981 光るいのち

ニシンのうろこはるかむこうの銀河の光芒だろうか。これはニシンの鱗。すべての色を吸収しかつ反射し、私の指先で陽を照り返えす。近くの港に揚がり、俎板に残った直径10mm、数十枚の生臭い鱗だ。燦然と輝くミクロの虹の色。地の闇に輝くオパールにも似るがこれは命。人知れず、自らに発するいのちの輝き。無辺の海の暗闇にさんざめく燐光。美の神は細部に宿りたまひぬ。