260 アブの夏

ヤマトアブこの町には川や牧場があって、ガラス窓に音を立ててよくアブがぶつかる。これはヤマトアブか。昆虫のハエ目に分類され、ハエ、アブ、カ、ブユは同じグループだ。この連中、本来あるべき四枚の翅は二枚となり、あとは飛翔時にバランスをとる平均棍となっている。日焼けの肌に瞬時にサクリと小刀状の口器で傷を付け、血を舐め取る巧みさは実に野生的だ。叩かれてコロリと落ちるいさぎよさも夏の思い出。

258 有珠山夜祭り

有珠山山頂夜祭恒例となったお盆休みの頃のロープウェイ山頂駅展望台での夜祭り。暮れゆく空の峨々とした稜線といくつもの岩塔が影となって、生きている火山を楽しめる。ここからは洞爺湖、中島の向こうに羊蹄山、足もとの昭和新山と壮瞥の街並みが夕闇の中に浮かび上がる。夜の森探険、星空ガイドなど家族連れには好評だ。ジオパークピザの売れ行きも好調。さまざまなシーンを通して火山の魅力を楽しみ、火の山を理解するのもジオパークの眼目の一つだ。

256 濡れ烏

濡れ烏大雨となった日、家の前を流れる泥水を背に、ここにテリトリーをもつ5歳のハシボソガラスの雄。しとどに濡れ、胸の分け目に白い羽毛が見えている。いつもの精悍さも消え失せて空腹で、これでは重くって飛ぶこともかなわない。元気を出せよ。髪は烏の濡れ羽色。紫や青緑の干渉色の浮かぶ艶やかな女性の黒髪の褒め言葉だ。豪雨も当たり前が自然の成り行き。雨が止んだら洗い髪に浴衣姿で出ておいで。

255 北のハマユウ

ハマユウ数年前、室戸岬の砂浜で拾ったハマユウの種子が縁あって北の大地で花を付けています。昨年も咲いてくれましたが今年は一段と見事な花を付けました。夏季は外ですが、やはり寒さに弱く葉はすぐに寒冷障害が出ます。南国から連れてきたこの命、粗末にはできないね。いま茎の下部が直径20cm近くなりました。さらに大株になってきたらどうしよう。責任を感じるな~。

254 ジオパーク再審査

再審査洞爺湖有珠山世界ジオパークが誕生して、4年目、初めての再審査が行われた。GGNから派遣された審査員はニコラス・ゾウロス教授(ギリシャ)とホセ・ブリルハ教授(ポルトガル)。ヨーロッパは古い地質時代のジオパークが多いので、たかだか10万年前の噴火によって構成されているこの地方は、どのように映ったのであろう。若い活発な火山と、この地域の人々の生活との繋がりをよく見てほしいのだが。

253 卷雲

卷雲夕方7時過ぎて、卷雲が夕陽に映えた。左下の有珠山から右への稜線の向こうは洞爺湖。この手の卷雲は以前は天候悪化の前触れと言われたな、と思い調べたら明日の夜から雨模様。この程度のあたり外れは自然と繋がった嬉しい感性の中にあると思う。これを観天望気と言う。「怪しげな」雲を見てUFOだ地震だと、自らの不明と不安をないまぜにするよりは、美しさに幸せを感じる方がずっと当たり前だ。

250 漂泊の果て

キショウブ昭和新山の隆起で出来た新山沼。朝の光に輝くキショウブ。この見事に黄色いIris属(アヤメ属)の種は元来、ヨーロッパに一般的な種で、花弁の美しさから近世になって日本にやって来た。イギリスの図鑑には「Throughout, except Iceland and Spitsbergen」と書かれている。要注意外来生物に指定されているようだが、ここはアイスランドやスピッツベルゲン程極北ではないので、北海道の湿地はこの花に彩られるだろう。

249 まどろむ湖

洞爺湖朝の霞みの中の洞爺湖。風も吹かず音も無い。ニセアカシアのあまい香りが溜っている。透明な蜂蜜に溶け込んだような世界だ。アズキナシ、トチノキ、ホウノキ、次々と花が咲き、散って、ひとつずつ時間が過ぎてゆく。すべてを纏めてこの瞬間だ。この一瞬を私たちは待っている。

248 命を紡ぐ

エゾシロチョウさなぎの殻を脱ぎ捨ててすぐの求愛、交尾。生きものの苛烈な宿命の形を垣間見た。卵から幼生期へ。多量の葉を食べての肥大。次の蛹時代は空中へ飛躍するための体内機構再編。そしてメタモルフォーゼ。幼年期は終わり、光に満ちた中空でエゾシロチョウは優雅に舞い、華麗に命を繋ぐ。集団で羽化し、その同時性を逃さず、速やかにそして激しく命は受け継がれる。

247 ツタの戦略

吸盤のような9年、外壁にツタの苗を5本植えた。その年60cm位伸びたが、か弱く将来に不安を感じセロテープで補強した。豈図らんや、翌年からの成長の勢いは見事で、コンクリート打ちっぱなしの壁面を夏は緑に、秋は見事な紅葉となって楽しませてくれる。吸盤のように見えるのは葉が変形した部分。やがて樹脂を分泌し固着する。茂った葉蔭には小さな五弁の花が咲き、甘い匂いがし、いく種類ものハチがやって来て、耳鳴りのような音が窓から飛び込んでくる。