148 晩秋熔岩山(らばやま) 投稿日時: 2012年10月31日 投稿者: nizaemon 晩秋の嵐が去った後、色付いた屋根山の紅葉もあらかた飛んでしまっていて、灰色の梢の中に疎らに見えるだけだ。西からの風があるせいか東斜面の噴気はまっすぐに上がっている。雨が浸みこんだこと、湿度があること、そして気温が下がったことの三拍子があって、一段と元気そうな今日の昭和新山となった。逆光に照らされた水蒸気は盛んだった往年の山頂を思わせる。
145 秋日和そして冬 投稿日時: 2012年10月26日 投稿者: nizaemon 色付き始めた有珠山山麓の広葉樹。ナナカマド、カエデ、カンバ類。中ほどの山は洞爺湖中央に浮かぶ中島の西山(454m)だ。洞爺湖カルデラの広大な台地の向こうに羊蹄山(1892m)が裾野を広げている。秋と冬が混在した風景。北海道の自然は本州中部でいえばプラス1000mの気候と言われる。頂きの冠雪は徐々に麓に降り、樹々は葉を落とし、かくして北の自然は順次時を進ませて、ひと月もするとやがて冬を迎える。
144 忍者の樹 投稿日時: 2012年10月22日 投稿者: nizaemon 人が樹に?樹が人に?。自然はこれだから面白い。見る人によって樹に抱きついているのは、一人ならず3人まで増えるから不思議。4年ほど前に見つけたら、仲間の知恵者がが“忍者の樹”と命名してくれた。この樹の和名はごく普通のイタヤカエデ。幹に絶妙の襞が出来て忍びの者と間成った。自然の妙、というよりは人の心理の曖昧さ、都合のよさ加減からくるのであろう。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」。
143 火山の基本形 投稿日時: 2012年10月22日 投稿者: nizaemon 秋の中島、みごとな三角山、西山溶岩ドーム454m。湖面は海抜84mだから頂上まで371mを登ってたどり着く。5万年前に激しい噴火を繰り返しながらいくつもの山頂と島を作った。水との接触で出来た爆裂火口のマールも存在する。写真左手の桟橋岬(仮称)の左手の湖岸もマールだ。西山溶岩ドームは成長しながら岩塊を転げ落とし、火山特有な角度「安息角」を形成した。誰が見ても火山と分かるプロトタイプ。
141 名残の意匠 投稿日時: 2012年10月21日 投稿者: nizaemon 洞爺湖の中島で出会ったヤマシャクヤクの実。初夏、半日陰の林で出会う白く柔らかで大きな花弁は、庭の園芸種より幾倍も美しく感じる。過日の中島には、この花で埋め尽くされる場所があったそうだ。特徴のある花柱は袋果となって秋に裂開する。反り返ったマゼンタ色の袋果に載る濃紺の種子と、不稔の未熟種子のカーマインスカーレットのマッチングがひときわ眼を引く。末枯れてゆく季節の中に残された、暑かった夏の日の滲んだ血の一滴。
140 母なる懐 投稿日時: 2012年10月20日 投稿者: nizaemon 長く暑かった夏の余韻なのか秋が遅れ、いつもなら見事な紅葉のはずなのだが洞爺湖中島の色付きは少し物足りない。と、思いながら帰路の観光船の船尾にいたら、淡い通り雨の直後、一瞬明るくなった中島を背景に見事な虹が出た。自然が見せてくれる一発芸。自然は心を委ねるとふっと懐を開き、私たちにそのすべてを惜しげもなく与えてくれる。私たちの心の隙間を軟らかい何かでいっぱいに満たしてくれる。
139 キノコのお家 投稿日時: 2012年10月20日 投稿者: nizaemon 洞爺湖中島の博物館桟橋近く、土が流れてむき出しになった木の根の穴の中に、小さなキノコが肩を寄せ合ってうずくまっていた。これはキララタケ。若い個体はきらきら光る白い雲母片のような粉を付けていてこう呼ばれる。命短いヒトヨタケの一種。この島の植物は増えてしまったシカにやられて壊滅状態だ。このキノコ、シカの好みは知らないが、このシェルターの中なら安心だ。空っ腹のシカも可哀そうだが、逃げ込んだキノコも哀れ。
130 先史を釣る 投稿日時: 2012年9月24日 投稿者: nizaemon この小さな流れ込みは法的にはサケが遡上する川とは認められてはいないらしい。禁止区域の規制がないため、季節になるとサケとそれを狙う釣り人は毎年忘れずにこの川へ集まる。知里真志保・山田秀三「室蘭市のアイヌ語地名」(1960)にはチマイペッ・オッ・イ(焼乾鮭・多く・有る所)とある。小屋掛けして冬の食料を得た時代があったのだろう。水源は深い森にあるが河口の水量は少なく昔日の面影はない。遠く有珠山、昭和新山が望まれる。
129 南国の仇花(あだばな) 投稿日時: 2012年9月24日 投稿者: nizaemon ホテイアオイの花が咲いた。夏にはピータン甕を水蓮鉢に見立てて水を張り金魚屋からこの水草を買う。こんなに見事な花が咲いたのは初めてだ。よっぽど暑かった夏なのだ。もとは熱帯、亜熱帯の植物だが温暖化と人の手により生息域を広げ世界中で増えて環境を壊している。日本では関東地方まで北上中だ。よく似た植物で古来から知られたミズアオイが北海道でも可憐な青い花を咲かせるがこちらの花は日本中で激減している。撹乱と侵略の世界。
127 秋めいて 投稿日時: 2012年9月23日 投稿者: nizaemon 長かった暑い夏も、景色の中ではやっと秋の気配。昭和新山の煉瓦色のドーム下の屋根山には葉を落としたドロノキが浮き立つように良く見える。パイオニアツリーとして発芽し、60年経った今、一抱えもある大木に育った。無から始まって60年経った森は三松正夫の遺志のままにいよいよ深く、そして着実に遷移の道をたどっている。粗い火山灰の混じった手前の畑はハナマメの適地だ。隣の畑ではアズキが見事に実った。どちらも壮瞥町自慢の逸品。