151 往く秋に

アカゲラ コンと小さな音がして、ガラス越しに下を見たらアカゲラが落ちていた。ガラスに映る碧い空を飛ぼうとしての、突然の衝突事故。そーっと静かにしていれば起き上がって事なきを得る場合もあるのだが、今回はそのまま動かなかった。可哀そうなことをした。秋も深まって黄金色のギボウシの葉の上、赤い飾り羽の小粋な姿がつらく切ない。また一つ、いのちを乗せて秋はいってしまう。

147 釣りの情景

釣りする人々 日本全土で四季折々、釣りごころある老若男女が釣りに呆けける。いや釣果で糊口を凌いでいるのかもしれない。北海道室蘭の港。ここではワカサギの10倍も質量のある「チカ」と言う、旨い魚を釣る。「唐揚げだけさ」と謙遜するけれどその香ばしい味はなかなか。三枚にし干して炙って食すれば、キスの旨さをも凌ぐ濃厚な旨味が戻り香となって鼻孔に伝わる。釣人はそんなことなど考えず、一心に釣りをする。今日は南の強い風。北国の和みの一日。

146 黴の花

ベニテングタケ ひとはベニテングタケと呼ぶけれど、本来は Amanita muscaria というカビ。日本のみならずヨーロッパ、北アメリカ、今では全世界的に蔓延している担子菌類だ。世界中の暗く湿った土の中で、針葉樹や広葉樹の根に絡みついて共生する菌根菌である。しかしキノコはカビの花、地表に現れた表向きの顔。だがこの面構えを見よ。それは胞子を風にのせ終えて、まだ立ちつくす強面な野伏せり。ぼろぼろになりながら急流に朽ち果てる雄鮭に似てないか。

145 秋日和そして冬

秋日和 色付き始めた有珠山山麓の広葉樹。ナナカマド、カエデ、カンバ類。中ほどの山は洞爺湖中央に浮かぶ中島の西山(454m)だ。洞爺湖カルデラの広大な台地の向こうに羊蹄山(1892m)が裾野を広げている。秋と冬が混在した風景。北海道の自然は本州中部でいえばプラス1000mの気候と言われる。頂きの冠雪は徐々に麓に降り、樹々は葉を落とし、かくして北の自然は順次時を進ませて、ひと月もするとやがて冬を迎える。

142 森からの頂き物

タマゴタケ 手ごろな大きさのタマゴタケを採った。トドマツと広葉樹の混交林。幼菌は白い卵形のツボを持ち軸は橙色、カサはことさら赤い。Amanita hemibapha の種小名は“半分染めた”の意味。ヨーロッパ産は A. caesarea と言う別種で帝王シーザーの名を持つ。 美味なキノコとして有名だが、Amanita属にはよく似ている過激な毒菌もあって判別が難しく、安易に食べてはいけない。

140 母なる懐

虹の彼方に 長く暑かった夏の余韻なのか秋が遅れ、いつもなら見事な紅葉のはずなのだが洞爺湖中島の色付きは少し物足りない。と、思いながら帰路の観光船の船尾にいたら、淡い通り雨の直後、一瞬明るくなった中島を背景に見事な虹が出た。自然が見せてくれる一発芸。自然は心を委ねるとふっと懐を開き、私たちにそのすべてを惜しげもなく与えてくれる。私たちの心の隙間を軟らかい何かでいっぱいに満たしてくれる。

137 分布は北満、樺太、北海道

チョウセンゴミシ チョウセンゴミシは日本薬局方にも載っている古くから知られた生薬だ。五味子とは含まれる甘味・酸味・辛味・塩(鹹)味・苦味に由来すると言う。秋の日の午後、長流川の上流で以前に見つけておいた株を友人を伴って見に行った。数年前から「ぜひ案内しよう」と約束していた場所だ。瀬音のする山合いに夕闇の迫る頃、ほのかに赤く色付いた幾つかの房に再会。ウスリーの作家、バイコフを教えてくれた旧友との約束がこれで果たせたというものだ。

134 いにしえの味

モチキビ 秋の楽しみの一つはこのトウモロコシ。ブルーブラックのインクがしみこんだような「モチキビ」。ホロホロと粒が締まっていて食べやすく、歯に纏いつく感触とほのかな甘みが何とも言えない。豊かな旨さがあるのだ。親指の腹全部を使って横もぎをすると芋虫のような形になって掌に転がる。黄色で軟らかく甘さを誇るだけの今のは私にとって全然ダメ。甘けりゃいいというものではない。糖度を競う甘いだけで青臭さのないトマトも同類だ。「昔はよかったね~」。

133 野生の香り

カラハナソウ 収穫を終えて乾燥中のアズキの畑を見に出かけたらこの通り風にそよぐホップの野生種カラハナソウのつるを見つけた。アズキ畑の向こうは壮瞥の町。栽培種のものとは違うというが、なんとなく気になる存在だ。農文協の「趣味の酒作り」には野生のホップの雌花を使うと載っていた。ビールに芳香と爽快な苦み、雑菌の繁殖を抑え、泡立ちを良くするという。いいとこ尽くめだがそう簡単にはいかないだろう。含まれる天然酵母を利用してドブロクを作ろうか。

132 ポルチーニ!

ポルチーニ とうとう今年最初物のポルチーニ、ヤマドリタケ。いつものお目当ての場所だが暑さが続いたせいか出現は遅かった。画像手前のは直径20cm位の堂々としたもので虫食いなし。厚くスライスしてバターでこんがり。焦げ目がサクッと歯触り良く、ナッツの香りがして思わず膝を打つ旨さ。残ったのは明日、やっぱりパスタだろうな。たっぷりとオリーブの実とバジリコを使って。でもね、実によく似たドクヤマドリが気がかりなのだよ、諸兄。