479  ともに生きる

アトリとハヤブサ一週間ほど前からアトリの群れが近くの干上がった水田にやって来ている。200羽から300羽位の群れであったり、1000羽位の集団であったり、この付近の総計は2000羽位だろう。 渡来数には変動があるが大群を構成することでも知られているという。今年はいつもの年よりずいぶん多い。

観察中に群れが乱れたと思ったら、ハヤブサが飛び込んできた。狩るもの逃げるものの空での戦いとなったが、結果はどうなったのか。

478  目覚めの時だ

昭和新山雪解けが進んでいたが、明け方に少しの降雪があった。北風が新山ドームに噴気は右から左へ流れている。しかし農家の煙突の薪を焚く煙は逆方向へ。地上には南の風が吹き込んでいるようだ。水気を含んで濃い色のドームを見上げながらリンゴの芽が動き始める。三月は果樹の枝打ち、剪定の季節。

477  名残りの山・オロフレ峰

オロフレ山「三月から四月、雪が硬くなったらスキーを背にオロフレまで登って、あとは徳瞬瞥山 へ向かって尾根筋を詰めてみたいね。」と言ったら「私も一緒に」と言った人がいた。今となっては足腰が全く覚束ないし、賛同してくれた人が誰だったかも覚えていない。湖の向こうに光を受けて輝くオロフレを見た瞬間、そのことを思い出した。

476  揺蕩う春

フクジュソウ眠い所を起こされたのか自ら覚めたのか、根雪が解けたら我が家の庭にもフクジュソウ。去年は3月28日だった。異常だという人もいるが、自然界に変異はつきもの、入学式に大雪のことだってある。気象学では過去30年間の平均値に対して、標準偏差の2倍以上の数値が出たら異常気象と言うのだそうだ。そんなめんどくさいこと、早くやってきた春にはいらない。嬉しいことが先だ。山の斜面で休眠中の虫や花の芽も、アレマァ、と驚いているだろう。

農家の人に聞いたら「生産の場では最も基本的な安全策を取ります、経験で培った平均値で、ことに当たります。早く温かくなるのはありがたいけれど」と言う。発表される長期予報もあまり当てにはできないとも。さも有りなん、ブレがあるのは読み込み済みだ。

474  天と地が連なって

天地融合二月とは思えない柔らかな冷気の中に昭和新山と有珠山のシルエットが浮かぶ。三日月と宵の明星がすっきりと並んでくれた。慌ててカメラを取り、ISO-6400、1/40秒、f=4,5で写した。こんなシーンはめったにないことだと思い、月齢だけでも正確にと調べていて驚いた。今日と明日は金星に接近して火星が見えるはずだという。

PC上で拡大したら金星の右上に火星が確かに写っておりました。写真でお見せできないのは残念。三日月と火星と金星と、地球の代表、有珠山、昭和新山。ちなみに今日の月のデータ。月の出 / 月の入(室蘭) 07:30 / 20:08、月齢(2.1) 新月→上弦。金星は(-4.0等星)で火星(1.3等星)。

473  春への眼差し

冷たい風を避けて南斜面を歩き、葉を落とした樹々を訪ねる。陽だまりにはすでに光の春がやって来ている。芽が動くにはもう少し時間が必要だが、やがて来る春を探すにはよい時期だ。ヒツジの顔で知られるオニグルミ、針で武装したハリギリ、タラはまだ芽がかたい。トチは樹液を滲ませて展開を待つ。ニワウルシはサフォーク種のヒツジに見える。クズはナマケモノの顔にもお下げの童女にも見えるのだが、、。

471  天晴れ羊蹄

羊蹄山一週ほど続いた荒天も、今日の午前中は風もなく羊蹄山はこの通り。水も澄み大気もすんで、羊蹄の雪面に雲の影が。こんな風景めったにないが、春先、ふっと気が和み「羊蹄でも見るか」と湖に出かけると出会えるから不思議だ。

古羊蹄は10万~5万年前に山体を形成し、4万5000年前に山体崩壊してニセコ町側にたくさんの流れ山地形を作り、その後今の羊蹄山が出来上がったという。地史も形も富士山によく似ている。若く眩しい火山。いうことなし。

469  樹林に暮らす

樹林で暮らす湖に沿って歩いていてトドマツの樹冠の下に小さな家を見つけた。薪で暖を取り煮炊きをする暮らしがある。後は葉を落としたカラマツ林。シカがいてキタキツネがいてそれとユキウサギ。あと三月もするとカラマツに新芽が萌える。鳥たちが戻ってくる。今は本を読む季節だろう。厳しいが質素と静寂が贅沢。煙突の白い煙が黒い林の中に消えてゆく。

468 変わらぬ風景

マスイチセ室蘭半島は先端の地名から絵鞆半島と呼ばれた。エトモとはエンルム(enrumu=岬)によるという。半島の南面は500~300万年前の海底火山の噴出物が堆積した室蘭層と、それを突き抜けた岩脈で構成された100m程の断崖となっている。小さな岬で仕切られた砂浜や入り江が数多くあり、アイヌ地名と逸話が残されていたが岬は削られ砂浜は埋められて古の姿は残り少ない。写真の右の岩はローソク岩でアイヌ名は残っていない。左は岩脈が海に取り残された岩で白く見えるのは雪ではなくカモメの糞。マスイチ(マスイ・チセ=カモメ・家)の語源となった岩であり岩の近くには海蝕洞がある。この浜には降りて行くことができ、人の手の入っていない時代の絵鞆半島に出会える。

手前の断崖の先にも大きな洞窟が口を開けているが、西側の別な浜から岩伝いに行くしか方法がない。この洞窟こそ、白鳥湾(=室蘭港)側のトキカルモイあたりに有ったという「アフンルパロ」からつながり、太平洋側にもあるといわれた伝説の「アフンルパロ」ではないかと私は思っている。

467  タラを打つ

タラを打つ室蘭市の太平洋に面した漁港近くの住宅地で、男がハンマーで何かを打っている。思い当たる節があって、車を停め「懐かしい風景ですね、昔はよく見たね。スルメなんかも」と言ったら、「俺たちはいつもこうだ」という。歩道の縁に腰掛け「タラを打ち」を続け、立ち上がりながら二本差し出し、「うまいぞ」「掃除はしないんだ、あとはカラスが食う」と言って家に入っていった。

日曜日の午後三時、明日は時化模様。これからタラとマヨネーズと唐辛子で焼酎か。ご近所付き合いしたいですね。 近くのどの家の軒下にも、スケソウダラが寒風に揺れている。帰りの車の中の、叩かれて幾倍にも膨れ上がったむき出しのタラからは、凝縮されていた旨みがハンマーの力で弾けとび、肺の腑、胃の腑まで滲みこんでくる。