992 春を待つ

ピクルスかつて、冬を越すには漬物が必須だった。乱切りのダイコンに身欠きニシン、トウガラシの赤い色の冴えたニシン漬け。樽に張った氷をかき分けながら食べたっけ。今では、旬の旨さは別として、新鮮な野菜が何処にいても手に入る。漬物ではないが、さっぱりとした食卓での楽しみの一品にピクルスを作った。裏庭のトウガラシ以外は市販のハウス物。

やがて来る、樹の芽、山菜の季節が楽しみだ。蕗の薹、タラの芽、ウド、コゴミ、ヨブスマソウ。みんな美味しい。今年はコシアブラを見つけよう。ヤブマメも掘りださなくっては。早春のキノコ、エノキタケは見つかるか。いそがしくなるね。

991 冬を釣る

洞爺湖で釣る冷えた朝、洞爺湖北岸。シカの足跡をたどって湖岸に下りた。澄んだ大気の中、中島が近く見える。風はない。水際の浅い雪をたどると遠くに釣り人の影が見えた。フライを振っている。遠見だけれど、釣れたのかそうでないのか。そんなことではない。ここでは水の冷たさも時間もすべて止まっていて、この瞬間だけが真実だ。この風景だけを釣果として満ち足りて帰路につけるだろう。

990 キムンドの湯

 キムンドの湯洞爺湖の北湖畔、仲洞爺キャンプ場にあるブロンズ像。湖畔には58基の彫刻が野外展示され、野外彫刻公園となっている。有珠山を対岸に湖岸のキャンプ場は完備されたサイトで人気があり、浴場の「キムンドの家」では温泉が楽しめる。この2人の像は温泉の裏手にあり、湯でほてった体を冷やしているかのようだ。広い背中は開拓民なのだろう。背中側がそのままサイトと湖畔だ。

988 旅の終章

旅の終焉豊浦町の貫気別(ぬきべつ)川河口でハシボソガラス、オオセグロカモメが鮭の朽ちた骸を啄んでいる。オジロワシも見える。流れには襤褸布のような魚体が引っかかって揺らめいている。この川で孵化し、北太平洋を回遊してきた強者達の終章がこの一幕だ。故郷へ帰って産卵し、鳥たちに食われ、土へと還る。この川の上流にはインディアン水車もある。いのちの輪廻が見える。

985 シカ散策路・火山遺構

火山遺構洞爺湖温泉街にある洞爺湖ビジターセンター・科学館の山側には「有くん火口」、「珠ちゃん火口」をめぐる2.2㎞のフットパス、金比羅山コースが整備されている。泥流の被害に遭った町営浴場と5階建てのアパートが保存展示されているが、コースは4月19日まで冬季閉鎖期間中だ。説明板のある堰堤の上から見る遊歩道の上はエゾシカの足跡でいっぱい。この数日のことだろう。

983 有珠山、今年から来年へ

今日の有珠山12月31日、晴。きのうの午後からの雪は夜半までゆっくり積もり、家の前からの見慣れた有珠山。美しい雪景色だ。山の左手向こうは噴火湾、右は洞爺湖。この風景が気にいって15年前にここへやってきた。山は今年も静穏だった。来年のことはわからない。次の一年もまた52名の火山マイスターの一人として、この火山とその自然の成り行きを見守ることになる。

982 新雪有珠山

新雪有珠山新雪を得て午後の陽に映え、上長和の集落の上に鎮座する有珠山山頂。1977年、2000年噴火を経て山の形、住む人の世代は変わったが、当たり前にまた噴火するだろう。今年も余すところあと3日。この冬は、また来年はどうなのだろうか。平穏なこれからであってほしいが、山は答えてくれない。夏の緑に覆われた有珠山は優しく魅力的だが、新雪に輝くこの頂は崇高にさえ見える。

981 光るいのち

ニシンのうろこはるかむこうの銀河の光芒だろうか。これはニシンの鱗。すべての色を吸収しかつ反射し、私の指先で陽を照り返えす。近くの港に揚がり、俎板に残った直径10mm、数十枚の生臭い鱗だ。燦然と輝くミクロの虹の色。地の闇に輝くオパールにも似るがこれは命。人知れず、自らに発するいのちの輝き。無辺の海の暗闇にさんざめく燐光。美の神は細部に宿りたまひぬ。

980 ハナマメのマリネ

マナマメのマリネ我が町壮瞥では果ものの外に、美味しい豆類も作られる。代表はシロハナマメ。薄く甘くしてゆっくりと煮上げると3㎝以上に膨らむ。豆一粒で一口大。たっぷりとしたふくよかな大地の恵み。パプリカ、エリンギ、セロリ、インゲンとともに、穀物酢、白ワイン、砂糖、塩、スパイスにハーブ類を一煮立ちさせて冷やしたマリネ液に漬け込む。サラダの友、肉の付け合わせにぴったりだ。

979 ニシンの酢漬け

ニシンの酢漬けいいニシンを見つけ躊躇せず買った。一尾0,5kg、体長40㎝の立派な男振り。輝く鱗が残っている。機会を逃さず塩で締め、酢、塩、砂糖、玉ねぎ、人参、スパイス、ハーブで酢漬けにした。参考の北欧レシピでは young herring だが、この際たっぷりと戴こうではないか。白子は濃い味の醤油煮とし酒の肴に。写真の2匹はフィレにしてしっかり冷凍、二日後には刺身となる。旨いぞ。