609 冬を耐える

カシワカシワの葉が落ちずに冬をやり過ごしている。風と雪の吹きだまるあたりに折り重なって残っていた。春まで残る樺色の葉は遠くからでも目につく。改めて見直すとカシワの生育場所は遍在している様だがその要因が何であるかは私には分からない。種子(丸いドングリ)の生存や散布に秘密があるのか。海岸や川岸の疎林の周辺部、風と日光が良くあたる意外に人里近く。

608 カワラタケ

カワラタケサクランボの古い樹を切り倒し焚き火用に積み上げて置いたら、切り口にカワラタケができていた。40年もたった樹だったから、伐った時にはすでに菌が侵入していたのだと思う。黒くビロードの光沢のある傘の上に今朝の雪が積もっている。

607 今日の昭和新山

昭和新山雪の少ない冬だが昨夜から15㎝くらい積もっていた。だが、日中は6℃位の気温となり、日差しも強かったので半分くらいは融けてしまった。向うの大有珠の溶岩ドームに比べると昭和新山のドームは地熱があって、雪が斑になっている。ドームの手前のトドマツ林辺りの斜面には噴火前、国鉄胆振線が通っており、フカバという名の集落もあった。

606 剪定作業

サクランボ広い果樹園を経営する農家はもう春の作業を始めている。この樹はサクランボ。30年以上の樹だ。7月初め、見事に色を付けた収穫時は雨が大敵で、樹の上はシートが張られる。私の裏庭の樹もそろそろ剪定しなくっては。サクランボは垂直に伸びる枝が強勢となるし、古い短枝に花を付けるので剪定はそれなりに気を使う。まして私は年期が少ないし知識が浅い。

605 二月の雨

昭和新山北海道の二月に雨が降っている。厳冬期なのに。道路の縁には溶けかかった根雪、水溜りには昭和新山も映っている。明日も雨だという。こんなことってなかった。伊豆諸島沖には1032hPaの強い高気圧、そこから沿海州の前線を持つ低気圧に南風が吹き込んでいる。このまま春を迎えるわけではないだろうが。軟らかく湿った風が気持ちよい。ああ、なんということだ

604 先ずは避難

避難生活有珠山に噴火の兆候という想定で避難訓練があり、久保内の壮瞥町農村環境改善センターへ出かけた。冬季の体育館の床はひどく冷たいが長尺のマット敷いてある。数分で出来上がるという2.5人用(4㎡)の簡易間仕切りと暖ボールという名の「たたみ」のある個室ができている。自分の眼で確認して初めて避難生活のイメージがわいてきた。ある期間、ご近所さんたちと協力しながら、このようなところに住むかもしれない。

603 いのちの足跡

キタキツネ長流川にかかる壮瞥橋の下にキタキツネの足跡(Footprints)を見つけた。少し古いのと真新しいの。どうやら岸辺の藪の中にねぐらがありそうな感じがする。空きっ腹で幾度も足を運んだのだろう。はたして餌にありつけたのだろうか。凍り付いた浅瀬で何かを探した気配がある。冷たい水で晒されたシャケの死骸でも見つけたのか。真剣に生きる野生のひたむきさが読み取れる。

602 棒鱈の世界

スケトウダラ小さな漁港の小さな家の小さな窓にスケトウダラが干してある。タラコ、白子を取った後、こうやって自家用に凍結乾燥する。凍りながら寒風に曝されて干せて行く。昔からの間違いなしの漁村風景。叩いてむしって食べるのが手っ取り早いが、煮物の鍋の中で他の具材と旨さの相乗効果を生み出す。熱帯を除けば世界中に棒鱈の煮物がある。マダラと共に世界の近世の食を支えた魚だ。

601 雪の王

トドマツ霧氷で名高いオロフレ峠。スノウシュートレッキングの出発点に近い樹林にそびえるトドマツが、いつものように分厚い雪衣を羽織ってでんと控えている。斧の入っていない森には必ずこんな立派な樹があり、存在が頼もしく、歩くのが嬉しくなる。仲間たちはそのような樹に「森の番人」「トチノキ婆さん」だとか勝手に名前を付けている。この樹は「雪王」「雪将軍」そんな風情だ。

600 久保内からの有珠山

有珠山朝の陽を受ける有珠山の東面。北斜面の向こうには有珠新山が続く。大有珠のピナクル(岩塔)下のロープウェイ駅から東へ延びる長い稜線の上には火口展望台があり潜在ドームだ。この稜線の下にも溶岩ドームがあるという。地質図を見ると現在の有珠山は「流れにくい」溶岩、つまりケイ酸(SiO2)分の多い粘性の高いマグマで構成されたドームの集合体だということがわかる。

有珠山に異変があったら、私の住む壮瞥町滝之町の住民は、ここ久保内の施設に避難することになっている。それでも火山に近いというか、距離があるかから安全なのか。大きな噴火ならここでも危ないし、そのあと住むことも不可能となる。この数百年の噴火の規模なら安心だ。しかし、火山灰は風向き次第でやってくる。あらためて有珠山を眺めなおしてしまう。