401  夏はハンモックで

ギンモンハモグリガ庭の果樹の面倒をおざなりにしていたら、リンゴに枯れた葉が目立った。近くの葉の裏には細長い繭がいくつもついている。幾本かの太く束ねた糸に支えられて繭が浮いている。針の先ほどの「みどりご」はここで蛹として仮の眠りをし成虫へと羽化する。成虫の翅の紋も透けている。成虫は樹皮の襞などで長い冬を耐えに耐え、来年また子を産む。「ギンモンハモグリガ」がこの虫の名前。葉肉のみを食害するそうだ。

400   目先の日々

ニホンアマガエル痩せたアマガエルがガラスの向こうを這い上がってゆく。雨脚はやっと遠のいて、いま、こいつは何を考えているのだろうか。登りつめると何があるというのか。何かのきっかけで登り始めた垂直面。次に続く時間を彼は知らない。手足を順序に従って前へ送る。明日のことは考えたことも無い。

398  したたかなマメ

クズクズの花が盛りだ。ヤマブドウ、サルナシ(コクワ)、ツルアジサイ、ツタウルシなどと同じように林縁を被うマント群落を構成する。この地域ではクズの蔓延りようは急激で目に余るものがある。火山堆積物を説明するジオサイトも我々がクズバスターとなってクズを退治しなければならない。縄文の昔からの葛粉や葛布を作り家畜の餌とし漢方薬にまで多用した多彩な文化は蝦夷地にはまだないが、この花の「ファンタグレープ」の香りにはなぜか惹きつけられる。

397  蚕食された四十三山

四十三山先日、マイスター仲間のI氏から四十三山(よそみやま=明治43年に噴火、隆起した)周辺にマイマイガが発生しているとの情報があった。それはこの画像のちょうど向こう側。盛夏、緑に覆われているはずの四十三山が食害にあって白っぽく色が抜け落ちて見える。ほとんどがドロノキで、この時期、本来なら雌の樹の綿毛をつけた朔果が見事なのだが、襤褸布が裸木に引っかかっているようで実に貧相で可哀そうな限りだ。

395 この100年と次の100年

白鳥大橋展望広場公園室蘭、祝津(シュクズシ)の海水浴場跡へ出かけた。いまでは「足湯」ほどの水遊び場しか市民に残されていない。近代的な白鳥大橋を得た半面、失ったものも多い。遠浅の砂浜で「シクトッ」と呼ばれていた100年前、橋脚の向うの円い丘は草原で繋がった陸繋島だった。港の開かれたトキカルモイ(チカの入江)からオハシナイ(幣場の川)を通り、ポロシレト(大岬)のアルトル(向う方)の岬だった。先住民の祀り事の場だったと聞く。「白鳥大橋展望広場公園」という荒れた公園。コンクリートと鉄の100年持たない橋が白く光っている。

394  一緒に朝食を

ヨツボシケシキスイ朝食は庭でとる。庭食という。パンとコーヒーとサラダくらいの簡単なものだが有珠山を眺めながらゆっくり食べる。バナナをフォークに突き刺した時、黒い小さな甲虫がとまった。背の樺色の紋と触角から始めキノコムシ?と思ったが、いや「ケシキスイ」と瞬間的に思い直し調べたらヨツボシケシキスイ。林の樹液に集まる常連だ。私の好きなよく熟してテロテロになったバナナを発酵した樹液と勘違いしたらしい。

393  いのちのゆくえ

エゾマイマイカブリ遊びに来ていた2歳半の孫が裏庭でエゾマイマイカブリを見つけた。好奇心にきらきら輝くその眼はすぐに不思議なものを見つけ出す。この濃緑に輝く長い胸を持つオサムシはもうからからに乾いていて、手にした瞬間に二つに分かれた。この精巧で美しい生きものの中身はどこへ消えたのだろう。溶けた中身は地に吸われたか。なにを養ったか。なにに生まれ変わったか。72歳半の私はそのあたり、考え込んでしまう。

392 種間競争なのか

ハシブトガラスの親子ハシブトガラスの親子が家の芝生にきている。この数年、ハシブトが以前からいたハシボソと諍っていたが、何が起こったのだろう。両種間の巣が近い場合、ハシボソの育雛成功率は落ちるという (吉田保志子・百瀬浩 )。今年、ここにテリトリーを持つハシボソの育雛は失敗した(ブログ377、言葉も少なく)。営巣期以外では二種は混棲しているのだが、来年の春からのテリトリーやホームレンジの在り方が気になる。

391  PM2.5 浮遊粒子状物質

 PM2.5昨日から有珠山が霞んでいる。PM2.5だという。気象協会のHPの分布図を見ると、着色された部分が中国中央部、満州、ハバロフスク地方、北海道へ連なっている。今日の札幌での値は通常時の約7倍だという。50年前の札幌の冬はスモッグで閉ざされた劣悪な環境だった、と思い起こしていたら、気象庁の発表ではシベリアの大規模な森林火災によるものだという。いわれてみれば、すこし焚き火の煙のにおいがする。

390  嬉しい紅白

ユスラウメユスラウメの花が好きで、それとあの深紅で鈴なりに生る実が好きで、2本別々にネットで購入したら、嬉しいことに片方は白実のユスラウメだった。こんな間違いも有るのだ。今思い返しても愉快になる。人生捨てたものではない。ほのかな甘みとほのかな酸味。酸っぱいのが苦手な私には丁度良い。そのままも美味しいが何にしようか。サクランボの種抜きで種を抜いて紅白織り交ぜてゼリー寄せ、いや夏だから葉をあしらって和風に寒天寄せか。