが開いている。その向こうは雪の下で倒れていた麦の茎が陽を受けて続き、遠景は有珠山と昭和新山。風は軟らかく、枯れ草と土の匂いがする。三月そして四月、雪の下で待ちに待っていた生きものたちが一斉に蘇る。どこかでヒバリの声がする。懐かしい緑の季節の到来だ。ここは伊達市から壮瞥の立香へ続く丘陵、有珠山、昭和新山を見渡すには第一級の場所だ。

216 剪定作業

剪定作業必須アイテム我家のサクランボウとリンゴの選定作業が始まった。合わせて30本の内、半数は太い樹なので脚立に上っての作業となる。晴れ、時折吹雪、風あり、気温は10℃くらい。毎年のことだ。残りの作業はブドウ、プラム類とハスカップ、ラズベリーなどの低木で気が楽だ。近くの専業果樹園さんはあらかた作業を終えている。あとひと月ほどでこの町は、大地も樹木もとり囲む山々も、すべてが花でおおわれる。

213 海からのおくりもの

イガイスーパーで手ごろな大きさのふくよかなイガイ、7個入って398円。春は海からやってくる。ラベルには昔からの「ひより貝」と表示されていた。標準和名は「イガイ」で、老成した個体では十数㎝となる。北方種の「エゾイガイ」さらに大きくなり、ヨーロッパ原産の通称ムール貝(一般的にはムラサキイガイを指す)は一回り小さい。白ワインで蒸したが、味は濃厚で海の香りが口いっぱいに広がる。一つの貝から何と小さな真珠が7個も出てきた。春から縁起がいいね。

212 約束

フクジュソウ今年も咲いてくれました。フクジュソウです。信義を守り、申し合わせ通りにリンゴの樹の下で一杯に花弁を開いています。陽光のエネルギーをとらえ、パラボナ集光器でアロマを気化させては、この時期少ない虫たちの眠っていた嗅覚を呼び起こすシステムをここで見つけました。あと一週間もするとクロッカスが、すぐプリムラがあとを追って、そうするとこれまた約束通り、トガリアミガサタケの収穫だ。忙しくなるぞ。